SSブログ

#2492 (1) 根室管内版解説 : RC-1と偏差値 難易度の高い問題を授業でやるべし  Nov. 13, 2013 [69.H25全国学力テスト・データ分析]

 北海道教育委員会が公表した「根室管内版」のP498 にレーダチャート(RC-1)が載っている。タイトルは「2 調査結果のレーダチャート図 教科全体」となっている。URLを書いておくので、クリックしてチャートをご覧いただきたい。

http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/gky/gks/h25chosa/14_nemuro.pdf

 このレーダチャートは全国データを100として、管内版の数値を算出している。つまり、管内版の数値を全国平均値で割り算した結果を百分率で表しているのである。
 公表データに基いて算出した偏差値データを並べてみるので、ご覧いただきたい。

<根室管内・小学校>
 偏差値Radar C.
国語A37.895.4
国語B48.089.9
算数A33.896.4
算数B28.389.9
単純平均37.092.9
<根室管内・中学校>
 偏差値Radar C.
国語A41.696.9
国語B45.392.4
数学A38.094.7
数学B40.886.3
単純平均41.492.6


 小学校の表をみると、国語Bと算数Bのレーダチャートの数値は89.9で同一であるが、偏差値は48と28.3と、大きく隔たっている。
 原因は国語Bの標準偏差が算数Bよりも小さいためである。正答数の分布のばらつきが大きい場合と小さい場合では、平均値で割り算してしまうとデータ相互の比較可能性が失われてしまう。
 全国平均値でそれぞれの管内のデータを割り算すると、データのばらつきが反映されない、つまり、全体の中での位置がわからなくなる。

 標準偏差はこのようなデータ間の分布のばらつきを調整して相互に比較可能にしてくれる便利な統計学的なツールである。
 小学校の科目ごとの都道府県別標準偏差データは次のようになっている。

<小学校>
 設問数正答数平均値標準偏差
国語A1811.4 0.506617
国語B104.9 0.253559
算数A1914.7 0.353756
算数B137.6 0.355673


<小学生>
 レーダチャートでみると、根室管内の国語Bと算数Bは全国平均100の89.9%に見えるが、この数字が実態を表していないことはもうご理解いただけるだろう。

 話しを単純にするために全国の小学校と中学校の数を100校として、根室管内の子ども達の学力がどの程度なのかを順位で示してみようと思う

 国語Bは偏差値48.0だから58位、算数Bは偏差値28.3だから98位である。
 同様にして、
 国語Aは偏差値37.8で89位、算数Aは33.8で95位である。

 国語Aが89位だということから、根室の小学6年生が本を読む量が著しく少なく、日本語語彙に問題を抱えており、読書力が脆弱であることがわかる。これで3年生から英語教育を導入したらどういうことになるのだろう?
 国語Bは全国平均に近い、これはどういうことだろう?他のチャート、そして出題された設問をみていかないとわからない。現段階では理由がわからないので課題として保留しておこう。
 算数は科目Aが95位で科目Bが98位である。これは全国最低レベルといってよい。基礎計算能力に欠陥を抱えていると判断できる。それと同時に小学校の授業に問題があることを推測させるデータでもある。
 九九に問題を抱えている小6年生が1割はいるだろう。逆九九を言わせてチェックしてみたらいい。よどみなくいえたら、割り算はスムーズにできるが、いえなければ割り算スピードが標準的な子どもの5倍くらいも時間がかかるだろう。中・高の数学学習に重大な影響が出ていると思わなければならない。基礎計算トレーニング不足が露呈している。

<中学生>
 根室管内の中学生についてみていこう。こちらも、全国の中学校を100校と仮定して順位をみてみよう。
 国語Aは全国平均値に比べて96.9%だが偏差値をみると41.6だから80位。
 国語Bは全国平均値に比べて92.4%とAより低いのに、偏差値は45.3と高く、68位。
 数学Aは全国平均値に比べて94.7%で偏差値は38.0、順位は89位。
 数学Bは全国平均値に比べて86.3%と低いが、偏差値は40.8、順位は82位。

 国語の能力は68位と80位、数学は89位と82位だから、相対的に数学の能力が落ちる。都道府県データからみると算数・数学の学力は著しく低いから、基礎計算トレーニングの重要性がわかる。
 算数A 95位 ⇒ 数学A 89位
 算数B 98位 ⇒ 数学B 82位

