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#2241 新出生前診断(北海道新聞):できない言い訳はしない Mar. 10, 2013 [仕事]

 #2224へ市立根室病院で起きた医療事故訴訟関係投稿が続いたのでというわけではないが、今回は医療関係のニュースの論評である。

 出生前診断に関するニュースが3月10日の北海道新聞一面に載った。初産の高齢出産は胎児に異常が出る場合が増えるから、妊娠初期に胎児に異常があるかないかを診断する検査である。
 23年前に日本国内ではじまった。ebisuは国内最大手の臨床検査センターで出生前診断の仕事に関わった。

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/447743.html
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*「新出生前診断、4月開始へ 日本産婦人科学会が指針策定」
日本産科婦人科学会(日産婦)は9日、妊婦の血液で胎児のダウン症など3種類の染色体異常を高い精度で調べる新しい出生前診断「母体血胎児染色体検査」の実施指針を理事会で決定した。日本医学会に設置した施設の認定・登録機関で審査を今月中にも終え、4月から検査を開始できる見通しという。
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  私が出生前診断にかかわったのは国内最大手の臨床検査センターに勤務していた1990年春のことである。ひとつの「特殊な事情を抱える検査」が社会に認知定着し第2世代の検査が始まるのに23年の月日が必要だったのは驚きである。

 私は1989年12月に大手臨床検査センターの購買課から学術開発本部へ異動になり、数ヶ月したころに向かいに座っている米国で二十数年間仕事をしたことのある女史から「相談」を受けた。ニューヨーク州から取り寄せた資料のコピーを渡されて彼女の状況説明を聴いた。仕事をもってきたのは学術営業のS君((現)栄養医学研究所長)で、K大学医学部が大手臨床検査センター3社に出生前診断に関する資料の取り寄せを要望したというのである。もちろん、妊婦のデータをとり学術論文にするためだろうから、専用の検査が国内でできなければならない。新しい検査項目導入の話しでもあった。
 沖縄米軍からも似たような依頼が来ていた。米軍は法的規制があって女の兵士については、出生前診断をすることになっていたので、検査受け入れ体制をつくってほしいということだった。SRLは1988年に世界で一番厳しい米国臨床検査品質管理基準のCAPライセンスを取得していたから、白羽の矢が立ったのだろう。これはこれで3000検査項目の標準作業手順書を英文で作る作業だったから、たいへんな仕事だった。14ヶ月学術開発本部にいたが、本部内の精度保証部はこの作業手順書の電子ファイル化をした。手順書の更新が頻繁でたいへんだったからである。

 S君はシステム部に話しをもって行ったようだが、女史に「断られたでしょう?」と訊くと、できない理由をいくつも並べたようだった。出生前診断に必要な妊娠週令や体重、人種などの項目が基幹システムの入力項目にないから不可能であるという回答を予想したらその通りだった。できない言い訳は誰にでもできるが、それを言ってしまったらお仕舞いで、誰もやったことのない仕事をするチャンスを自ら棄ててしまうことになる。せっかくのチャンスをもったいない。

 私はニューヨークから取り寄せた資料のコピーを見て、載っている表のデータをHP-41Cに入力して回帰分析してみた。使用したのは統計の汎用ソフト二次関数のカーブフィティングである。算式が確認できたので残差の計算も手計算してみた。相関係数は自動出力されるのでそれもチェックした。これで計算の仕組みは理解できたし、回帰曲線の算式や精度も確認した。ここまでが一日である。
 話しを聴きながら資料にざっと眼を通したら、対応システムが頭の中で組み上がった。女史には「たぶん問題ないと思います、私のほうからシステム本部には話しを通します、この仕事は学術開発本部として引き受けるのでS君にはそう伝えてください」。本部長I取締役の了解をもらわないといけないが、なんてことはない、わたしとその女史の右となりがI本部長席だからやり取りは全部聞こえている。「やっていいですね」「やれ!」で報告・承認完了。仕事上の信頼関係があると話しは簡単になる。社内書類上は営業本部学術営業部の依頼を受けて八王子ラボ学術開発本部がこの案件を仕切るということになった。

 私は沖縄営業所のパソコンで処理するシステムを考えていた。基幹業務システムに入力されない項目は沖縄営業所のパソコンに入れておく、そして検査結果が返ってきたら、沖縄営業所で結果ファイルと必要なデータファイルの結合処理を行い、出生前診断のアルゴリズムに乗せる。uE3(エストリオール)とhCGとAFPの3項目のデータで計算すればいいだけ。この程度のシステムならパソコンで充分である。その当時はパソコンを業務で使うという感覚はなかった。まだ性能が脆弱だったからである。

