#2286 市立根室病院『改革プラン(改訂版)』と実績対比 May 7, 2013 [26. 地域医療・経済・財政]
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売上計画・実績対比表 | |||||||
(金額単位:億円) | |||||||
差異 | 差異 | ||||||
当初計画 | 改訂計画 | 実績値 | 当初 | 改訂 | |||
H21 | 2009年 | 28.7 | --- | 26.5 | -2.2 | --- | |
H22 | 2010年 | 29.1 | 27.6 | 25.2 | -3.9 | -2.4 | |
H23 | 2011年 | 29.5 | 27.1 | 23.4 | -6.1 | -3.7 | |
H24 | 2012年 | 29.5 | 27.4 | 22.0 | -7.5 | -5.4 | |
H25 | 2013年 | 29.5 | 28.7 | ||||
H26 | 2014年 | 29.6 | 28.6 | ||||
H27 | 2015年 | 29.5 | 28.6 |
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平成21年3月の改訂版では各年度の売上計画が2億円ほど減額されているが、年度を追うに従って差異は拡大している。平成24年度で5.4億円売上がショート。なぜこんなことになったのかはあとでわかる。
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赤字額計画・実績対比表 | |||||||
(金額単位:億円) | |||||||
差異 | 差異 | ||||||
当初計画 | 改訂計画 | 実績値 | 当初 | 改訂 | |||
H21 | 2009年 | 7.5 | --- | --- | --- | --- | |
H22 | 2010年 | 6.8 | 9.6 | 11.7 | 4.9 | 2.1 | |
H23 | 2011年 | 6.6 | 11.4 | 13.0 | 6.4 | 1.6 | |
H24 | 2012年 | 6.6 | 11.9 | 17.0 | 10.4 | 5.1 | |
H25 | 2013年 | 6.7 | 9.8 | ? | ? | ? |
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改訂版だと赤字額が当初計画の2倍に膨らんでいるが、実績値はそれをさらに上回り、平成24年度は17億円の赤字である。5.1億円計画オーバー。
「広報ねむろ」ではいつも病院事業は黒字だと報告がなされているが、それは補正予算で予算外の赤字分を補填しているからで、民間会計基準では赤字決算である。公的会計基準での報告は赤字の実態を隠すから民間会計基準で市民に報告すべきだ。
さて、売上計画がどおうしてこんなに狂いが出ているのか、入院患者数と外来患者数についての資料を見たい。
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平成21年度版 | |||||||
「新・市立根室病院新築基本構想」29ページ | |||||||
「2)市立根室病院の推計入院患者」より | |||||||
患者数 | 人口 | ||||||
入院 | 基数 | 15~64歳 | 65歳以上 | 人口総数 | |||
H22 | 2010年 | 140 | 1,795 | 17,887 | 7,606 | 29,104 | |
H27 | 2015年 | 146 | 1,758 | 15,814 | 8,230 | 27,135 | |
H32 | 2020年 | 151 | 1,692 | 13,953 | 8,503 | 25,021 | |
H37 | 2025年 | 152 | 1,595 | 12,460 | 8,183 | 22,820 | |
H42 | 2030年 | 149 | 1,477 | 10,969 | 7,776 | 20,641 | |
H47 | 2035年 | 144 | 1,348 | 9,605 | 7,280 | 18,543 |
患者数 | 人口 | ||||||
外来 | 基数 | 15~64歳 | 65歳以上 | 人口総数 | % | ||
H22 | 2010年 | 402 | 1,795 | 17,887 | 7,606 | 29,104 | 100.0 |
H27 | 2015年 | 419 | 1,758 | 15,814 | 8,230 | 27,135 | 93.2 |
H32 | 2020年 | 435 | 1,692 | 13,953 | 8,503 | 25,021 | 86.0 |
H37 | 2025年 | 438 | 1,595 | 12,460 | 8,183 | 22,820 | 78.4 |
H42 | 2030年 | 428 | 1,477 | 10,969 | 7,776 | 20,641 | 70.9 |
H47 | 2035年 | 415 | 1,348 | 9,605 | 7,280 | 18,543 | 63.7 |
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人口が2035年には2010年の63%に減少するのに、入院患者数も外来患者数も減少していない。まったく器用な推計をしたものだ。平均的学力の中学生でもこの推計の根拠がおかしいことにすぐに気がつくだろう。理屈はともかく、根室の人口減少をまったく反映していないことは表から明らか。
もっともらしさを装うために、この推計には国立社会保障・人口問題研究所の根室市の人口推計データが使用されている。
このようなヘンテコリンな推計をなぜ病院建て替え特別委のメンバーが全員そろって見逃したのだろう。資料を見てないはずはない。改訂版の『新・市立根室病院新築基本構想』は全員に配られたはずだし、公開されている。
市議会の特別委員会は、資料に目も通さずに病院事務局案を了承したのだろうか、それとも眼を通しても内容を理解できなかったのだろうか?
