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#2138 データと分析(2)語彙力が貧弱なままでは学力向上なし Nov. 25, 2012 [64. 教育問題]

 11月24日付けの読売新聞「道総合」版で「学力危機」をとりあげている。このシリーズは5回目で「第5部 基本に返る」と題されている。ebisuは電話取材を受けたが、「語彙力がないままの学力向上はない」ということについて具体例を出して補足説明をしておきたい。

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 ブログ「情熱空間」より。
 「深刻な語彙力不足(読売新聞 学力危機)」
 
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/6091905.html

 ⇒記事をクリックすると別ページに全体が表示されます。

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 つい先日のことだ、数学の時間に生徒が手を挙げたのでどういう質問か聞いてみた。文章題の意味がわからないという。こういうときに私は語彙力不足の生徒には問題文を音読させることにしている。一次関数の問題で、直線の式が提示されており、それを「グラフに表せ」と書いてあった。生徒はそれを「ぐらふにひょうせ」と読んだ。「"ぐらふにひょうせ"って何のことか分かるか?」、もちろんわからない。彼らの日常会話語にはない用語である。「あのね、それヒョウセではなくアラワセって読むんだ、それでわかったかな?」。
 かれらは友人同士で会話が通じているから、日本語は知っていると思い込んでいる。ブカツの先輩達から見ると「先生、あいつら日本語通じないっしょ」という評価である。知っている日本語語彙は日常会話、それも彼らの会話には文章語はほとんど使われない。
 彼らの語彙は日常会話語と児童書の範疇までである。数学の文章題の意味を理解することができないから、50点以上の得点は無理。文章語が正しく理解できないから、国語の問題文も理解できない。音読させてもスピードが遅く、「てにをは」をしょっちゅう間違えて読むから、文意がつかめない。速度が遅いと段落ごとの意味や論理の展開もつかめるはずがない。もちろん読めない漢字がたくさんある。
 たとえば、ケイヨウシはメイシをシュウショクすると先生が説明したとする。彼らは正しい漢字に変換して意味を理解できない。日本人の頭は、音で聞いたことを前後の文脈から判断して正しい漢字に置き換えることで意味を理解するようにできている。

 国語だって社会だって理科だって数学だって、次から次と新しい文章語がでてくる。先生たちは授業で説明するのだろうが、かれらは頭の中で漢字に変換できないから授業の肝心な部分が理解できない。キンコウノウギョウ?カンスウ?オンダンシツジュン?セイサン?ショウヒ?ジュヨウとキョウキュウ?

 あまりにひどいので文科省は中学校で国語辞書を使うように学校へ指示を出した。これもおかしなはなしである。中学生の日本語語彙が貧弱で学力向上を妨げているなら、その原因は小学校にあると考えるのがあたりまえで、そうすると小学校で英語なんて教えないで、良質の日本語テクストを20冊ほど選んで音読授業をやればいいのだが、そうはならない。小学校に英語の授業を導入してしまったために、日本語テクストの音読授業時間をとれないのである。
 柏陵中学校のフリー授業参観のときに国語の授業を見たが、国語辞書と漢和辞典を生徒達に使わせていた。家には持ち帰らないから、学校で国語の時間にたまに引くだけである。泥縄式というか、ゴマカシというか、やったフリというか、小学校で英語授業導入を主張する面々の顔を立てるために効果のほとんどないことをやることになったというわけだろうか。
 はっきり言うが中学校で国語辞書や漢和辞典を引くことを覚えてもほとんど手遅れだ。日本語語彙が爆発的に拡張するのは小学生高学年の時期だ。これを逃すと学力の伸びに著しい影響が出る。"旬"の時期を逃すと、語彙は爆発的に伸びる機会を失う
 "旬"の時期に興味のある分野の本を濫読することで爆発的に語彙が拡張する。そういう素地があれば学力もノビシロが大きくなる。学校の教科書ぐらい自分で読んで予習していくことが可能になるからだ。語彙の少ない子どもは予習ができない。これは学力にとって決定的なことだ

 私の経験を書いておく。小学4年生になったときに、母親が北海道新聞の社説を読むことを勧めてくれた。勧めてくれたのか、読むように厳しくしつけられたのか、いまとなっては定かではない。本や新聞を読むことだけでなく、母親は子どものシツケに関しては実に厳しい人だった。たとえば、寝るときには着ていたものをたたんで枕元において、「お父さん、おかあさん、おやすみなさい」と畳に手をついて挨拶してから就寝していた。昔は石炭ストーブで火事が多かったせいもある。消防の精錬が鳴ると「火事だ!」、と夜中でもちび起きて服が着れなければならないから、枕元に畳んでおいてすぐに着れるようにしていた。
 反抗期の中学生になったら「両手を突いておやすみなさい」はやらなくなったし、高校生になったら親は一人前と認めて、うるさいことを一切言わなかった。家で飲む分にはおかまいなしとオヤジは高校に合格したときに息子に言い渡した。「サケハタノシクノメ」と一言だけ付け加えた。オヤジがなくなって20年たつがずっと守っている。
 シツケは小学生になる前に徹底的にやっておくべきだ。そして小学校1年生になったら、家庭学習習慣を躾け(シツケ)るべきだ。