 成績下位20%以下の中学生の計算トレーニングは骨が折れる。学校はこれらの生徒達に1~2ヶ月間ブカツを停止してでも強制補習して、小学校の先生たちが教え切れなかった部分を補うべきだ。手当ては早いほうがいいから、タイミングは入学早々がいい。学校管理職がそうやると宣言すればいい、数学担当の先生もブカツ担当の先生も粛々と業務指示・命令に従うべきだ。「お迎えテスト」(4月実施学力テスト)をやっているのだから、数学の点数が50点以下の生徒に補習で基礎計算トレーニングを課すのがいいだろう。成績下位層の底上げができる。

 算数B問題と数学B問題のできが悪いのは、学校の授業で基本問題しかやらないからだ。首都圏の小学生は私立中学受験があるから4人に1人が受験をして、むずかしい問題をたくさん解いている。中学生も道立高校の問題よりも難易度の高い東京都立入試問題をターゲットにしている。トップ層は難関私立進学高校の問題をターゲットにして勉強するから、脳に大きな負荷がかかる。この難易度の高い問題を解くことで加えられる適度な負荷が、脳のニューラルネットワークの発達を促しているように思える。脳の発達も筋肉の発達と似たところがある。

 有名私立中学受験生(4~6年生の三年間)を東京で教えたことがあるが、親のシツケもしっかりしているし、自分で生活を律している生徒が多かった。テレビを見る時間を制限(親自身も含めて)しているケースが三人に一人の割合でいたから、生活に家族共通の規律が支配している。だから時間があり本もよく読んでいる。教えてみて、あきらかに脳の発達度合いが異なるという印象がある。きりっとしていて、挨拶もしっかりしている。まっすぐ目を見て挨拶できる。頭のいい子はある程度つくれるということだ。シツケを厳しくし、本をたくさん読ませる
 小学校、中学校で良質のテクスト(本)をたくさん読ませて日本語語彙を拡張し、脳に負荷となるような難易度の高い問題をたくさん解かせて、脳の発達を促すべきだ

 根室の中学校は、1年生に食塩水の濃度の問題を出題しないことが多い。生徒ができないから出題しないとあからさまに生徒に言い渡す先生もいた。その先生は授業では食塩水の問題をとばしてやらなかった。いまも授業で食塩水の問題をやらない先生がいる。
 どういう副作用を生じているか書き留めておこう。高校生になって「溶媒・溶質・溶液」のところでモルが出てきて、その後に「科学反応式と量的関係」が出てくるがこのあたりでつまづいてしまう生徒が続出している。食塩水の濃度計算はこれらの基礎なのだが、そこをパスしてしまうと高校生になって「深刻な副作用」がでる。数学教師はけっして授業の手を抜いてはいけない。抜いたら無責任な仕事になる。仕事は肝心なところは渾身の力でやるもの。

 脳の発達を促すために授業で難易度の高い問題もやるべきだというのがebisuの意見である

 以上が、全国平均値を尺度(100)としてRadar Chartに記された根室管内の比率と偏差値の両方を使って分析した結果である。
 
*#2529 根室市教委の仕事振り(3):「確かな学力向上に関する取組方針」 Dec. 15, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-15

 #2528 根室市教委の仕事ぶり(2):「全国学力・学習状況調査の結果報告」 Dec. 15, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-14-1

 #2527 根室市教委の仕事ぶり(1):教育に関する評価報告書 Dec. 14, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-14

 #2526 根室は学力テスト結果非公表 :学力向上の抵抗勢力は誰だ Dec. 13, 20
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-13

 #2509 (眼耳鼻舌身)意と仕事 Nov. 24, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-24

 #2500 11月7日 中学1・2年生 学力テストの結果  Nov. 17, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17-1

 #2499 個別指導と戦略思考 Nov. 17, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17

 #2498 中学校 英語授業進捗管理の実態 Nov. 16, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-16-3

 #2405 中学数学の先生たち、授業進度管理は大丈夫ですか?  Sep. 12, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-09-12-1

 #2093 教員の質向上はどうやる?⇒ "Educating educators" Sep. 25, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-25-1

にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 根室情報へ
にほんブログ村


nice!(2)  コメント(6)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 6

ZAPPER

食塩の濃度の問題、速さ・距離・時間の問題。

授業でやらない学校、多いですね。または自作プリントを用いて穴埋めで端折る学校、多いですね。(合同や相似、それに文章題は端折りの格好の標的なのでしょうか?)

