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#2127 大学新設に関する森永卓郎氏の意見 Nov. 12, 2012 [64. 教育問題]

 田中真紀子文科大臣の「3大学不許可事件」は一転して許可となり落着したようみえるが、問題は残されたままだ。

 NHKラジオ番組ビジネス展望から森永卓郎氏の意見を箇条書きにしてみる。
 <fact>
(1) 20年間で18歳の人口は203万人から123万人に、39%減少した。
(2) 大学入学者数は1990年に49万人、今年度は61万人で24%アップした。
(3) 進学率を計算すると、24.1%から49.6%にアップした。おおよそ2倍である。
(4) 大学進学希望者数は66万人で5万人が浪人している。
(5) 45.8%の大学が定員割れしている。

 <意見>
(1) 経済が高度化すれば、人材ニーズも高度化するから進学率のアップは当然のこと。
(2) 社会のニーズにあった大学をつくり、ニーズに合わない大学を退出させるべき。
(3) 5万人の浪人が実証しているように、受験生は大学を選別しているから、ほうっておいても定員割れする大学は市場から退出することになる。
(4) したがって、大学の定員は自由競争に任せるべきであって、人為的に制限すべきではない。
(5) やるべきことは、ニーズに合わない大学をどうやって退出させるかである。入り口を規制すべきではない。
  
 簡単に書くとくいうことのようだ。経済でも単純な成長路線を提唱しているから、この人は規制の撤廃がお好きなのだろう。市場に任せればよいと言うのが基本的な主張のようだ。性格からくるものなのか、この人の意見はいつも明快で牧歌的である。

 私はラジオを聞いていて素朴な疑問=大学は経済のニーズに合わせて増減すべきものという意見に首をかしげた。
 大学は経済の高度化のニーズに合わせて定員を増減あるいは大学そのものをつくったり減らしたりすべきものだろうか?定員オーバーしているのに、大学をどんどん増やしていったら質の低下はあたりまえだ。学歴がインフレを起こすだけで、高校卒業程度の学力の大学生を量産するだけだ。

 そして学問なんてほとんどがすぐに産業の役には立たぬものである。例えば重力の研究。昨日買った本『重力とは何か』大栗博司著(幻冬舎)に次のような文がある。

 「科学はそれ自体に価値があり、それを生み出すことには大きな意義がある。」
 「科学的な発見は、最初は研究者の知的好奇心から生まれたものであっても、長い目で見ると、結果的に世の中の役に立つことが少なくありません。かつて「数学のノーベル賞」とも呼ばれるフィールズ賞を受賞した森重信は、自身の研究している基礎数学が「いますぐには無理でも、50年先か、100年先か分からないが役に立つ」そのためには点休診が再考のコンパスだ」と語っています。算数や数学と言えば、勉強嫌いな子どもが「これなんの役に立つの?」と疑問を抱く科目の筆頭ですが、日常生活からかけ離れた抽象的な研究が、後で思いがけない効用を持つことはよくあるのです。」

 看護師への社会的なニーズは医療法の改正で高まっている。看護師をたくさん揃えると入院管理料が上がり、病院の経営上有利になるから、大病院の「看護師囲い込み運動」がはじまって地方の中小病院で深刻な看護師不足が生じている。
 新設される札幌保健医療大学はそのような看護師の需要増大をあてこんで新設される。しかし、その半数は推薦入学で、実習する附属病院をもたない大学である。
 設置基準自体に疑問が生ずる。理想を言うと、医科大学があり、その中に保健学部あるいは看護学部のあることが、看護系大学の望ましい姿ではないのか。
 根室を見ても分かるように不足しているのは看護師だけではない、医師も不足している。地域医療政策上、医科大学を増やし、その中に看護系の学部を設置すべきだというのが筋論だろう。
 創るなら、札幌ではなく、道東の地域医療の拠点として釧路に公立医科大学を設置し、そこに看護学部を置くべきではないのか。札幌には北大も札医大もあり、市立の看護系大学もある。その上にもう一つ私学の看護大学を増やす意味はあるのだろうか?
 札幌にはすでに二つあるから、大学ではなく看護専門学校でなぜいけないのだろう。専門学校の経営主体である吉田学園は大学を持ちたいのだろう。

 秋田の美大もなぜ必要なのか理由がよくわからない。塾生の中に一昨年美大希望者がいたがあるが、道内に美大がないのであきらめてまったく別の大学へ進学した。
 全国48都道府県それぞれに美大があればそれはいいことには違いないが、そのほとんどがたいへんな赤字を出し、定員割れして解散ということになるだろう。森永卓郎氏の言う、経済社会のニーズにも合わぬことではないのか?

 手続きにも大きな問題がある。文科省の官僚とすり合わせを行いながら、認可前に学生募集を始めるというのはフライングではないのか?認可されてから募集を始めるべきと言うのが筋論だ。

 そもそも大学設置を自由にさせていいものなのだろうか?美大は全国をブロックわけしたときに、そのような配置がのぞましいのか、そういう議論すらない道東には医科大学がないので、地域医療が危機に瀕している。そういうところに地域医療に責任をもつ医科大学がないのはなんとも情けないし、地域の衰退に拍車がかかる。

 やはり、大学設置がどうあるべきか、しばらく新設をストップしても、見直すべきではないのか?


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*#2123 Ms. Tanaka's irraional decision Nov.10, 2012  
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-09-1

 #2121 田中文科大臣3大学不認可を撤回 Nov. 9, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-08


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