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#2182 おお、すばらしい! 運動部活動指導の手引書抜粋 Jan. 20, 2013 [73.ブカツ]

 「長野県地域スポーツ人材活用促進委員会」が文科省の委託事業として標記手引書を信州大学の協力の下に2010年3月に作成している。一読してすぐれた手引書だと判断した。「釧路の教育を考える会」副会長のMさんが、#2175のコメント欄でこの手引書の存在を教えてくれた。こういう情報提供はありがたい、わたしの役割はブログ上でこうした「すぐれもの」を紹介することだ。あとは学校の先生と生徒の役割。お陰様で、間をつなぐ歓び、また一つ。

 毎日6時半まで部活をやり、土日もやったら、生徒はいつ健全な家庭学習習慣を育むのだろう?こんな事を続けていたら根室の子供たちはいつまでたっても全道14支庁管内最低レベルの学力を脱することができない、そう思っていたら、しっかりした部活の手引書があった。いいものはどんどん取り入れて真似をすればいい。そのうちに本物になる。

 学校の部活は教育の一環だから、練習練習ではいけない。ほとんどの部活では実技のみ、座学をしないのはどういうわけだろうスポーツは練習メニューや技術を考えに考え抜いてやらないと大きく上達が望めない
 わたしはかつてビリヤードを趣味としていたが、図面での研究と実技のトレーニングを併行してやることで腕が急速に上がることを経験的に知っている。自分の頭で考え抜き、トレーニングの仕方を工夫しない者は上達も遅い。我流のトレーニングだけではたかが知れている、座学(=理論研究)をやることで標準的な素質の者でもセミプロクラスの技倆を手に入れることができる。地方では確実にトップレベルの技倆だ。
 駿台予備校の数学担当A先生(問題集も出しています)がスリークッション世界チャンピオンの小林先生のビリヤード店の常連会で一緒でした。5種目チャンピオンのディリスの夏季トレーニングを受講するためにヨーロッパへ"修行"に行ってましたね。その人が図面で研究していたんです。そのコピーをもらって、図面を引きなおして微妙なところを小林先生に質問して「勉強」しました。Aさんはわたしより腕はかなり上で、常時プロテストに合格できるレベルでした。
 毎日練習に明け暮れて、座学をさっぱりしない根室の小中学校の部活、ドングリの背比べの根室管内では通用しても、全国レベルには到底届かぬ、方法が間違っているからだ

 これは根室で体育系部活に励む子供たちへの贈り物。根室市内で体育系部活指導をしている先生たちや関係者にぜひお読みいただきたい。もちろん部活をしている生徒達にも参考になるので、プリントアウトして「指導のポイントQ&A」を何度も読んで、実際の部活に役立ててほしい。強くなるには頭もフルに使うのがあたりまえ
 学校の校長先生たち、この手引書を体育系部活担当の先生と部活責任者全員に配布してもらいたい。

http://www.pref.nagano.lg.jp/kyouiku/taiiku/bukatutebiki.pdf

【抜粋】
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【運動部活動の意義】
○喜びと生きがい
○生涯にわたってスポーツに親しむための基礎作り
○体力の向上と健康の増進
○豊かな人間性の育成
○明るく充実した学校生活の展開等

【一方、運動部活動が抱える課題
○勝利至上主義に走る指導
・適正な活動時間 ・休息日の確保 ・体罰 等
○顧問の種目に対する専門性
○顧問の負担感
○部員数の減少
○生徒や保護者のニーズの多様化
○部活動と社会体育の関係 等
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「<留意点>
各教科等の目標及び内容との関係にも配慮しつつ、学校教育の一環と
して教育課程との関連が図られるようにする
。」
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Q3 1 週間の練習計画はどのように立てたらいいの?

A3 部活動は、生徒の願いを叶えたり、課題を解決したりする活動でなければなりませんが、だからといって、同じ練習ばかりを繰り返していたのでは飽きてしまいます。次の点を考慮して、練習計画を作成してみましょう。
○曜日によって練習の量や質を変える。
○種目に関する知識を蓄えるため、座学による学習会を行う。

○活動を振り返るミーティングを行なう。
1 週間の練習計画例
月火水木金
技術練習

技術練習休息日技術練習学習会

ミーティング
毎月第1金曜日 学習会
   第3金曜日 ミーティング
   第2・4金曜日 技術練習
練習試合
※ 試合準備期、週末の1日を部活動とすることで練習試合を行なう
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Q4 部活動に休息日は必要なの?