 ついでだから話しがすこし脱線することをご容赦いただきたい。1~2年前に臨床化学部のある課がパソコンのネットワークシステムを作ろうとして失敗し、50台段ボール箱に入ったまま廃棄処分処理をした。指示をしたのはもちろんebisu。購買課で機器担当だったからメーカとの共同開発品の管理はもとより、ラボ内の固定資産も全国の営業所の固定資産も全部私の管理に任されていた。ラボにはラボ管理部という部署があり、そこに機器担当者がいた。その上で管理していたのが組織上本社総務部購買課の機器担当ebisuである。異動前に全社予算を統括していたから「大物」の機器担当だっただろう。パソコン50台くらいは、「耐用年数(2年)がすぎるまでそのままにしておき、後は廃棄処分を出すように」、これでだれも瑕がつかない。たかが600万円程度の損失で現場の開発意欲を削いではいけないし、失敗を認めなければ発展もない。固定資産管理者の役割は失敗を大きな経済損失にしないこと。あまり好い加減な企画で走ろうとしたら金額が大きければストップさせる。職位が上の者の失敗は咎めるべきだが、若い者の失敗は人財育成費用と考えるべきである。
 初めて実地棚卸しを本社管理会計課員として担当した当時、ラボ副所長がかかわった案件で数千万円の機器開発が失敗に終わった残骸を複数見つけた。それも全部処理してあげた、その代わり、以後副所長案件の開発は禁止と現場に念を押した。開発案件ではラボ内で誰も言うことを聞かなくなっただろう。どうせ損失を出すなら、先のない副所長ではなく若い係長クラスの試行錯誤を認めてやりたかった。
 就職斡旋期間のリクルート社の紹介で1984年2月に上場準備中のSRL社へ中途採用された。上場要件である会計システムを8ヶ月で本稼動させ次の年には管理会計課で私は全社予算を統括していたから、いわゆる絵に描いたような「本社エリート」。上場要件で固定資産の棚卸しが必要だったので、自分で全部棚卸ししてチェックした。ラボだけで3日かかった。購買課の機器担当のFさんとラボ管理部の機器担当Hさんが協力してくれた。実地棚卸しと同時に不良資産を一気に処分した。経理部長へその旨通告するだけでよかった。固定資産管理を引き継ぐときに経理部長には自分で実地棚卸しをするから、過去の経緯は不問にして、不良資産の処分を一気にやる旨の了解を取ってのことだった。松山商業高校出身、富士銀行からの転籍組みのIさんはなかなか話のわかる人で全部任せてくれた。会社上場が錦の御旗だからこそそういうことが可能だったのだろうと思う。私は中途入社して1年の平社員、売上規模は300億円、従業員数は2000人、面白いでしょ民間会社って。自分に権限がなくても、権限をもった人の了解があれば大概の仕事はできるものです。要は仕事の仕方次第、だからできない言い訳をするヒマがあったら、どうしたらできるのかを考え続けること、道は必ずある。
 臨床化学部のある課のネットワークシステムはパソコンに双方向のインターフェイスがないので無理だった。わかっていたけど失敗させてみた。そうしないともっと大掛かりなことをして会社に損害を与え居られなくなる、それは人材喪失。この係長は数年後に課長になった。うれしかったね、人材を失わずにすんだ。この当時はパソコンを少し使えるようになった「マニア」がこういうことをやりたがったが、制御系のデータ処理用コンピュータのことを知らない者たちばかりだった。知識が不足していると百回やれば百回失敗する。わかって適度な失敗を若いときに経験させるためには会社の「ゆとり=高収益」が必要なんです。
 私は前職(軍事及び産業用エレクトロニクスの輸入専門商社)でいろんなタイプのマイクロ波計測器や時間周波数標準機、質量分析器や液体シンチレーションカウンター見ていたし、毎月開かれる技術系の社内講習会や海外の取引先から技術者が来て開く新製品説明会のほとんどに出席していたから、その仕組みや制御系データ処理用コンピュータの性能に詳しかった。臨床検査機器のインターフェィスはとても遅れていた。当時のマイクロ波計測器ではGP-IBが標準仕様だったが、パソコンはシリアルインターフェイスだった。これでは使えぬ。インターフェイスだけでなくCPU性能も業務使用を考えると貧弱で信頼性に欠けていた。NTサーバが出るまでは一台3000万円もするミニコンでなければやれない仕事だった。

 システム本部へ学術開発本部から要請書を出しC言語のプログラマーを一月間借りた。システム本部へは相談は一度もナシ。具体的なやり方を指示しだけ。
 システム仕様書はアルゴリズムを含めてプログラム仕様書レベルのものを書いてプログラマーのU君へ渡した。1ヶ月ほどでシステムが出来上がり、沖縄米軍へ学術開発本部長のIさん、学術営業のS君、プログラマーのU君と一緒に説明に行った。6月の3日間の沖縄出張だった。沖縄米軍からはたいへん感謝された。三沢にある米軍はそれまで入り込めなかったのだが、この案件を手掛けたお陰で取引が開けた。
 1年ほどしてから3件異常値が出たが3件とも染色体検査で陽性が出たと聞いた。S君とほっとした。私たちは気が小さいから、やって結果を見ないと安心できない。そのときの返事、
「おお、予定通りだな!しかし、ちょっとできすぎだ」
 検査精度から考えると、次のケースあたりで擬陽性が出そうだった。確定診断の染色体検査があるから心配要らぬが、それにしても羊水穿刺はできるかぎり少なくしたかった。日本の羊水穿刺技術は諸外国に比べて失敗例が半分以下ではないか?あの当時で「標準値」で200件に1件の割合だったと記憶する。S君と私はそういうことを気にしていた。

 K大学病院産婦人科からの要請は沖縄米軍の結果を引っさげていったから話はスムーズに進んだ。MoM値(出生前診断検査)は人種で基準値に違いがあることが米国の研究で分かっていた。黒人は白人よりも10%高い。日本人の基準値はどうなのかという学術上の興味がわくではないか。
 私の役割は学術上の検査だから検査料金を無料にし、K大学から送られてくる検体を検査部門に回すことだった。製薬メーカ2社の営業担当へ連絡してK大分の3項目の検査試薬をただにするように交渉した。結果データは製薬メーカ側で使ってよいという条件を提示した。数年にわたって検査試薬をただにするにはそれなりの大義名分が社内稟議を通すためには必要なのである。現実の仕事をスムーズに運ぶためにはこういう細かいところが大切。
 製薬メーカはダイナボットもファルマシアジャパンもDPCも検査試薬の価格交渉の当事者だった元購買課の私が窓口ではノーとは言えない、購買部長になるかも知れぬのだから。ファルマシアは日本市場の特殊性を説明して、価格を20~30%値引きさせた。マルチアレルゲンで世界市場で当時はあの会社にしかない検査試薬があった。「日本の商慣行どおりにディスカウントすれば売上は1.5倍は行くだろう、だから下げろ」とシビアな交渉だった。ファルマシアはそれを飲んだ。売上は2倍くらいに膨らんだ。日本法人社長はずいぶん偉くなって「ご栄転」した。ファルマシアLKBの製造するγカウンターもSRL仕様が実質日本標準だから開発してカタログに載せるように要求するとすぐに対応してくれた。真っ白い、デザイン性のよい製品となった。SRLは全部ファルマシアLKB製品へ切り換えた。わたしは、RI部にファルマシア製品を買えと強要したことは一度もない。見た目がよかったし、その前にいれた濾紙フィルターを使った革新的な液体シンチレーションカウンターで現場がこの会社の製品の独自性と開発力の高さを認めていたからだ。これは購買課時代の仕事だった。
 購買課から学術開発本部へ異動して、こんな産学協同研究仕事を仕切るなんてことは後にも先にも前例がないから何者かと気味が悪かっただろう。
 どんな会社だって本社で予算を統括した人間が購買課で検査試薬の価格交渉と機器担当をやり、その後学術開発本部で検査試薬の共同開発や大学医学部と共同研究のコーデネィタを担当するなんてことはありえないのである。マルチを可能にしたのは基礎学力の高さと考え抜く力。

