SSブログ

#2265 『カルク』はすぐれもの(2) : "a good job" Apr. 17, 2013 [64. 教育問題]

 今日、生徒のもってきた『カルク』をぱらぱらめくりながら10分ほどチェックしてみた。結論は"すぐれもの"である。

 根室市教委が市内の教諭で作る教育研究会算数・数学サークルのメンバーに委嘱した仕事で、道教委のチャレンジテストを参考にして編集したものだと、15日付の北海道新聞が報じている。

【すぐれものである理由】
 どこがすぐれものかコメントしておく。
 中学生用の『カルク』には、小学校3年生の問題から載っていた。もちろん小5で習う小数点の位取りや、6年生で習う分数の四則演算も載っている。根室の中学生の三人に一人はこの当たりの基礎計算があやしいから、中学生用の問題集に小学校で学ぶ分野の問題が載っているのはたいへん意味のあることなのである。この問題集で一番喜ぶのは根室西高校の数学担当の先生たちかもしれない。

【おおよそ半数の生徒に効果がある】
 数学の学力テスト平均点は学校や担当の先生の技倆そして年度によって生徒のレベル等によってばらつきあるが、百点満点でおおよそ「40点±5点」である。

--------------------------------------------------
 【4月17日夜、追記】市街化地域のある中学校の1年生の得点通知表を見たので、データを書いておく。1年生の平均点は高かった。
  <平均点>
   数学  55.3点
  国語  50.8点
  社会  53.9点
  理科  60.3点
 合計 220.4点

 数学40点以下:13人 27.1%、 30点以下(9人 18.8%)

 【4月23日追記】
 A中学校3年
 <平均点>
   数学  19.7点(60点満点)
  国語  26.8点
  社会  19.4点
  理科  14.7点
  英語  25.9点
 合計 106.5点(300点満点)

 数学24点以下(57人/88人 64.8%)、 18点以下(47人/88人 53.4%)

 B中学校3年
 <平均点>
   数学  19.3点
  国語  25.5点
  社会  17.0点
  理科  16.9点
  英語  22.1点
 合計 100.8点

 数学24点以下(14人/79人 68.4%)、 18点未以下(43人/79人 54.4%)

 3年生は2校とも得点3割以下が半数を超えている。高校の評価基準でいうと、過半数が「赤点」である。この成績下位層は小数点の位取りや分数計算が怪しい、つまり、小学6年生の範囲の基礎計算力がないとみてよい。
 中学校の先生たちはブカツに明け暮れ、放課後補習すらやらずに、この生徒達を放置している。毎回やるテスト結果からはっきりしているのに手を打たないできた。努力している先生が一部にいることは認めるが、結果はこの惨状である。1月下旬にそのことを弊ブログで指摘したら、とんでもない炎上騒ぎがおきた。地域社会の批判に素直に耳を傾け、学校を挙げて低学力の解消の努力をすべきなのだろう。ブカツを制限して放課後補習体制を組むことを勧めたい。それは学校管理職である、校長先生と教頭先生の役割だ。
 学力テストの平均点は教えている生徒達がつけてくれた「通信簿」、先生たちの仕事への評価通知だと受け止めるべきだ。理科の先生は自分の教え方を点検したほうがいい。校長や教頭先生は授業をみるて具体的な改善アドバイスをすべきだ。百点満点で他の学校よりも20点高い平均点を数年間たたき出す先生がB中学校にいたことがある。小テストを繰り返して記憶の定着を図っていた。それなりの工夫をすれば生徒たちの学力が上がり、結果として平均点が上がることは実証済みである。
--------------------------------------------------


 4月12日に実施された学力テストで、1・2年生で得点が30点未満の生徒は「小学3年生」用の計算問題から勉強すべきだ。中3年生は60点満点だが15点以下の生徒はやはり「小学校3年生」用の問題からやるべきだ。学校によってばらつきがあるだろうが、生徒総数の30~40%くらいはいるはず。それほど基礎計算力が劣化してしまっているということ。

 ページ数の半分くらいが解答・解説に充てられているので、家庭学習習慣があればごく一部の問題を除いてなんとか自力でやれるだろう。

【宿題方式による管理方式の限界】
 学校は専用のノートを用意するように生徒に要求している。宿題方式でチェックするということだろう。C中学校が配布が早かったが、A中学校でもB中学校でも配り終えた。
 あとはやらせれば効果はあるだろう。
 成績最底辺の生徒(下位20%)は家庭学習習慣がない生徒が多いから、そういう生徒をどうするかじきに検討しなければならなくなる。
 文章を式に書き換える問題は、日本語読解力の低い生徒のために学校で放課後補習が必要である。三人に二人はそういう層に属している。いくつかの角度から説明を尽さないと理解できない生徒層と考えたほうがいい。

【大きな問題なし:改訂上考慮すべき大事な問題はある】
 大きな問題はなさそうにに見えた。あえて、2点だけ挙げると、
①100ページの「小数と分数の大小関係」の問題で、
   -0.6>-2/3
 は、分数を小数に置き換えて、数直線図にプロットしてあげたほうが親切だろう。

