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#2267 Testing children's English ability: Apr. 18, 2013 [74.高校・大学生のためのJT記事]

  標題は昨日時事英語授業で使った4/14付けジャパンタイムズ社説で、英語検定試験が俎上に上がっている。
 2012年度は206,800人もの児童(小学生とそれ以下)が「英検」テストを受けており、十年前に比べて80%増加している。2012年度の「英検」受験者総数は232万人である。
 なぜ今年から年齢別階層データを公表したのか、財団法人英語検定協会の意図ははっきりしないが、安倍総理がTOFELを推したことと関連があるのではないか。いままでは棲み分けがついていたのだが、にわかに競争意識が働き出したように見える。
 英検は日本国内の大学受験用に特化した英語検定試験だが、TOFELは英語圏の大学へ留学のための語学能力検定試験、用途が異なり棲み分けがついていたわけだ。それが政府が国内大学の英文学科にTOFEL700点を卒業の目安になんてことを言い出したからにわかに騒がしくなった。業界内のシェア獲得競争はこの際どうでもいい話しのようで、筆者は英検協会が公表した5~7歳の年齢別受験者数を並べて話しの口火を切る。

 5歳児受験者数 2,410人
 6歳児受験者数 4,200人
 7歳児受験者数 7,516人

 小学生の人口は680万人だからそれに比べると6歳と7歳でたったの11,716人、とるに足らぬほど小さい比率ではある。テストを受けること自体は必ずしも害があるわけではないが、テスト結果が強調されすぎると学習動機が間違った方向へ行ってしまいかねない。英語は国際的なコミュニケーション・ツールであってペーパテストのためにあるのではない。若い人々にテスト結果を強調しすぎることは生産的でもなければ役にも立たないことなのだから、学校や先生たちや保護者は英語検定試験という強迫観念から離れるべきである。
 
 テスト業界は競争過熱状態、保護者をみると幼児期から英語をやらないと差がつくという根拠のない強迫観念にあおられている。そういう中で5歳児の受験者数が増えているのだが、このような英語検定を受検して合格することに積極的な理由がみいだせない。そんなエネルギーがあったら子どもの積極的な気持ちとか、ものごとの幅広い理解だとか、総合的な言語能力の発達に焦点を当てるべきである。

 日本が必要としているのは21世紀に国際的な競争力を維持するためのスキルを持った人材である。
 そのためには豊かな母語能力、幅の広い教養、特定分野の深い専門知識、それらの上に英語能力が付け加わっている形が理想であるのは誰が考えてもあたりまえのことだが、残念ながら日本の実情は違っている。
 わが町も例外ではない。私立中学受験がないために都会よりもずっとたくさんの児童が英語を学んでいる。英語の重視の裏側に日本語テクストの読書軽視が存在する。小学校の「時季」は日本語語彙の拡張期にあたるから、良質の日本語をインプットすればするほど、基礎学力が充実したものになる。基礎学力とは「読み・書き・ソロバン(計算)」である。ここがしっかりしていないと、その上に堅固な建物を築くことができない。建築では当たり前のことが学力育成ではないがしろになっている。
 基礎学力育成の大きな障害となっているものは他にもある。PCゲーム・携帯電話の機能強化などで読書時間が減少して小中学生の日本語能力劣化が進み基礎学力の低下の一因となっていることに大人たちが気づいていながらなかなか具体的な手を打つことができない。若いお父さん達自身がゲームに嵌っているケースも散見される。

 いくつかの著名な企業が社内のコミュニケーションに英語を採用(社内公用語)しているが、大丈夫だろうか?
 簡単な会話が成り立っても、複雑な仕事のコミュニケーションを英語ではなかなかできないもの。英検1級以上でなければ現実の複雑な仕事はこなせないだろう。それほどの英語のスキルをもち特定分野の専門知識があって仕事の出来る人材がそんなにいるだろうか?わたしは従業員数2000名を超える企業で16年間働いていたが、そういうレベルの人材は二人しか知らない。東証一部上場企業であるこの会社では90年代後半に新卒社員の採用に1万人応募があって書類専攻で200人にペーパーテストと面接試験を課し、20人を採用していた。その前に5年間勤務していた社員数150人の産業用エレクトロニクスの輸入商社では特定の専門分野で人に秀でた能力があり、英語ができて仕事のできる者は社長を含めて三人だった。当時はそれで間に合っていた。
 英語ができてあまり仕事のできない人間ならその十倍くらいはいただろう。そういう人間はそれなりの使われ方をしていた。仕事で一番大事なのは特定の分野での専門能力である。それがあっての英語能力である。「英語能力」であって「日常英会話能力」ではない。
 仕事の場で使われるのはたんなる英会話ではない、仕事に関連のある分野の専門書を何冊も英書で読んでいなければ、質の高い仕事でコミュニケーションツールとして使えるはずがないのである。話すスキルがたしかな「読み・書き」スキルに裏打ちされていなければならない。
 日本人同士も英語で社内ミーティングをするようでは、生産性が著しく落ちることは想像に難くない。英語圏の植民地という不名誉な歴史をもたぬ日本で、日本企業が日本語を禁止して英語でコミュニケーションして生産性を落とす、これは正解なのだろうか?