なぜこういうことが起きるのか?理由は二つ考えられる。
①意地悪く言えば、副業市議がほとんどだから忙しくて市側作成資料に眼を通す暇がない
②資料が分厚くて、資料を読み、電卓を叩いて数字を確認することができない
①は物理的な時間の問題である。市議定数が問題になったときに、ほとんどが副業市議であることに批判が集まったのはこうした実態があることを市民の皆さんがたがよく承知していたということだろう。
②は能力の問題である。人間はさまざまな能力をもっているが、使わない能力はいつの間にか退化するものだ。仕事で数値を扱っていれば見抜けたはずだ。平均的な中学生の学力程度で充分なのだから、大人の市議会議員のみなさんがそういう基礎学力もないなんてはずがない。平均的な高校生の学力はあったはずだ。自営業なら自分で帳簿をつけて、決算をし、所得税の申告書を作成くらいの作業を毎年やっていれば、成績が「中の上」の高校生くらいの基礎学力は維持しているだろう。結果から見る限り、それすらあやしい。これではどんなにデタラメな資料を渡されてもチェックできないのではないだろうか。市議会特別委はそれぞれ目的ごとに作られるが、仕事は大丈夫か?
ノーチェックに等しい仕事をしてしまった理由が①と②のどちらにせよ、市政をチェックするという市議本来の仕事をまっとうしていなかったことは明らかだ。
こうしてコンサルタント提案の2倍以上、70億円もの総事業費を投じて建て替えられた病院は2月から稼動している。
昨年度の赤字額は17億円、今年度は新建物にかかわる減価償却費負担増、ドサクサまぎれの医療機器買い替えにかかわるリース料増大、旧建物未償却算2.5億円の特別損失などで赤字額は20億円を超えることになる。
市議が市議本来の仕事である市政チェック機能を果たさなければ、こういうことになるほど根室の市政は危ない状態だ。
最近の9億円の補助金交付も国基準の10倍を超える。子供の数は激減していくというのに明治公園を拡張して、北方領土などの学習施設まで建設するという。ニホロに道がつくった立派な専用施設があるではないか。学校は小中学校2校で充分であるから、統廃合をすればあちこちに大きな空き施設が残る。必要ならそこを利用すればいい。
市議会が市政チェック機能を果たすためには、市議一人一人が市側の作成した資料に眼を通す時間が必要である。副業市議にそういう時間がないというのは言訳だろう。本来の仕事をしっかりやってほしい。
それにしても議員専業が5人くらいは必要だろう。副業市議と専業市議で報酬に2倍程度の差をつけてもいいのではないか。たとえば、副業市議は20万円、専業市議は50万円。60歳以上の市議はボランティアと心得、一律20万円でいい。
資料に眼を通し、内容を分析する能力の問題が次にある。市議の仕事はある程度の基礎学力がなければ全うできるものではないことが市議会病院建て替え特別委の例からもご理解いただけるだろう。今年は市議会議員選挙がある。そういう市議に立候補してもらいたいが、市議定数が2名減では、競争はないに等しい。志の高い30代の若い人が5人ほど立候補して根室の町を支えてもらいたい。
(市議には同期が二人いる、どちらも気のいい奴だし、それなりにがんばってはいるのだろう。だが、もっとがんばってくれ、ふるさと根室のために。もう俺達団塊世代は世のため他人のために働く年齢になっている。それぞれの立場でやりうることを精一杯やるだけでいい。期待している。)
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