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#2140 データと分析(3) 論より証拠 学力テスト情報公開のメリット Nov. 26, 2012 [64. 教育問題]

 「#2138 語彙力がないままの学力向上はない Nov. 25, 2012」に参考資料として、市街化地域の3中学校の学力テスト総合Cの結果を並べてみた。いろいろなことに使えそうだ。
 根室では高校統廃合問題が持ち上がっている。まもなく道教委の意向どおりに根室高校と根室西高校は統合されることになる。検討委員会がにわかに組織されたが、データに基かない議論、ビジョンをもたぬ議論はむなしい。

 そこで、具体的なデータを提供したい。データだけでなく具体的なデータ分析に基いて夢物語の入試制度改革にも言及するから、道教委と根室の高校統廃合にかかわる委員諸氏はこの表と分析を見て、高校統合問題を根本から考えてみてほしい。
 それから、高校進学を間近に控えている中三の生徒と保護者、そして一・二年生の生徒と保護者も考えてほしい。高校で学ぶには学力テストの点数で何点ぐらいの学力が必要なのかをよく考えてもらいたい。そして、中学三年間で要求される水準の学力を80%の生徒が身につけてもらいたい。

 まず、学力テスト総合Cの市街化地域三校のデータを表に並べる。

2012年11月学力テスト総合C
 上位層  中位層 下位層(底辺層)
210点超209~91点90点以下人数60点以下
人数  %人数  %人数  %合計人数
光洋中11.16371.62427.38889.1
柏陵中811.04257.52331.5731317.8
啓雲中35.93262.71631.451611.8
3校合計125.713764.66329.72122712.7

 上・中・下の三段階に階層を分けた。下位層には五科目合計点60点以下(300点満点で平均点20%以下=百点満点で平均点20点以下)の底辺層が含まれているが、網掛けで示してある。

 学力中位層をもう少し詳しく分類して見たのが次の表である。

  120点超130点超140点超150点超
人数人数人数人数
a光洋中4640302730.7
b柏陵中4339353243.8
c啓雲中2623201631.4
d3校合計115102857535.4
e全校推計値14412810694 


 7年前の根室高校普通科の合格最低ラインはEランクで150点だった。FランクとGランクの生徒が二人150点の得点で普通科を落ちて事務情報科に回された。つまり、F・Gランクだと入試で160点以上とらなければ合格できなかった。
 今年も、昨年も、一昨年も根室高校普通科は定員割れを起こし、商業科と事務情報科を受験した70点台の生徒が数人普通科へ回って合格している。

 大学進学を考えると根室高校普通科へ進学するのが後が楽だ。商業科や事務情報科から大学進学は国語・数学・英語科目の授業時間数が普通科のほぼ半分だから、とてもむずかしくなる。簿記1級を含む5科目1級を揃えると偏差値50を少し下る大学への推薦入学の道が開ける。日商簿記1級なら、偏差値55以上の大学を狙えるが、在学中に日商簿記1級に合格した生徒はゼロである。岐阜商業は毎年十数名の合格者を出しているようだ。

 さて、高校定員枠との関係で学力問題を論じたい。標準的な高校普通科の授業についていくには、学力テストで150点は最低ラインと考えてよい。塾で教えていて、180点を超えて入学した生徒は努力すれば自力でも授業についていけると感じる。150点未満で入学した生徒の大半は入学してからクラスで下位半分から抜け出すことがむずかしい。
 誤解のないように書いておくが、根室高校普通科は全道偏差値で42にすぎないから、全道の高校を百と假定すると80番目くらいの低学力校なのである。そこで、「標準的な授業」についていけない学力しか有していない生徒はそもそも進路選択をまちがえたといえる。

 表には出ていないが180点超の生徒は市街化地域3校で40人だから、郡部を合わせても50人である。180点前後の生徒達は(代ゼミ)偏差値40前後の道内の大学へ進学しているケースが多い。このクラスの大学はFランク(ボーダフリー)といわれている。180点前後で少しがんばった生徒は、偏差値50弱の大学へ進学している。
 180点超の階層は柏陵中学校(18名)が多い。ほかは各々11名である。根室高校普通科の上位42%を占めている。看護専門学校への進学希望が増えているが、一般入試で合格するには180点が最低ラインだろう。もちろん、150点前後で入学した生徒が、その後の努力で成績を上げ、看護専門学校に入学する可能性を否定するものではないが、確率はガクンと下がる。
 210点超の生徒が12名だが、高校入学後ブカツをせずに学校行事も不参加で勉強一本にしぼって努力するなら、東大合格もありうるだろうが、99.99%の生徒は楽しい高校生勝を捨てきれないし、捨てる必要もないだろう。
 210点超の生徒の半数くらいは普通に学校行事へ参加して勉強するなら、MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)あたりの受験が可能になる。もちろん、学校の勉強だけでは届かないから、独力で難易度の高い問題集を解いて学力を上げなければならない。このレベルになると語彙力の不足している生徒は完全にアウトである。精力的な予習ができないから、入試レベルの難易度の高い問題に果敢に取り組むことができない。語彙力に勝る生徒はこのあたりでも顕著な成績の伸びを示すだろう。日本語語彙力の大きさが学力パワーの源である。

【夢物語】
 この小論にはもう一つ目的がある。それは根室高校普通科合格ラインの設定と公表という入試改革=夢物語の提案である。
 学力テスト総合A・B・Cおよび入試で150点を義務付け、入試で150点を超えた者は全員合格とする。つまり、定員枠は撤廃だ。高校の標準的な授業についていける学力を有する者にだけ門戸を開くのである。大学進学を志すものには旧制中学のような厳しさがあってよい(旧制中学のレベルはこんなものではない、ずっと高い)。

 根室高校普通科(150点)、商業科(130点)、そして科目単位制の総合学科(90点)で編成する。
 入試でこの点数をクリアできない者への入学は認めない。国語・数学・英語は普通科と総合学科では同じ教科書を使えない、学力レベルが違いすぎる。
 北海道教育委員会は他地域に先駆けて根室でこういう学校統合実験をやってみないだろうか?
 中学生の学力を上げて、高校の数を減らす、財政的にもメリットの大きい案だろうから、北海道教育委員会や道庁にとっては検討の価値がありそうだ。
 高校統廃合を検討している面々も一度考えてもらいたい。地域の中学生の学力はどうしたら上げられるのかを。
 高校生一人に根室高校で年間60万円、根室西高校で80万円以上かかっている(ebisuの試算による)。このまま放置すれば、3年後には根室西高校は生徒一人当たり年間100万円以上のコストがかかることになるだろう。北海道庁には"打ち出の小槌"があるわけではない。教育費もコストとの兼ね合いがあってしかるべきだ。


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*#2152 期末テスト 中2が健闘 五科目合計点で平均58.8点アップ Dec. 6, 2012 
  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-06

  #2143 データと分析(5) 学力テスト総合Cから根高普通科への合格基準点を推計してみる Nov. 29, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-28
 #2142 データと分析(4) 全国学力・学習調査 根室管内版を読む Nov. 28, 2012
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-27-1

 #2140 データと分析(3) 論より証拠 学力テスト情報公開のメリット Nov. 26, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-26

 #2138 データと分析(2) 語彙力がないままの学力向上はない Nov. 25, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-25

 #2134 データと分析(1) 学力テスト総合C 学校別・科目別平均点 :学力低下と人口減少のダブルパンチ Nov. 21, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-20




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