 検体の受付は数回やってすぐにルーチン部門へ回してお役ごめん、これで検体受付業務の実際が体験できた、やってみたかった。営業所で準社員がやっているルーチンワークだったが、一月ぐらいやってみたかった。もちろんやらせてもらえるわけがないがチャンスがめぐってきたというわけ。
 一番問題だったのはK大産婦人科医とある医学会でデータ解釈上の議論をしてしまった研究部のF君がデータ解析の責任者だということかもしれぬ。トラブル後、創業社長が「いきすぎがありました」と謝罪にいったと聞いていたから、K大医学部産婦人科医局内部で当社の評判はあまりよくなかったはず。F君にしても学術上当然の論だったから折れるはずがない。腕に自身のある技術者とは扱いにくいものなのである。ところが、F君に資料を渡して説明すると、「ebisuさんの要請だから・・・」と気持ちよく引き受けてくれた。社内で彼のやる多変量解析のことがわかる人間はそうはいなかったから、得をした。前職でもそうだったが技術部の人間とはすぐ友だちになれた。技術端の専門的な話のわかる経営管理専門家は珍しいからかも知れぬ。こういうことがある2年も前にF君から誘われて二人だけで酒を飲んだことがあった。彼は2歳くらい年下だったから、兄貴分と認めてなついてくれた。お互い技術屋同士だから相手のレベルは仕事や相手の作った資料を見ればすぐに了解できたのである。面白い話しを彼から聞いたがブログには書けぬ。仕事の関係ができるとはそのときにはどちらも思っていなかったはず。何が役に立つか分からぬものだ、仕事は人と人の信頼関係で半ば解決がついているもの。だからふだんの仕事の仕方と、生き方そのものが問われる。

 一度だけS君に付き合ってK大産婦人科医局を訪れたがずいぶん待たされたような気がする。製薬メーカと検査試薬の価格交渉を年に一度やるが、相手が営業担当であろうと、日本法人社長であろうとこちらは待たせることも待たされることもなかったから、営業はたいへんだと感じた。メインバンクの新宿西口支店長は取締役だったが、それも同じ。メインバンクは副社長と経理部長を送り込んでいたが遠慮は一切なし。会社は高収益で実質無借金経営だった。増資をしなくても内部留保で必要な自己資本蓄積の可能な会社だった。
 担当ドクターに挨拶だけして、検査料はダダ、代わりに製薬メーカのデータ利用を認めることなど、前提条件と実際の段取りをざっと説明しただけだったはずだが記憶にない。あるいはそのあたりをS君が説明してわたしはこのプロジェクトのコーディネータとして同席したのかもしれない。検体を受け取ってから多変量解析まではSRLでやり、結果の発表はK大医学部産婦人科の役割という取り決めだった、大事なことは口約束のみ、文書にはしない。日本流の仕事の進め方を守った。
 その帰り、信濃駅前に美味しいカレー屋さんで食事した記憶だけが鮮明に残っている。夏になると1ヶ月ほど休んで本場のカレーを食べ歩いているという店主、小さな店だが流行っていた。あれは何月だったのだろう?その後独立して栄養医学研究所を創業したS君は覚えているだろうか?

 数年かけて日本人の妊婦3000人のデータを多変量解析した結果、白人に比べて基準値30%高いことが分かった。それが事実上の日本標準になっている。不思議なものだ、産婦人科学会でデータの取り扱いについて激論を交わした当事者が手を組んで仕事をすることになり、数年にわたるデータ収集と多変量解析でMoM値の日本標準値が決定され、学術的な意義の高い研究に結実している。
 ebisuはこういう人と人とをネットワークする仕事が好きである。異質の分野の有能なエキスパートが協力したら大きな仕事ができる。コーディネータに要求される資質は基礎学力の高さである。クロスオーバーする複数の専門分野を理解する基礎学力があればいい。
 臨床病理学会と臨床検査大手6社の臨床検査項目コード検討会のコーディネートはまったく別の狙い(日本全国の主要な大学病院をネットワークでつなぐ臨床診断支援システム)があってついでにやった仕事だったが、いま日本中の病院で使われている(もちろん市立根室病院もこの臨床病理学会の検査項目コードがシステム内部で使われている)。この件では自治医大の櫻林郁乃介教授にお世話になった。当時の臨床病理学会項目コード委員会の委員長だった。産学協同でやりうる仕事はたくさんある。

 K大とトリプルマーカであるMoM*値の日本標準値検討共同作業にはわたしは入り口のところでコーディネータとしてこの仕事に関わっただけである。当時の検査よりも格段に精度の高い検査が開発されたことを喜びたい。

*「妊娠中期母体血清α-fetoproteinおよびhuman chorionic gonadotropinのMoM値の算出における妊娠週数, 母体体重, 母体年齢の影響について(1994-07-01 社団法人日本産科婦人科学会)
http://sc.chat-shuffle.net/paper/uid:110002109039
(この論文では1964例、期間は1990年10月から1993年3月までとなっているが、その後も症例数の蓄積が行われた。)
*MoM値参考資料:日本産婦人科学会
http://www.jsog.or.jp/PDF/58/5809-197.pdf

 この検査は生命倫理と関わりがあるので、検査が陽性に出た後のフォローがむずかしいから、小児科医と産婦人科医のほかにこのどちらかが臨床遺伝医の資格をもつことを条件としている。
 ところがこういう条件を満たせる病院は都会にしかない。北海道では北大病院がとりあえずやるようだ。高齢出産が増えているから、この検査に対する社会的なニーズは大きいのにこれでは実質的に検査を禁止するような懸念がある。理屈としては分かるのだが、現実はかなり無理がある。
 北海道なら北大病院と各地域の中核病院が連携してできることもあるのではないだろうか。改善を望みたい。
 
*産経ニュース「出生前診断・・・」
http://sankei.jp.msn.com/science/news/130309/scn13030922440000-n1.htm?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter

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【中高生諸君へ】
 勉強が大事だ。数学も英語も大事だ、一番大事なのは母国語である日本語だ。小学校の時代に日本語語彙の仕込みの時期がある、ここが基礎だ、そこを国語辞書と漢和辞書を使ってしっかりクリアできた者は中学や高校で一時期読書三昧を過ごす。この時期に日本語語彙は穏やかに拡張していく。後は読む本のレベルに応じて日本語語彙が拡張できるだろう。

 勉強なんて対して役に立たぬと言う先生たちが小数だがいるが、それは間違いだ。どんな勉強も役に立たぬものはない。特定分野の専門知識と技能をもち、数学と英語の両方ができたら仕事の守備範囲は飛躍的に広がるものだ、そういうことを実例で知ってほしい。
 基礎学力が高ければたいていの専門書は読みこなせるし、医学やマイクロ波計測器やコンピュータシステム関係の講演会を聴いても理解できるものだ。