A4 部活動が学校教育の一環として行なわれている状況を踏まえ、生徒のバランスの取れた能力の伸長、心身ともに健康な成長という観点からも、部活動が生徒にとって、肉体的に、そし
て、精神的に過度な負担とならないよう
休息日を適宜設けていく必要があります
○月曜日から金曜日の間に、学校全体で部活動を行なわない日を設ける。(朝と放課後)
○日曜日、土曜日、及び祝祭日には、原則として部活動を行なわないこと。

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Q13 安全に部活動を行なうためにはどうすればいいの?

A13 安全に活動を行なうためには、日頃から、指導者も生徒も、ともに事故防止に対する意識を高めておく必要があります。
以下、ポイントをあげます。
○施設・設備、用具を定期的に点検
○不備がある場合には直ちに修繕
○用具の整理・整頓
○部員の力に見合った適切な練習メニュー
○準備運動、整理運動の時間確保
○活動の約束の徹底
・動きの方向を揃える。
・活動の順番を守る。など
○他の部活動と調整(練習時間、練習場所)
○事故が発生した場合の対応の確認
○緊急時の対応の掲示
○生徒の心身の状況を把握するための連携
・担任と ・養護教諭と ・保護者と など
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Q14 スポーツ外傷にはどのようなものがあるの?

A14 主なスポーツ外傷とその処置の仕方です。
○足関節捻挫
足関節をねじることによって発生する外傷です。症状として、損傷部位の痛みと腫れが表れます。初期治療としてはRICE処置が有効です。
○突き指
指先に強い力がかかったときに発生する外傷です。骨折、脱臼、靭帯損傷などもあり、変形や痛みの強いときは、専門医の受診が必要です。初期治療としてはRICE処置が有効です。
○肉離れ
疲労した筋肉に急激に力を入れたときに発生しやすい外傷です。ももの筋肉のハムストリングスや大腿四頭筋、ふくらはぎの腓腹筋などによく起こります。急性期は局所を冷やして圧迫して安静を保ちますが、その後は血流を改善させるため、温めます。
RICE処置
Rest(安静):安静にし、損傷を悪化させない。
Ice(氷冷):冷やすことで出血を抑える。
Compression(圧迫):圧迫して出血を抑え、腫れを防ぐ。
Elevation(挙上):患部を心臓より高くし、腫れを防ぐ。
患部にタオル等を巻き、その上から氷を入れた袋等を当て
る。氷を入れた袋を弾力包帯等でややきつめに巻き、患部を
心臓より高くする。この状態を30分間保持し、その後、
20分間休む。これを4~5回繰り返す。
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Q15 スポーツ障害にはどのようなものがあるの?

A15 主なスポーツ障害です。
○オスグッド病
骨の成長と筋肉の伸びが間に合わず、そのアンバランスによって発生する膝の障害です。膝の下の骨の隆起、圧痛、運動時痛などが、症状として表れます。大腿四頭筋が硬くなることで障害は悪化するので、治療及び予防として大腿四頭筋のストレッチングが有効です。
○シンスプリント(疲労性骨膜炎)
疲労がもとで、すねの下部が痛む障害です。治療及び予防としてアキレス腱と腓腹筋のストレッチングが有効です。
○腰椎分離症
腰椎の椎弓の疲労骨折によって発生する腰の障害で、症状として腰痛を伴います。治療としては安静を保つことが大切で、コルセットを装着することもあります。予防としては腰筋のストレッチングが有効です。
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Q18 部活動と社会体育の違いはなに?