 大数学者の岡潔、フィールズ賞受賞者の小平邦夫、『国家の品格』の著者である藤原正彦の三人の数学者は留学経験があるが、小学校の「季節」は、日本語の本をたくさん読んで日本語語彙を拡張すべきだと主張している。英語は中学校からでいいのである。母語の基礎をしっかり造っておかないと、その上に築かれる外国語能力も不十分なものになる。まずは、日本語の本を多読して日本的情緒を心の中に刷り込む、幅の広い教養は多読の過程で自然に身につくだろう。そういう土台の上に英語能力を築けばいい。

 文庫本なら100冊買っても6万円程度だ。ネットで引けばさまざまな「文庫100冊」リストが出てくるから、それらを参考にして子どもに本を選ばせ、買い与えよう。小学生・中学生・高校生に興味のある本はどんどん買い与えよう。
 本を与えると同時に必要なことは生活習慣の中に読書時間の余裕を作ることだ。ブカツの時間は5時半まで土日は休み、こうすることで子ども達の生活時間に家庭学習時間と読書時間を組み込もう。本をたくさん読んだ子は高校生になってからの学力のノビシロが大きい。

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 ニムオロ塾では子どもの本から大人の本への橋渡しの機会を提供している。それが日本語音読授業だ。音読した後で三色ボールペンで線を引く。読めない漢字や読めるが書けない漢字は、漢字の書き取り宿題として課している。本をたくさん読んで、毎日数語は国語辞典や漢和辞典を引いて意味を調べることを習慣にしよう。
 音読授業で使っている本は、

 中学1年生 『読書力』斉藤孝著 岩波新書
 中学2年生 『国家の品格』 藤原正彦
 中学3年生 『すらすら読める風姿花伝』世阿弥原著 林望現代語訳

 どの本も「大人向け」の良質のテクストといっていい。最初に挙げた本だけはこの当時著者は多作で、見直す時間が惜しかったのだろう、文章の「てにをは」に問題のある箇所が散見されたが、改訂されてだいぶよくなった。
 これらの本を三色ボールペンで線を引きながら音読してスキルを磨き、質の高い本の濫読の道へ踏み入ってほしい。高校時代に濫読期に突入してしまったら、一浪したって構わない、長期的に見たら自分の成長のために不可欠な一年であったことが了解できるだろう。そういうつまずきを経験して人は大きく成長を遂げるものだ。
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http://www.japantimes.co.jp/opinion/2013/04/14/editorials/testing-childrens-english-ability/
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Testing children’s English ability

Japan’s obsession with testing is growing, according to new information from the Eiken Foundation of Japan. The foundation, which oversees one of Japan’s most oft-taken English exams, the Eiken, has reported that the number of primary school students taking the Eiken test in practical English proficiency has reached the highest number ever.

More than 200,000 primary school students sat for the exam in fiscal 2012, up 80 percent from 10 years ago.

The reasons why the foundation released the data by age group for the first time this year is unclear, but perhaps they would like to compete with the English exam currently being promoted by the Abe administration, the Test of English as a Foreign Language (TOEFL). In Japan, not only test-takers compete, but test-makers compete as well.

The competition for applicants, status and income in the massive testing industry has never been fiercer. The push for greater internationalization in universities and the workplace has unfortunately not resulted in improved English, but rather in more customers eager to display their English ability through such exams.

Now, students younger than ever are taking English exams. According to the new data, among the 2.32 million applicants for Eiken exams in fiscal 2012, 206,800 were primary school students. That included 2,410 five-year-olds, 4,200 six-year-olds and 7,516 seven-year olds. While that may be a tiny percentage of the roughly 6.8 million primary school students in Japan, it shows that a not-insignificant number of parents are deciding that their children need to display their English accomplishments in quantative measurements.

Taking exams is not necessarily harmful to learners, but when test results are overemphasized, motivation becomes misdirected. Students can mistake the language for a paper-based, correct-answer activity, rather than a real world communicative tool.

Over-emphasis of exam results at too young an age is neither productive nor helpful. It is one more way that learners pay a lot of money and get little in return.

Schools, teachers and parents should move away from the testing obsession. There is no good reason why 5-year-olds need to display their achievements through such exams. Instead, energy can be better focused on developing children’s positive attitudes, broader understanding and all-around language skills.

English should become a life skill, not a test number. The pressure on young children to be tested on yet one more part of their education does little to advance the long-term goals of producing workers and members of society who can function satisfctorily in English. Japan desperately needs people with such skills to remain competitive in the 21st century.

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*小平邦彦の英語教育論
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-10-04
 2009年5月3日 ebisu-blog#569

 英語教育論:数学者藤原正彦『国家の品格』より抜粋
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-05-03-1

 私塾を開き、根室の小・中・高生を教え始めて11年目になるが、この10年間の中学生の日本語運用能力の低下に驚いている。携帯電話の機能拡大やPCゲーム機の価格低下と機能強化、インターネットの普及によって子ども達から本を読む時間が奪われている。根室の場合は過度なブカツもそうした時間を奪う一因となっている。昨日も7時半に来た生徒が6時半までブカツをやっていたと言っていた。#2265では「読み・書き・ソロバン(計算)」のうちの最重要な日本語能力の劣化の問題に言及している。
 #2265 『カルク』はすぐれもの(2) : "a good job"
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16


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