 昨日、東京での仕事の話しを少ししたら、「僕は先生の過去のこと知らないから・・・」と話しをまるで信用しない、架空の話しをしているように受け取っていた。「塾先生」という職業にある種の固定観念があるようだ。大学卒業して地元で塾を開業・・・、あのね世の中は広い、塾先生にもいろんな変り種はいるのだよ、大学院で学び時代の先端の東京で二十数年間働いて、50歳になってから古里にもどって私塾を開業する、わたしはそういう変り種の中の一人。
(私は教え方では「釧路の教育を考える会」の"合格先生"ことIさんにはとてもかなわない、分析力もどうやらずっと上手(うわて)に見える、異色の人材だ。現職教頭のMさんも他人には真似のできない決断のできる侍であり、異色の一つに数えられる。社会保険労務士と塾経営者の二足の草鞋を履く"ブルトーザ"のMさんも異色だ、この馬力の大きさはうらやましい。教育問題を釧路市議会でとりあげ超党派の議員連盟まで立ち上げてしまった月田市議(市議会副議長・議員連盟会長)も全国の公明党市議の中でこんなことをやっている人は二人といないのではないかと思うほどの異色の人材。「釧路の教育を考える会」会長の角田さんは元釧路教育長だが、これだけユニークな人材が集まってしまった会をふんわりと束ねてくれている。穏やかな表情をしながらときおりギラリと目が光るこわい瞬間がある、現職時代にお会いしたかった。釧路市役所次長職も異色のお二人が会の運営をしっかり支えてくれているし、地元経済界も志を同じくする人々が自然に集まっている。このように世の中に異色の人材は案外多く、それが集まると何かが起きる。核燃料みたいなもので数が集まるとどこかで臨界を越えてしまうのだろう。でも放射線は出ないからご安心を、釧路と根室の教育改革のための連鎖反応の起爆剤となるだけである。)

 10代は一生懸命に勉強(自分のため)
 20代30代40代は渾身の力で仕事(日本のため)
 50代からはふるさとのために何かをする(育ててくれた古里への恩返し)
 これが私の生き方。

 大事なのは空よりも高い志

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*#1570  学力と語彙力の関係(1):総論 July 5, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-07-05

 #1572 「学力と語彙力の関係(2): 5科目合計点が高い⇔国語の得点が高い?」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-07-05-3

 #1573 学力と語彙力の関係(3): 英英辞書と母語の語彙 July 7, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-07-07

  #2103 知的好奇心の効用(2):染色体画像解析装置をめぐって Oct. 21, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-10-20


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Hirosuke

「学校の勉強なんて役に立たない。」
   ↓
確かに、そうですとも。
学校で習う域を超えなきゃ、何の役にも立ちません。
学校の勉強なんて、部活でやるランニング程度のモノ。
でも、ランニングだけで試合に勝てますか?
それを礎に、理論・技術・作戦・判断力を上積みする。
そういう努力を自主的に継続できて、成長し続けて行ける選手こそが、最終的に勝つんですよねぇ、イチローみたいに。
  ↓
だから、
勉強というと学校レベルしか知らない人こそ、
「学校の勉強なんて役に立たない。」
なんて暴言を吐いちゃうんですよ、
生徒諸君。

by Hirosuke (2013-03-11 01:49) 

Hirosuke

新ブログを作りました。
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おすすめ資格本ガイド by 資格マニア
http://licence-mania.blog.so-net.ne.jp/
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「作っては潰し・・・」の繰り返しですが、
試行錯誤から生まれ出ずる物事もある訳でして。

そうした小さな実験的なアイデアを、
漸次的に LMN や YAMATO に盛り込む。

学校じゃ習わないですね、
こんな事も。

by Hirosuke (2013-03-11 02:02) 

ebisu

Hirosukeさん、おはようございます。
金曜日の夜に引いた風邪がようやく全快しました。体が元気を取り戻して喜んでいます、さわやかなな朝です。

>「学校の勉強なんて役に立たない。」
   ↓
>確かに、そうですとも。
>学校で習う域を超えなきゃ、何の役にも立ちません。
>学校の勉強なんて、部活でやるランニング程度のモノ。
>でも、ランニングだけで試合に勝てますか?

わたしも、
「勉強なんて対して役に立たぬと言う先生たちが小数だがいるが、それは間違いだ。どんな勉強も役に立たぬものはない。特定分野の専門知識と技能をもち、数学と英語の両方ができたら仕事の守備範囲は飛躍的に広がるものだ、そういうことを実例で知ってほしい。」
と書いています。
手を抜いたらダメですね、とことんやらなきゃものにはならない。それは職人になるのでも同じこと。とことん学ばぬ者、トコトン仕事しない者は一人前にはなれない。半端職人で終わるだけです。勉強できないから手に職をつけて職人になろうなんて職人をなめてはいけない、勉強のほうがよほど簡単。

あたらしいブログ、楽しみにしています。創っては壊しているうちに納得の行くものが生まれますよ。

by ebisu (2013-03-11 08:25) 

月光仮面

愚痴話 その1。先ずはネタの提供

どこに書くべきなのか迷いましたが、取り敢えず医療関連のスレッドですのでここにしました。

医師法に依れば、医師には「応召義務」が有ります。以下はウイキペディアに書かれているその内容です。

応招義務とは、医師法第19条で「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と規定する、医師や医療機関に課せられた患者の診療義務のこと。罰則規定はない。

ただし、厚生労働省(当時の厚生省)は以下のように述べている。
1. 医師法第十九条にいう「正当な事由」のある場合とは、医師の不在又は病気等により事実上診療が不可能な場合に限られるのであって、患者の再三の求めにもかかわらず、単に軽度の疲労の程度をもってこれを拒絶することは、第十九条の義務違反を構成する。
2. 医師が第十九条の義務違反を行った場合には罰則の適用はないが、医師法第七条にいう「医師としての品位を損するような行為のあったとき」にあたるから、義務違反を反覆するが如き場合において同条の規定により医師免許の取消又は停止を命ずる場合もありうる[1]。

また、休診日であっても、急患に対する応招義務を解除されるものではない[2]。

休日夜間診療所、休日夜間当番医制などの方法により地域における急患診療が確保され、かつ、地域住民に十分周知徹底されているような休日夜間診療体制が敷かれている場合において、医師が来院した患者に対し休日夜間診療所、休日夜間当番院などで診療を受けるよう指示することは、医師法第十九条第一項の規定に反しないものと解される。ただし、症状が重篤である等直ちに必要な応急の措置を施さねば患者の生命、身体に重大な影響が及ぶおそれがある場合においては、医師は診療に応ずる義務がある[3]。

この「応召義務」と言う問題、実は医師にとっては非常に頭の痛い、言わば孫悟空の頭のタガみたいなものです。翌日に大事な手術や外来業務が控えているのに、「当直」と称して夜通し夜間診療。昨今マスコミを賑わしている「救急搬送での受け入れ不能」問題。「診療費不払い常習者」の問題。「病院内で暴力に及ぶ」クレーマー。病院外(実際には飛行機内や列車内)でのドクターコールetc.これらの多くの問題の根には「応召義務」の考えが横たわっています。