A18 部活動は学校教育の一環として、学校管理下で行なわれるものです。一方、社会体育は社会教育の1つで、地域の実情に応じて行なわれる、基本的には学校教育とは異なるものです。
例:活動中の傷害の補償
生徒が部活動で負った傷害は、授業中に負った傷害と同様、学校管理下で発生した傷害とみなされ、独立行政法人日本スポーツ振興センターの支給対象となります。しかし、社会体育において負った傷害はその支給対象とはなりません。したがって、社会体育で活動する生徒と指導者は、不測の事態に備え、傷害保険に加入しましょう。
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Q19 外部指導者を活用するにはどうしたらいいの?
A19 校長が、種目に対する専門性とともに指導者としての資質を備えていると判断したとき、外部指導者の活用が決定します。
また、外部指導者の中学校体育連盟へ参加についても、校長が認めた指導者のみが参加することができます。
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外部指導者に求められる資質
外部指導者は、学校教育目標具現のための一翼を担っているという自覚をもっていることが大切です。したがって、生徒の前に立って指導を行う外部指導者には、教師と同様の資質が求められます。
指導に対する熱い情熱
勝利至上主義に陥らず、指導者としての使命感や誇りをもち、子どもの人権を尊重する愛情や責任感があること
総合的な人間力
子どもの人格形成にかかわる一人の人間として、豊かな人間性や社会性、常識と教養、礼儀作法をはじめ対人関係能力、コミュニケーション能力などの人格的資質を備えていること。また、子どもを一
人の人間として認め、尊重することのできる人権感覚を備えていること。
専門家としての確かな力量
専門とする種目に関する知識、子どもを理解する力、生徒指導力、集団指導力、技術指導力があること。
指導者としての責任感
体罰やセクハラととられかねない言動は慎む。部活動にかかわることによって知り得た、子どもに関する情報の守秘義務を守る。など、行動に責任をもつこと。
学校組織の一人としての自覚
部活動の顧問をはじめとする学校職員、他の外部指導者や保護者とも協力していくことのできる協調性があること。
ホウレンソウの確実な実施
ホウ…報告 レン…連絡 ソウ…相談

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指導者がすべきことは、生徒自身が自主的、積極的な行動に取り組むための環境づくりです。そこで、生徒が自立(自律)し、自ら進んで取組むようにするために、「PATROL」をしてみましょう
運動部活動が、生徒にとってより充実した活動になるためには、外部指導者の協力はなくてはなりません。平成20 年度、外部指導者に部活動指導の協力をお願いした中学校は、全体の84%にも及びます。
部活動において、外部指導者の力を十分に発揮していただくためのポイントをまとめてみました。

“PATROL”しましょう
Process:「結果ではなく、経過を重視しましょう」
結果を評価するのではなく、その行動や言動を重視しましょう。どんな結果であろうとも、結果にいたるまでの努力や行動があったはずです。いい結果が出たときも悪い結果が出たときも、生徒と一緒に原因を考えて見ましょう。
Acknowledgment:「承認しましょう」
生徒の意思を尊重し、その行動や言動を承認することが重要です。
自らの存在を認められることが、生徒にとって大きな励みとなるのです。
Together:「一緒に楽しみ、一緒に考えましょう」
何よりも指導者自信が楽しくなければ、生徒も楽しくありません。生徒とともにスポーツを一緒に楽しみましょう。
Respect:「尊敬しましょう、尊重しましょう」
年齢、性別に関係なく、すべての人を尊重する気持ちを持ちましょう。10 人いれば10 人の個が存在します。生徒の個性を尊重しましょう。
Observation:「よく観察しましょう」
生徒をよく観察しましょう。体調は万全か、悩み事はないだろうか。見ていなければわかりません。「見られている」ことで生徒は安心するのです。
Listening:「話をよく聴きましょう」
自分が話すより、生徒の話を聞く時間を多くとるように心がけましょう。指導者が「なってほしい生徒」ではなく、生徒自身が「なりたい」自分を意識し、気づかせるためには、生徒自身にたくさん話す機
会をつくってあげましょう。
財団法人日本体育協会 「21 世紀のスポーツ指導者 望ましいスポーツ指導者とは」より
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文初中第 275 号
昭和 32 年5 月16 日
各都道府県教育委員会、各都道府県知事、
各附属学校をもつ国立大学長、各国立高等学校長あて
文部省初等中等教育局長通達
中学校、高等学校における運動部の指導について
・・・・・
(4) 運動部の練習については、生徒の健康や学業をじゅうぶん考慮するととも
に、
できるだけ短時間に練習効果のあがるように指導すること

合宿練習の指導において特に留意すべき点
(1) 合宿生活においては、教師は必ず寝食をともにして監督し、その生活がと
かく運動練習のみに偏りがちであるので、運動練習以外の生活においても、
学習その他について自主的に計画を立てるよう指導し、日々の生活が規則正
しく行われるよう配慮すること

・・・・・
--------------------------------




*#2175 ブカツは入試に有利は嘘 Jan. 14, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-01-14

 #2181 ブカツについて:元北海道教育大学長のご意見 Jan. 20, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-01-20