でも、はっきり言って前者は「犯罪」です。最低限の学習指導内容とされたものを「どうせ教えても分からないだろう…」などとして切り捨ててしまう。やっていいことと悪いことがあります。即時是正を強く求めたいですね。
by ZAPPER (2013-11-13 11:05) 

Hirosuke

中学でも濃度の問題は必須でしたよ、
僕達が中学生の頃は。

だって【ゆとり教育】の導入前は、
数学だけじゃなく、
理科でも濃度計算が必要でしたからね。

ビーカーの図を3つ描いて、
そこに数値を書き込んで、
-------------------------
【シオ】+【シオ】=【シオ】!
-------------------------
と呪文を唱えるとホラ、
式の出来上がり。

簡単なのになぁ。

生徒じゃなくて、
教師の方が理解できてないとか?

by Hirosuke (2013-11-13 12:09) 

ZAPPER

塩+塩=塩
本当にそうですよね!
時速だって、車のメーターのkm/hを引き合いに出しちゃえば済むのに。

工夫ってものがないのかなぁ…。
by ZAPPER (2013-11-13 14:30) 

ペトロナス

食塩水の濃度の文章題は数学検定4級(中学1,2年レベル)の頻出問題ですが、省略して教えないとは驚きです。

東京都立のトップ15校で実施している難度の高い数学の問題を教える訳ではないので、教科書で扱われているレベルの食塩水の濃度の文章題くらいは授業で扱い、理解できなかった生徒さんには補習でフォローして欲しいです、

by ペトロナス (2013-11-13 22:03) 

ebisu

食塩水問題は中学1年生、学年60人の学校で6人正解できるかな?

ほんとうにバカバカしい話しです。
こんなものは難問でもなんでもありません。基本問題の領域ですから、端折るなんてとんでもない。

km/h
m/min

速度単位を見れば式はわかる。

わたしは、

距離D
時間T
速度S、(V)

の順に、3×3の表をつくって、問題文の条件をその中に入れさせています。条件入れ終わったら、空欄のところに部分式を入れる、それで完成。後は解くだけ。

食塩水の問題は、

食塩
食塩水
濃度

この順にやはり3×3の表を作り、問題文の条件を入れたら、それで式が完成。
速度の問題とまったく同じパターンで解けます。

速度と濃度の問題は内包量の問題ですから、まったく同じパターンになります。
だから片方を教えたら、もう片方はわかったも同然です。

これは順序が大切です。
問題文を読んで欄に問題で示されている数字や未知数をいれたら、どれか一つの行が空欄になります。時間なら「距離/速度」⇒上の欄の距離を分子に、下の欄の速度を分母にもってくるだけ、距離なら「下二つの欄の数字と文字をもってきて掛け算」それだけ。自動的に式は出来上がります。距離や時間は外延量ですから加法や減法が成り立ちますから、足すか引くかは問題文次第。90%は足し算です。
誰でも解けます。
食塩水もまったく同じパターンで解けます。

速度の問題をどのような教え方をしているか、生徒を通してずっとモニターしてきました。
教えないのは簡単な方法で教えられないから。
言い訳無用、教え方がヘタなだけでしょう。

先生たち、どうぞここに書いた表をつかって教えてやってください。そして1年生には2学期に食塩水の問題を中間テストで3題くらい出題してください。もちろん速度の問題もね。

by ebisu (2013-11-13 22:39) 

ebisu

塩+塩=塩
食塩水+食塩水=食塩水
濃度+濃度≠濃度

距離+距離=距離
時間+時間=時間
速度+速度≠速度

aha!
Hirosukeさんが
-------------------------
【シオ】+【シオ】=【シオ】!
-------------------------
と書いていますが、そのとおりですね。
シオと食塩水は外延量ですから加法(足し算)が成り立ちます。
濃度は内包量(比の値)だから加法が成立たない。
距離と時間と速度の間にも同じ関係があります。
こういうのを「相似形」というのでしょうね。

計算パターンという抽象的な観点から見ると、まったく同じであるといえます。
だから距離・時間・速度の問題は食塩・食塩水・濃度とまったく同じなのです。

違いは、溶液が「食塩+水(濃度0%)」であること。ここがひとつのネック。たった一つの違いが、速度の問題よりも濃度の問題をむずかしくしています。
しかし、速度の問題にも食塩水の濃度の問題とは異なるところがあります。それは単位の換算の問題です。

時間・分・秒
時速・分速・秒速 ⇒ km/h, m/min, m/sec

光の速度の単位はKm/秒、300,000km/秒です。一秒間に地球を7回半も回ります。

単位の換算は6年生と中1年生で出てきますが、ほとんどの生徒が苦手のようです。基本的な考え方をつかむのに3×3の表は便利です。

高校「理科総合」と「化学Ⅰ」で水溶液や物質量(モル)の計算が出てきますから、ここででまごつかないように、中学生のうちにしっかり勉強しておいてください。
速度と濃度に関する問題はたいへん重要なのです。

by ebisu (2013-11-14 09:59) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0