最初にお断りしておきますが、「応召義務」は医師法に書かれてはいますが、現在では罰則が科せられたものではありません。「まあ出来れば従って欲しい」と言う医師としての倫理規定とされています。つまり、「you must」ではなく、「you’d better」と言ったところ。

続きは次回に。

by 月光仮面 (2013-03-12 17:06) 

〇〇

北大病院は遅いので有名ですからね…例えば、体外受精でも、10ヶ月くらいかかります(道東から通いの場合)。その間に検査や採卵などでも通わなくてはならないので、交通費を考えるとどうも無理な話かと思います。出生前診断もしかり…北大病院まで出向いて検査は妊婦なら、難しいでしょうし。他の病院で採血して送るのもどうでしょう…

この検査、私達の世代ではとてもデリケートな話題になってしまうんですよね。ダウン症のお子さんを抱えた方も存じてますし。しかし、将来を悲観して、その命を淘汰してしまうのはあまりにも儚い検査のような気がします。特に35歳以上は妊娠しづらい年代ですし、その命を諦めてしまったら、二度と授かることのできない命かも知れないのですから…不妊治療をしていたりすると尚更。検査料も高いですし、欧米並に浸透するかはまだ先の話でしょうね。

日本はマイナスな情報は教えない国ですから、出生前診断よりも先天性の病気や五体満足に産まれて来ないこともあるなどの教育を行った方が良いような気がしますけどね。今の子達は兄弟が少ないので(私も一人っ子ですが)、小さい子が言うことを聞かない、訳もわからず泣くと言うことが分からない子も多いですから、そのまま大人になってしまうと虐待や何かに繋がるような気がします。周りに赤ちゃんも少ないのも事実ですけどね。どこかの中学校でやってましたね。6ヶ月くらいの親子を呼んで交流させる。子供ではなく、けれど近いうちに大人になる中学生でって、ふれ合うのはよい時期かと思いました。
by 〇〇 (2013-03-12 22:09) 

ebisu

月光仮面さん、こんばんわ。

「応召義務」の解説が前フリだとすると、何がはじまるのでしょう。

by ebisu (2013-03-12 22:28) 

ebisu

〇〇さん、おばんです。

①35歳以上の高齢出産が増えていることが問題ですね。生物的には20前後の若い体が子どもを産むには最適です。年齢が上がるにつれて急激に染色体異常の確率が上がります。

②染色体異常がこの30年ほどの間にずいぶん増えているようです。SRL社に25年間ほどのデータ蓄積があり、染色体異常に関する研究者に個人が特定されないような形でオープンになれば、あるいはその定量的な実態が解明できるのかもしれません。

③ダウン症は21番トリソミー(通常は二つのものが三つある)ですが、脊椎二分裂や無脳症などがチェックできます。生きて生まれない症例の場合は、母体の安全のために早い処置が望ましい場合もあります。

④まことに書きにくいのですが、福島原発事故で未成年が多数内部被曝しています。それがどういう確率で染色体異常を引き起こすのか、いままさしく人体実験場の様相を呈しています。これから子どもを産む子どもたちを内部被曝させてはいけない。

⑤染色体異常は遺伝子レベルでの障害が染色体のバンドの異常としてあらわれたもので、先天異常も引き起こしますが、後天生の異常も引き起こします。白血病もその中のひとつ。

議論も必要ですが、平行して希望者には検査が受けられる体制の整備が必要です。
私がかかわってからもう23年たちますが、この問題はおそらくいくら議論しても結論はでません。あと23年たってもこの状況は変わらないでしょうが、高齢出産と染色体異常は増え続けます。

むずかしいですね、とてもむずかしいです。

言いたくないことをさらにもう一つ付け加えます。英国ではこうした先天異常を全部生んでケアしたとしたら、医療資源をすべてそちらにつぎ込まなければならないという試算があると、当時聞きました。医療資源は有限ですから、その分配という問題も絡んでいます。
日本は超高齢化社会に突入しますが、老人の延命治療にどの程度医療資源を費やすのか選択を迫られることになるのでしょう。

若い人たちが、20歳前後で安心して子どもを産み育てられる社会をつくりたいですね。

私たち団塊世代は人口が多いですから、自分で食べることができなくなったら、延命治療はごめん蒙って、静かに逝かせてくれたらいい。人はいつかは死ぬのですから。そういう安らかな命終を若い人たちが看取ればいい。
by ebisu (2013-03-12 23:03) 

ebisu

さまざまな環境汚染のために、この日本列島にプールしてきた遺伝子をなるべく瑕が少ない状態で子々孫々に伝えることがむずかしくなっています。

私たちの役割は、できるだけ傷の少ない遺伝子を次の世代へ渡すことかもしれません。
そういう観点から見ると、福島第一原発事故は実にまずいことだった。日本列島であのような事故が3回起きたら、日本人の遺伝子はたいへんなダメージを受け、数千年間劣化したままになる。
原発は日本列島にいらない。
by ebisu (2013-03-12 23:19) 

Hirosuke

タバコの方が害があるそうですよ、
ウォール・ストリート・ジャーナルによると。

http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324432404578333660664690412.html?mod=WSJJP_Japan_Left_Latest_News

福島県の皆さん、どうか一刻も早く避難してください!
[英文テクニカルライターとして]
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2012-09-05
 ↑
この記事に対して、
「福島差別と風評被害の元」
とコメントした方が情報元です。

by Hirosuke (2013-03-13 00:05) 

ebisu

WHOの研究は批判が多いのではないですか?

原発再稼動に都合のよい「研究」はいくらでもでてきます。
「沈黙の春」を書いたレイチェルカーソンのときもそうでした。ケミカル会社が学会ぐるみで都合のよい研究発表をさせました。動物生態学者のレイチェルは孤立しながら戦いました。最後はケネディが味方についたのではなかったかな。長年にわたって学会に巨額の研究費を補助しているのですから、ケミカル会社に都合のよい研究発表を著名な学者たちにやらせるのが可能だったのでしょう。

WHOは国連機関ですから、もっとバランスをもった研究をすべきでしょう。

安全だという人たちは自分の子どもや孫を連れて移住なさったらいい。こどもを内部被曝させてしまった親の後悔、嘆きの声に耳を傾けるべきです。除染をしてもいまだに0.3マイクロ・シーベルトという土地もある。周りには野積みされた汚染土、そういう環境の中で子どもを育てる親はメッタに居ないでしょう。日々目に見えない小さな放射能のチリを吸い込み肺に蓄積します。肺胞に取り込まれてしまうとほとんど体外への排出はない。
肺の細胞に放射能の微小なツブがくっついて生涯にわたって微弱案放射線を出して遺伝子を障害するのをイメージするだけで、おおよその真相が理解できるでしょう。