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ZAPPER

スポーツ医学の専門家、釧路の足立功一先生は常々こうしたことを主張なさっています。

1.科学的根拠に基いたトレーニングの必要性。
2.スポーツ障害の危険性。
3.団体競技の上達には「学力」が不可欠。

3は特に重要だと思います。^^
by ZAPPER (2013-01-21 16:37) 

ebisu

足立功一先生、いいことを仰ってくれますね。
>1.科学的根拠に基いたトレーニングの必要性。
>2.スポーツ障害の危険性。
>3.団体競技の上達には「学力」が不可欠。

根室の野球とバドミントンの部活については私の知る限りで、この三つ全部無視となっています。
管内レベルで優勝を争うようなレベルの低いところで競争するから三つとも無視してもなんとかなるのでしょう。勝利至上主義はいけませんね、基礎作りに徹して本格的なトレーニングは骨格と筋肉のバランスが取れてくる高校でやればいい。成果を急ぎすぎです。

文部省通達でも
「できるだけ短時間に練習効果のあがるように指導すること」
とありますが、やたらと長時間の練習を繰り返すだけ。
スポーツ障害を起こして、好きな種目をあきらめるのはその種目で優秀な成果を出している生徒です。過度な練習で壊されています。
肘や肩に障害を抱えてしまい、高校で野球を断念した者、膝に障害を抱えてやはり高校でバドミントンが続けられなくなった者。小学校や中学校の先生の不注意と、親の加熱が原因でしょう。

「○生涯にわたってスポーツに親しむための基礎作り」のはずなのに勝利至上主義にこだわりすぎて、生涯にわたって好きなスポーツのできない体にしてしまう、なんとも残酷な結果です。
親まで一緒になっているので、「傷害罪」なのに先生も親も生徒もその自覚すらない。
関係者がそろって無知であればこれほど部活を荒廃させてしまう。

いまいちど、部活の原点に戻って考え直しましょう。間違いを認めてやり直せばいい。それが教育というもの。
by ebisu (2013-01-21 22:54) 

もやしさんま

せめて市立の小中学校では市立病院の整形外科の先生のドクターストップで部活はやらせないくらいはしたほうが良いと私も思います
by もやしさんま (2013-01-22 16:34) 

ebisu

わたしの挙げた3例は中学生です。
「生涯にわたってスポーツを楽しむための基礎作り」のはずが、壊れてしまい、高校では好きなスポーツをあきらめざるを得ない。
大人(保護者と先生たち)がそういう無理な部活を強いています。
もやしさんまさん、ドクターストップというアイデアはいいですね。

学校の部活に市立病院の整形外科医がかかわってくれるような仕組みを市教委が考えてほしい。

紹介した「指導の手引書」を部活指導の先生たちが読めば、やっていけないことが何かわかります。
おそらくはきちんとしたやり方を知らないだけなのでしょう。意図的にやるはずがありません。
by ebisu (2013-01-23 01:18) 

ZAPPER

極真空手の指導員(元釧路支部長)。我らがたーさんに座学をやってもらえば、部活指導者は目から鱗が落ちまくることと思います。根性論のカタマリみたいに思える極真空手も、たーさんにかかれば正しき技術理論あってこその稽古です。

短時間で極めて密度の高い指導をすること。根性論のカタマリみたいな格闘技の世界だって、今ではそうなんです。洗練された、道外のハイレベルな少年団もみなそうです。ぜひとも我らがたーさんをお招きいただきたく存じます。で、みんなでそちらへ行って根室の夜を堪能するのであります。(^o^)
by ZAPPER (2013-01-23 18:00) 

ebisu

たーさんの部活指導理論をカテゴリー「ブカツ」で紹介したことがありました。
これも併せて読んでほしいですね。

*#1702 ブカツは高校メイン(5):まず準備運動 Oct. 30, 2011  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-10-30-1

このURLをクリックすると、弊ブログ記事へジャンプします。そこに以下の項目のURLが貼り付けてありますので、そこからたーさんのブログへ飛んでください。

部活は高校メイン
部活は高校メイン_本質は何か
部活は高校メイン_厳しい練習とは
部活は高校メイン_小中学校はスキルを
部活は高校メイン_まず準備運動
部活は高校メイン_まず準備運動(補足)ストレッチのこつ(オリジナル技術有り)
部活は高校メイン_まず準備運動(補足)の補足_クールダウン
部活は高校メイン_勝利のためには
部活は高校メイン_理想の運動部


by ebisu (2013-01-24 00:05) 

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