(オフクロは根室には珍しく東京山の手の標準語をあやつれる人だった。社会人になってあるときに気がついたが、電話の受け答えは全国コンクールでも優勝候補になれるくらいのレベルだった。オリンパスが電話応対のレベルが高いので有名だったが、そういう受け答えだった。あらたまるときにはスイッチを切り替えるように言葉を変えた。行儀作法そして言葉を厳しくシツケられたのだろう。母は択捉島の小さな村で育ったが、行儀作法と言葉は明治期の終わりごろの東京山の手の高級官僚の家庭並み。厳格な行儀作法の躾けはその人の言葉と挙措を美しくする。)

 当時の新聞はルビが振ってあったから、国語辞書を引いて3ヶ月も読んだら、辞書を引く必要がほとんどなくなる。理解できる語彙が増えて辞書を引かなくてもほとんど読める、だから、1面の政治経済記事も楽しく読んだ。1年ほどの間にわたしの日本語語彙は急激に拡張した。その力を利用して中学生時代には好きなSF小説を読み漁ったが、当時発売され始めた週刊漫画誌の「少年マガジン」や「少年サンデー」「少年キング」と差異を感じなかった、どちらも娯楽本だった。漫画も単行本も手当たりしだい読んだから、中学時代だけで100冊は読んだだろう。「新聞+単行本」の時代だった。パールバックの『大地』は分厚い本だが、そのときだけは味の違いを感じた。
 新聞で鍛えた語彙力と読解力は、高校へ入学してから経済学や会計学や原価計算や商法や監査論や経営学や哲学の専門書を読みこなす力を準備してくれていた。もちろん教えてくれる先生はいないから独力でやった。こうして高校時代はさまざまな分野の専門書を濫読した。小4から北海道新聞社説を読みはじめなかったら高校時代にさまざまな分野の専門書を読みこなすことはできなかっただろう。
 すべての基礎は小学4年生のときに北海道新聞の社説を国語辞書を引きながら読むところからはじまっていた。勧めて(シツケて)くれた母親に感謝している。
 ビリヤードの店番をしながら、暇を見つけると北海道新聞を読みふけっていたのである。そんな子どもを、いろんな職業の大人たちがかわいがってくれた。

  結論を箇条書きにして見たい。
①成績下位層(下位20%層)の生徒の大半は小4以下の日本語語彙力である。
②語彙力が不足していると中学校の授業が理解できない。中学校の授業を理解するには小6卒業程度の語彙力が最低限必要である。
③語彙力が小4以下だと数学の文章問題すら三つに二つは意味を理解できない。
④語彙力が小4以下だと予習ができないので、学力全般が著しく落ちる。低学力層(下位20%)は語彙拡張のトレーニングをしないと学力向上が期待できない。
⑤日本語語彙の爆発的な拡張期は小学校高学年にあるから、この"旬"の時期を逃してはならない。
⑥児童書から大人の本への橋渡しを家庭と学校の両方でやるべきで、それは小4の時期にある。
⑦国語辞書と漢和辞典は家庭に必ず備え、辞書を引く習慣を躾けよう(引いたページに付箋をつけるのは辞書引き作業にとって励みになる)。
⑧これらを実行すれば中学校で学力が飛躍的に伸び、高校生になったらさらに学力が伸びる、2段ロケット型成長が可能。

 小学校がやるべきことは4年生に月・水・金曜日を7時間授業にして、国語の音読専用の時間に割り当てることだ。こんなことは学校長と担任の先生が相談してやれる。PTAが反対するはずもないだろう。
 大人の良質のテクストを20冊選んで、1年間音読トレーニングをしてみたらいい。児童書から大人の本への橋渡しを"旬"の時期にやる。もちろん、国語辞書や漢和辞典の使い方も音読トレーニングと並行して指導したらいい。

*ZAPPERさんがブログ「情熱空間」(11月26日付け)に社会科の授業を例に挙げて、生徒の語彙力の問題と授業に仕方の工夫について続編を書いてくれた、ぜひお読みいただきたい。
 「実は話が通じていないという不幸」
 
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/6096668.html


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【参考資料】
資料①

2012年11月学力テスト総合C
 上位層  中位層 下位層(底辺層)
210点超209~91点90点以下人数60点以下
人数  %人数  %人数  %合計人数
光洋中11.16371.62427.38889.1
柏陵中811.04257.52331.5731317.8
啓雲中35.93262.71631.451611.8
3校平均125.713764.66329.72122712.7