またぞろ、震災当時にマスコミで毎日流された「ただちに健康被害はない」と類似の「主張」や「研究」が垂れ流されています。形を変えてこれからもでてきますが、自分の頭で判断するしかありません。

親の基礎学力と想像力が問われているのでしょう。子どもを守るのは最後はその子の親しかない。
本当に厳しい現実です。被災地の皆さんはこれからもたくさん出てくるであろう、こういう無責任な研究とも戦わなくてはならない。
by ebisu (2013-03-13 09:02) 

ebisu

児玉龍彦『内部被曝の真実』BOOKデータベースより引用転載

「福島原発事故では、広島原爆20個分以上の放射性物質が放出された。放射線による健康被害が科学的に証明されるまでには時間がかかる。安全か危険か議論するより前に、国が「測定と除染」に今すぐ全力を挙げなければ、子どもたちと妊婦を守れない。「民間のノウハウを集め、最先端機器を使って全国の産地で食品検査を」「低線量の膨大な放射性物質を処理するための法律の整備を」―内部被曝研究の第一人者が、政府の対応を厳しく批判しつつ具体的な対策を提言して大きな反響を呼んだ、国会でのスピーチを全文採録。 」

この本は私も読んでいます。
by ebisu (2013-03-13 09:26) 

NO NAME

愚痴話 その2 ”医師”とは?

皆さんは医師と言う職業についてどんな理解をなさっているでしょうか。よくドラマなんかで”凄腕”の外科医なんかが出先で緊急を要する患者に遭遇。とっさにカバンから手術器具を取り出してメス捌きも鮮やかに・・・まさにblack jackですが、まあ現実にはそんな事は無いと思います。日常手術道具を持ち運ぶ外科医など聞いたことが有りません。また職場から離れている医師は医師ではありません。
これ、何やら禅問答のようですね(笑)。つまり、確かに”医師”と言う生涯身分ではありますが、実際に医師として機能する(働く)には必ずどこかの医療関係施設(或いは役所、保険会社など)に属していなければなりません。名刺に「医師 Ebisu」では意味が無い。「〇〇病院 医師 Ebisu]でなければ成りません。これは分かり易く言うなら、Ebisu医師が旅先で高熱に見舞われ抗生物質が必要だと判断。最寄りの薬局を探し「俺は医師だ。××を出してくれ」と言っても薬局は相手にしません。何故なら認められた医療機関から発行された処方箋が無いからです。ただ”医師”と言うだけでは糸の切れた凧のようなもので、凧は糸で繋がっていなければなりません。確かに”医師”には他者には無い注射や投薬(麻薬も含む)、直接患者に触れる(手術も含む)、X線などの検査を指示する(直接シャッターを切ることも有る)、死亡診断するなどの特権が認められています。しかしそれはあくまでもその医師が認められた組織の一員としての話であって、風来坊の医師はに何も出来ません。(blackjackなどのように闇の世界で生きるなら話は別ですが)。つまり”医師”と言う身分はそれなりの環境を与えられて初めて”お医者さん(このニュアンス、妥当かな)”に成れるわけです。

何故ここまでしつこく”医師”と言う言葉に拘ったのか。勘の鋭い方はもうお気付きかも知れませんね。そうです。医師法の「応召義務」の所には「どんな環境ならば医師は・・・」と言う具体的な記載が無いのです。
「その医師が属する正規の医療機関などで、その医師が勤務する正規の時間に訪れる患者が医師と認識して診療を希望するなら」と言う一番重要な前提がわざと書かれていません。書かない理由はもう皆さんお分かりだと思います。「医師なんだから当たり前だ」? いや、小生はそうは思いません。”医師”が医師として機能する環境を明記することは、基本的に医師不足の我が国が労働基準法すら考慮して貰えない医師たちの”犠牲”の上に辛うじて成り立って事実に根底から問題提起をすることになり、責任官庁である厚労省の無能振りを曝け出すことに成るからです。

続く


by NO NAME (2013-03-13 09:47) 

ebisu

医師の仕事の解説の二回目がアップされました。

1.応召義務とは
2.医師の仕事は労働基準法適用外?

さて、3番目は何が提示されるのか、案外知らない医師の仕事の実際。
あとで、まとめて本欄へアップしたいと思います。
by ebisu (2013-03-13 12:32) 

月光仮面

愚痴話 その3 ”医師”には自由が無い?

先ずはお詫びです。「愚痴話 その2」のハンドルを書き忘れておりました(汗)。それと付け足し。

通常持ち歩くような医師の公的な身分証明書は有りません。強いて言えば医籍登録の際の「医師免許証」が唯一の証明書でしょう。しかしそこには写真などは載っていません。また最近ではそれぞれの科に専門医制度が普及し「〇〇専門医」「××認定医」などの肩書が急増していますが、これはあくまでその科の学会が独自に決めた制度ですので当然それを明記した国の証明書も有りません。日本では名刺が或る程度信用されている様ですが、あんな物は誰でも作れるので証明書では有りません。勿論所属組織が「〇〇病院の職員である」と言う身分証明書を発行する事は有り得ますが。実際には小生も職場の身分証明書を持ったことは有りません。ここの所を押さえておけば、いわゆるニセ医者に騙されなくて済みます。

さて、医師法の「応召義務」が生じる環境が曖昧であることがお上にとっては全く好都合だと書きました。国の制度の不備を現場の医師個人の責任にすり替える目論みが見え見えです。この曖昧さが漠然とした医師像(有るべきと言う期待)を民衆に植え付け、それを更にマスゴミが一定の方向へと世論操作でバックアップ。そして極めつけは、最近急増中の医療訴訟。アメリカ並みのロースクールで粗製乱造された弁護士どもが食い扶持を漁って病院に刺さり患者を扇動。それを裁判所の判事が判決でお墨付きを与える始末。この日本はつくづく嫌な国に成り果てました。

ではいよいよ「応召義務」への切り込みです。もし「応召義務」が医師の金科玉条ならば、「医師は自分を殺しに来る人間をも助けなければならない」と言う馬鹿げたシチュエーションも有り得ます。実際過去に根室の病院で起きた話だそうですが、病院の医師を自動車事故で殺した人間が自分も怪我を負い根室病院の整形外科に「治してくれ」と転がり込んだそうです。多分その時の整形外科の医師たちは断腸の思いだったでしょう。

これは一見蛇足に見えますが、日本の法制度や医療を理解する一助になると思います。小生は以前札幌の精神科の大病院でアルバイトをしたことが有ります。御存知のように精神科には以前から多くの男性看護師が居ますが、彼らが暴れる患者を制止する際には柔道や空手、或いは剣道などの武道や格闘技の技を使うことは許されていない。例え患者が刃物などを持って向かって来ても、だそうです。理由は至って簡単。法律上過剰防衛に当たるのだとか。蹴りを入れても投げ飛ばしても駄目。放棄などで刃物を持っている手を叩いても駄目。ではどうするの? ひたすら患者の体にしがみ付き動きを止める・・・だけなんだそうです。では不幸にも患者の刃物で刺されて命を落としたら・・・「もって瞑すべし」ですね。