②「文字の使用②」(1年生用)
 「毎時3kmの速さでx時間歩くときに進んだ道のり」
 「式) 3×x=3x    3km」
 
 言葉の使い方が気になった。「道のり」は小学校用語である、中学校では「距離」と書いてほしい。単位同士も演算対象になっていることを明示すればもっと理解しやすい。
 時速は「距離/時間」だから、単位系だけを取り出して計算式で表せば、「(距離/時間)×時間=距離」とやれば、生徒が理解しやすい。分速の場合には時間を分に変換しなければいけない理由がわかる。
 これは内包量がかかわる問題だから、丁寧な解説がなければいけない。内包量かかわる問題はむずかしいので放課後補習をすべきだ。扱いがいかにもおざなりにみえる。食塩水も内包量(比の値)のかかわる問題だ。

【日本語読解力:問題文を式に置き換える作業】
 「文字式の使用」の項では、商品を2割引する問題も出ていたが、「定価×0.8」という説明では「2割引」の意味とのつながりが見えない生徒が3人に一人ぐらいの割合でいるのではないだろうか?
 根室に戻って私塾を開き10年間子ども達に教えてみたが、生徒たちが理解できるあるいは扱える日本語語彙群がはっきり劣化してきている。PCゲームや携帯電話の普及や機能強化と関連が強いのだろう。
 語彙力が劣化すれば日本語読解力も低下するのは当然である。日本語能力の低い生徒は高校生になってから学力が伸びない、いわゆる「学力のノビシロ」が小さくなってしまう。
 留学経験のある大数学者の岡潔、やはり留学経験のあるフィールズ賞受賞者の小平邦夫、そして『国家の品格』の著者の藤原正彦の三人の数学者が、小学生の時期は英語の勉強をすべきときではなく、日本語後語彙を増やさなければならない時期であると主張している。
 英字新聞のジャパンタイムズが4/14付けの社説で、過熱する英検テストを取り上げた、小学生の英検受験者が激増しているという。5歳の子どもまで受験している愚をとりあげている。小学生は日本語能力を高めるべきで、英検テストでの得点を目標にした勉強は問題が多いと指摘している。弊ブログでも近々紹介したい。
    "Testing children's English ability"

【基礎学力の低下は何をもたらすのか?】
 成績下位20%の中学生の日本語語彙力は小学4年生以下である。低学力とは「読み・書き・ソロバン(計算)」の力が弱いということ。小学校で英語を教えるなんてバカなことをする前に、国語の授業時間を増やして、良質のテクストを選び音読トレーニングをして文章語の語彙拡張を図るべきなのである。外国語の運用能力は母語の土台の上に築かれるもので、土台がしっかりしていないとダメだ。いま小中学生の母語能力が著しく低下しつつあるのは要注意で、日本人の学力レベルに大きなマイナス作用を及ぼすことになる。授業で先生が話す日本語が理解できない生徒が増えている。
 C中学校の社会のN先生は新しい漢字熟語が出てくる都度、板書して意味を解説していた。フリー参観授業のときに「温暖湿潤」と板書して漢字の意味解説をしていた。そうしなければ伝わらないほど生徒の日本語語彙が貧弱になっている。

  #2267 Testing children's English ability
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-18



【ブカツをやっている生徒こそたくさん本を読ませよう】
 小学校からブカツに熱心な生徒たちは本を読まない、あるいは本を読む時間の少ない者が多い。時間がないからだろう。ブカツのやりすぎは子ども達の基礎学力に強い影響を与えている。土日は原則ブカツ休止日をすべきだ。ブカツをやっている生徒ほど、土日は勉学に専念しろと先生たちは口を酸っぱくして言わねばならない。健全な家庭学習習慣を育むことでも根室の子ども達の学力を全道一にすることができる。

【結論】
 『カルク』はよくできている。たくさんの生徒がこの問題集で勉強して学力を上げてほしい。基礎計算力がしっかりすれば数学は楽しくなる。

(成績上位層(上位20%)には必要のない問題集だから、免除してやってほしい。一律はよろしくない。)
(単位の変換系の問題があったかどうかをチェックしそこなった。時間の引き算や足し算問題の有り無しもチェックしていない。もう少しサーチする必要がありそうだ。基礎資料になっている道教委のチャレンジテストはこれらも網羅されていたはずだから、心配ないだろう。しかし、チェックはしておきたい。)

--------------------------------------------

 ブログ情熱空間の関連記事
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/6453579.html

*#2262 計算問題集『カルク』配布
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-14

--------------------------------------------

にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 根室情報へ
にほんブログ村


nice!(3)  コメント(3)  トラックバック(0) 

nice! 3

コメント 3

Hirosuke

市販の中学生むけ全国標準の本にはない、
地元志向の特徴を持った問題集なのですね。

解説の分量も充実しているようですから、
参考書と言っても良いのかもしれません。

次のステップは、
この「カルク」を利用して、
いかに学習スタイルを確立し、
知識と能力を定着させて行くか。

ウチの塾で導入している、
「公開管理」が参考になれば幸いです。

by Hirosuke (2013-04-17 10:26) 

ebisu

「公開管理表」のデザインを検討しています。
今夜エクセルで作る予定です。
来週から、中2と中3対象に試行してみます。
しばらく反応をながめます。

中1のクラスは学習意欲が高いので管理しません。それぞれのペースでしっかり自己管理できています。

>いかに学習スタイルを確立し、
>知識と能力を定着させて行くか。

原点回帰。
by ebisu (2013-04-17 10:51) 

ebisu

あはは、忘れ物の公開管理表まで作っちゃいました。
今日からやってみます。

子ども達の幼児化傾向が年々強くなっているのが気になります。
by ebisu (2013-04-17 12:24) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0