* 【表の読み方への注意事項】
 底辺層は下位層のうち60点以下が何人いたかを示している。つまり下位層の内訳数字であり、注意を促すために網掛けした。上位・中位・下位の三つの層の合計で100%になるように作表した。 

** 【進路選択へのアドバイス】
 75点以下は23%(49人)で、おおよそ4人に一人。郡部を合わせて260人とすると、定員200名の根室高校へは総合Cでおおよそ75点が合格最低ライン。
 成績順に並べると、根室高校普通科の合格最低ラインは130点から140点の間にある。実際には150点超の数名が商業科や事務情報科へ進学するから、ボーダーラインは130点付近になるのだろう。入試近くなればさらに平均点が上がることを考えて、目標設定すべきだ。

***【根室高校普通科定員枠についての提言】
 150点超を標準的な普通科の授業についていける最低ラインとすると3校合計でおおよそ75人、郡部を含む市内全域で94人である。高校普通科定員は学力水準から考えるとこのあたりで足きりしていい
 130点以上150点未満は約35人いるが、総合ABCまたは入試で150点を超えられない生徒は普通科不合格とすると根室高校側で要求学力水準を明確に宣言したほうがいいと思う。そうすればしゃにむに学力を上げてくる生徒が20人ほどでるだろう
 
具体的な数値目標を掲げて公表すれば、生徒はそれに向かって中学3年間をどう過ごせばいいのか戦略を練り、自己を練磨できる。数値目標を公表するることの重要性を教育関係者は認識すべきだ。

なお、点数の区分階層があわない学校は比例配分計算しています。


資料②
 この問題で成績下位20%層の生徒の得点はおおむね25~51点である。これでは学校の授業は語彙力不足から理解できない。もちろん予習ができるはずがない。語彙の拡張の本筋はレベルの高い本を読み、辞書を丹念に引くことである。あきらめなくていい、爆発的な拡張期は逸しても、たくさん読めば語彙はそれなりに増えていく。

『言葉力ドリル 実践編』

第一回の問題より

1.次の①~④の『言葉と反対の意味の言葉を、ア~キから選び、記号で答えましょう。(各4点、合計16点)

 ①客観的
②生産
③肯定

 ④悲観的

(問題文にはすべてふりがなあり:ebisu(注))

 選択肢群[ア楽観的 イ感動的 ウ主観的 エ成長 オ消費 カ否定 キ主体]

 

2.例のように、( )に適当なひらがな一字を書き入れ、それに続く言葉を選んで○で囲み、意味の通る文にしましょう。(各5点、計10点)

 例 会社(に)〔○勤める 努める〕

 義理(  )〔書く 欠く〕行い

 

3.次の①~○6の文の( )に当てはまる言葉を、あとの五文から選んで書き入れましょう。(各5点、計30点)

 

①失政が続き、首相が批判の(  )に立たされる。

②(  )を張って、つい高価な服を買ってしまった。

③思いとは(  )な一言を口にしてしまい、後味の悪い思いをした。

④故障の原因は(  )調査中です。

⑤(  )まじりのじょうだんを言われる。

⑥すべての質問に対し、(  )に答える。

 

選択肢群 [みえ 理性 誠実 裏腹 皮肉 やおもて 説得 目下]

  

4.次の①~○4の文の をつけた部分の漢字を、同じ音読みの正しい感じに直して書きましょう。(各4点、計16点)

 

     両親の言うことに半発する。

     クラス委員としての自確をもつ。

     自分の考えを主帳する。

     賛成の意思を表名する。



5.次の①~○3は、ア~エのどの外来語を説明した文ですか。それぞれ記号で答えましょう。(各4点、計12点)

 ①時間や量を数字で表すこと。

 ②不利な条件

 ③意味、色などのびみょうな感じ。

 

 選択肢群[ア ハンディキャップ  イ デジタル  ウ ニュアンス  エ フェア]

 

6.(省略)

 


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*#2152 期末テスト 中2が健闘 五科目合計点で平均58.8点アップ Dec. 6, 2012 
  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-06

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コメント 2

ZAPPER

補足させていただきました。
心ある、根室の小中学校の先生、それはつまり「内側の同志」のみなさんへ。
何とかしようよ。
何よかしようと決意しようよ。
そうすれば、そんなものはすぐに何とでもなるんだ!
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/6094913.html
by ZAPPER (2012-11-25 21:34) 

ebisu

ZAPPERさん、ありがとうございます。

>何とかしようよ。
>何よかしようと決意しようよ。
>そうすれば、そんなものはすぐに何とでもなるんだ!

学校長と現場の先生たちとPTAが協力すれば、明日からでも改善できます。
私達の役割は、具体的で現実的な学力改善提案をすることです。
学力テストデータの公開は生徒の学力向上に必要不可欠です。公開を通じて、現場の先生たちとPTAが地域の子ども達の学力向上にむけて、協力することが可能になります。
by ebisu (2012-11-25 23:05) 

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