「応召義務」は、かって少ない医師が患者を選り好む傾向が有ったのでそれを防ぐために考えられた指針とも聞いています。昔は今ほど問題のある患者は多くは無かったでしょう。ですから善良な患者(弱者)を見捨てる医師(強者)にはお灸を据えますよ・・・と言うお上からの指導だったわけですね。ですから現在のように「弱者でお客様である患者様は偉いんだ」とばかりに病院の業務を停滞させるようなクレーマー患者が居ない”良き時代”の遺物とも言えるのですが・・・とにかく今も厳然としてお上に取って都合の良いには違いありません。

そこで最近の救急患者搬送の各病院の受け入れ困難(小生も一応は医師ですので、”たらい回し”とか”受け入れ拒否”とかの言葉は使いません)の問題です。先日も20以上の施設で30回以上の救急隊の要請を断ったようです。その原因として、「満床だから」「他の患者の手術中で医師の手が足りないから」「専門医が居ないから」etcと報道されています。では受け入れを断った病院は「応召義務」に違反していないのか。
そこで医師側は”正当な理由”と言う水戸黄門の印籠を翳します。上に揚げた三つ程の理由を押し通せば一応は受け入れを何とか躱せます。先ず、実際にはその病院のベッド数を越えて患者を収容するのは無理でしょう。その患者の管理をどこのセクションが担当するのか。病棟が満員なので外来患者として受け入れるのか。満床を承知で無理に入院させるのだから廊下にベッドでも設置するのか。それとも救急患者なのだから優先して入院させるためベッドの確保で状態の良い誰かを無理やり退院させるのか・・・。
二つ目は、これも他の患者の手術を中断して救急患者を優先するわけには行きません。
第三の理由は一見逃げ口上のようにも見えるでしょう。何故ならば「専門分野が違っても医師は皆全科目を学んでいるのだから何でも診れる筈だ!」? しかし現実を見ましょう。貴方が急性腹症で救急搬送された病院で内科医や外科医が出払っていて眼科医だけが手が空いているからと言って、「眼科医も医者だから仕方ない。見て貰う」と成りますか。やはり「それなりの医者を出せ!」と言う事に成るでしょう。実際ににはあまりにも特殊分野である眼科医が救急当番医として駆り出される病院はあまり有りません。あまり救急当番医として役に立たないからです。しかし全く無いわけではありません。実際市立根室病院でも過去に夜間救急で眼科医を当番に出していたと聞いています。それも旭川医大の撤退の煽りで医師数が激減し残留している医師数で救急当番回数を割り出しので、その眼科医も月に3回ほど当たり、ノイローゼ気味(無理も有りません!)で大学の教授(旭川医大の吉田学長)に泣き付いたそうです。その結果本来最低1年は居る筈の眼科医は半年で勤務先が変わったとか。これは実例ですが、内地の病院で喧嘩で頭を殴られた患者が夜間に来院。当番医はたまたま眼科医でしたが大した症状も無いのでそのまま帰宅させたところ、その患者が後で脳出血で倒れ大騒ぎに。その件は当然裁判沙汰に成り、「頭を殴られたのに夜間と言えどもCTも取らなかったのは医師の過失である」との判決。その患者を殴った相手こそ責められるべきなのに、まるで当直の眼科医がその患者を殺したような成り行き。裁判所は「凡そ救急病院の看板を掲げている以上、それなりの環境(設備、専門の医師など)を整えている筈である」と敢えて現実を無視して建前論で判決を出します。そして更に悪い事に、「自動車事故は貴方にも車に乗っている以上多少の責任は有る」と同様、「死亡した患者に関わったのだから、お前にも何らかの責任が有る」と言う態度を採ります。つまり・・・”関わらないのが吉”(木枯らし紋次郎風)な訳ですね。
以上の事柄を考えた時に、救急車で運ばれて受け入れを打診される病院が敢えて断る気持ちが医師としては理解出来ます。勿論患者さん側は釈然としない、納得出来ないでしょうが・・・。
本来救急指定は、それなりの医師を充足させた(日中勤務の医師を使わずに夜間専用に各科の医師を揃えた)病院のみに限るべきですが、残念ながら日本にはそんな病院は有りません。日勤の医師ですら不足しています。しかしどこでも国や地方自治体からの救急医療肩代わり費と「救急病院」の看板だけは欲しがります。(うちは立派な病院なのだ!)。実際根室市の医師会にも自治体からそれなりの援助金が出ています。救急の肩代わりを打診された段階で引き受けてしまう病院側にも問題が有ります。もとも全ての病院が「出来ないものは出来ない」「無い袖は振れぬ」と正直にやった日には日本の医療は土台から崩れます。しかしその不十分な状態を何とかしようとする努力(敢えて救急医療を引き受けるような)や善意の行為が、結果が裏目に出た時にはお上からバケツの水を浴びせられる・・・正に”触らぬ神に祟りなし””出る杭は打たれる”です。

続く

by 月光仮面 (2013-03-13 13:24) 

月光仮面

愚痴話 その4 ドクターコール

 前回(その3)で医師の自由について言及するつもりが、ついつい脱線してしまいました。今日も先程自分の現場でスタッフと交わした雑談の中で、「〇〇病院の××室は毎日仕事をやっていない。月・水・金だけですね」と言う話が出ました。「火・木・土まで手を広げると、一人しかいないスタッフが週休2日でなくなり病院として問題と成るから」との事でした。斯様に医療現場でも労働基準法には注意を払っています。しかし何故か医師の話と成ると、誰もがその話を持ち出しません。まるで「言っても仕方がない。これが現実なんだから」と避けているようにすら見えます。或いは、「あんなに高い給料を貰っているんだから、毎日9時まで程度の残業や休日出勤は当たり前」だと敵意を持っているのか・・・。考えてみると、40年近くの医師としての生活の中で、小生は病院の外の喫茶店などでコーヒー片手にランチを食べるような当たり前の昼休みを過ごしたことが殆どありません。「入院患者が居るんだから病院内で待機しているのが当たり前だろう」? 「えっ、なら昼休みも拘束されるの?」「そうだ、当たり前だ。だって医者なんだから何時でも患者に対応できる体勢を整えておくのが当然だろうが」「じゃあ酒なんか飲めないな」「ま、そういう事だな」「大好きなニラ餃子も食べられない」「当たり前だ。医療はサービス業だからな」「じゃあ医師には人並みの自由も生活も許されないんだ。労働基準法を無視して働いている上に、憲法で保障されている最低現の生活さえも駄目なんだ」「仕方がないだろう、医師と言う職業を選んだんだから」

斯様に医師には本当の自由が有りません。もっともこれは一般の世間の現場の臨床医に関してですが。同じ医師でも大学の教室の研究者や保険会社の嘱託医にはそのような人権を無視した生活への強要は有りません。勿論臨床医より多少は収入が落ちるかも知れませんが、逆に金銭には代えられない人間らしい生活が得られます。結局この世の中はどちらを選ぶのか・・・「高収入だが非人間的な生活」を選ぶのか。或いは「収入は食って行けるだけでも自由な暮らし」を優先させるか。まあ、どだい経済性と自由度の両者を上手く融合させるのは凡人には難しい技には違いありません。

さてここで例題です。皆さんで答えを考えてください。

そんなヤクザな稼業の医師である貴方が、やっとの思いで貯めた年休を使って旅行に出掛けます。国際線ならば直ぐにビールやシャンパンなどのアルコールサービスが有るでしょう。「うほーっ、シャンパンだ!」。しかしシャンパンですっかり寛いだ貴方の耳に死んでも聞きたくないCAのアナウンスが飛び込んで来ました。
「御搭乗のお客様にお願い致します。ただ今機内で体調の優れぬお客様がいらっしゃいます。何方かお医者様はいらっしゃいませんでしょうか」
おお,何と悪魔の囁き!すっかり旅行モードだった貴方の脳に現実と言う稲妻が煌めきます。
「あれっ、スチュワーデスが医者を探しているぞ。一体どうしたんだ。誰が具合悪いんだ。考えてみれば俺も医者だ。やっぱりここで手を挙げるべきだな。いや、待て。その乗客がどんな具合か分からないぞ。俺も救急のABC(救急蘇生)くらいは出来るが、AED位しか積んでない機内では何も出来ないぞ。ましてここは太平洋の真ん中だ。もしER(緊急治療室)やICU(集中治療室)に収容が必要で最寄りの飛行場に進路を変更するようにでも成れば俺の今回の旅行のスケデュールは滅茶苦茶だ。第一その空港まで俺にずっと心マ(心臓マッサージ)してろってか。冗談じゃない。もし老人が誤嚥して窒息気味ならお前はどうするんだ。気管挿管の道具なんて積んでないぞ。じゃあ気管切開か。あれはさすがにやった事無い。でも注射針でも有れば輪状軟骨部位に刺せば取り敢えず軌道は確保出来るか・・・そう言えばさっき出たランチに小さいフォークが付いてたな。あれで刺してみるのも手か・・・。
でも何だな。迂闊に手を出して悪い結果に終わったら訴えられるかもな。外国ではこんな時の医療行為は{善きサマリア人法}と言って緊急避難的に認められているから良いが、日本の法律では医師の免責は認められていないからな。やはり手は出さない方が良いな。第一医師と患者の間の契約もこの場合には成り立たない。こちらが医師だとは誰も分かっていないし、第一ここは病院では無い。応召義務に言うそれなりの場所(病院など)とそれなりの服装(白衣など)じゃあないし、CAのアナウンスも俺を指名している訳じゃなく乗客全員に言っているんだから、俺が患者の診療を求められているわけでは無いよな。なら俺には申し出には応じない権利が有る」

機内などでのドクターコールに対して法律的な義務(意味)を貴方の心理状態と言う舞台上で展開してみました。大体この中に尽くされていると思います。

因みに医師だけが参加出来る(建前上)専用の掲示板のM3がソネットに有りますが、そこのアンケートにもこの問題が問題提起されています。
「もしあなたがドクターコールに出会ったら、あなたならどうする? 応える(yes)? シカトする(no)?」
医師の回答の多くはやはりnoです。Noと答えた多くの医師の言い分は、「そもそもその他大勢で個人が特定されていない機内のドクターコールには応召義務はない」「もし関わって拙い結果に終わった(死んだ)なら、後日家族から訴えられる可能性が有る。そんな事で一生抱える傷を負いたくない」
「医師に結果で訴追されない免責があるなら考えないでもないが、現状では手を出さない方が賢明だ」etc。傑作なのは家族と一緒の時の医師の反応です。「自分は嫌だったのだが、息子が得意げに”うちのお父さん、お医者さんです!”と手を挙げてしまった」「自分一人ならシカトしたものを、隣の女房の手前格好を付けて渋々手を挙げた」「自分は捲き込まれるのが嫌なので、搭乗したら直ぐにアルコールを注文して酔っぱらってしまう。或いは酔っぱらった振りをする」「手を挙げようとしない自分に不思議がっている息子に、全て本当の事を教える。”こんな時に後先の事を考えずに自慢げに手を挙げて恥をかくよりは、さっさと酔っぱらって嵐が過ぎるのを待つ事が利口だ。だからお父さんは酔っぱらっているんだよ”と社会勉強させる」(笑)
by 月光仮面 (2013-03-13 17:26) 

ebisu

『チェルノブイリ26年後の健康被害 低線量汚染地域からの報告』馬場朝子・山内太郎著 NHK出版 
amazon書評欄より

「チェルノブイリ原発事故から26年経った現在の、ウクライナの低線量汚染地域における住民の健康状況のレポートである。これはすなわち、福島の26年後を表していると言っていい。

ウクライナの医師たちは、住民たちを毎日診続ける中で、甲状腺障害に始まり、白内障、免疫疾患、神経精神疾患、循環器系疾患(心臓・血管など)、気管支系疾患、消化器系疾患といったあらゆる疾病の発生率が年を追うごとに高くなって行くのを目の当たりにした。そして、そのデータを蓄積してきている。
そのグラフを見れば、事故後に明らかに病気の発生状況が急激に変化していることが分かる。

しかし、IAEA、WHOなどの国連の機関は、原発事故と病気の因果関係を認めようとしない。証拠を突きつけられて止むなく認めているのは、除染作業者の白血病、白内障、小児甲状腺がんの3つのみである。それ以外は科学的データが不足しているため明確な因果関係は認められない、という立場を取っている。」

http://www.amazon.co.jp/%E4%BD%8E%E7%B7%9A%E9%87%8F%E6%B1%9A%E6%9F%93%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E5%A0%B1%E5%91%8A%E2%80%95%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%96%E3%82%A4%E3%83%AA-26%E5%B9%B4%E5%BE%8C%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E8%A2%AB%E5%AE%B3-%E9%A6%AC%E5%A0%B4-%E6%9C%9D%E5%AD%90/dp/414081571X/ref=pd_rhf_dp_s_cp_1_RSFN
by ebisu (2013-03-14 13:15) 

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