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#1960 宮脇翁の提言:命を守る森の防波堤構想=震災瓦礫処理 June 3, 2012 [13. 東日本大震災&福島原発事故]

 世の中、だれが言っているのかが問題になることが多い。仕事ができて実績があり、まっすぐな心根の者が言っているかどうかが問題解決の重要な鍵である。
 報ステSUNDAYで震災瓦礫の問題を取り上げていた。84歳の植物生態学者宮脇昭翁が震災瓦礫処理に実に素晴らしい案を提唱し、一部地域で実証実験を始めている。
 だが瓦礫の埋設処分にはさまざまな法的規制があって宮脇案が実施できない。いったい何十年実証実験をやればいいというのだろう?百年か?
 世界各地で4000万本植樹の偉大な実績のある翁に実証実験を求めるということは彼の仕事を信頼していないということと同義である。森づくりで彼を信頼できないとしたら世界中で信頼できる者など一人もいないだろう。
 翁は理不尽な要求に耐えながら、現状を打破できると信じて実証実験を続けている。時折見せる大鷲のような鋭い眼光にかれの強い意志を感じる。わたしたち国民が彼を支持し政府を動かそうではないか!

 震災地域に限定した特別立法を制定するだけでいいから原案を作り国会で決議すればいい。正面切って反対できる党はないだろう。実に手間のかかる実証実験をやらせておいて、なぜすぐできる特別立法制定に動かないのだろう?
 それには理由がある。私たちが政権交替時に期待した民主党は権力の毒に触れたとたんに腐ってしまってすでにない。民主党の面々がだらしなかったわけではない。権力とはかくも簡単に人を腐らせるものだということを私たちは学ぶべきだ。

 幅100m高さ22mの命を守る森の防波堤をつくる材料に震災瓦礫が最適だという。翁の計算に寄れば1900万トンの震災瓦礫は必要な盛り土の4.8%。コンクリートの大きな瓦礫と木材の瓦礫を土台にして盛り土をしてその上にその土地本来の樹種を植えれば津波の被害を防ぐことができるというのが宮脇翁の提唱する命を守る森の防波堤構想。いま千載一遇のチャンスが訪れている。防波堤内部に積んだ隙間のあるコンクリート瓦礫を抱き込むように木の根が伸びていき、木材の瓦礫が腐って養分となり、植えられた木がぐんぐん伸びるというのだ。根が伸びるために適度な空間があるのがいいのだそうだ。
 宮脇翁は津波の襲った無人島を調べて、タブノキが津波にも耐えたことを知る。平野部に建てられた家では周りに屋敷林のあるところはそこ(屋敷林)で流されてきた船などの漂流物が止まっていた。そして屋敷は無傷。きちんと実証的な調査を重ねている。そのときの翁の顔はじつに厳しい表情をしている。何物も見逃さないというするどい眼光が宿る。

 朝日新聞デジタルニュースより
 http://www.asahi.com/politics/update/0320/TKY201203200350.html
【細川元首相「がれきを森に」 野田首相に進言】
 「野田佳彦首相は20日、都内のホテルで細川護熙元首相と会談し、東日本大震災の被災地のがれき処理について提言を受けた。細川氏は、がれきと土砂で造った高さ20~30メートルの高台に木の苗を植えて森にするプロジェクトを進言。野田首相は前向きに進める意向を示したという。
 
細川氏は終了後、「がれきの再利用は、環境省がブレーキをかけて前に進まない。国家プロジェクトとして総理から号令をかけて欲しい」と記者団に語った。横浜国立大学の宮脇昭名誉教授も同席した。 」


 放射能汚染を全国へ広げないですむたいへんすぐれた案だが、すぐれすぎていて大きな問題がありそうだ。
 廃棄物処理はお金になる。震災は瓦礫の輸送や廃棄処理、そして新たなコンクリート製の防波堤建設でそれぞれの業界がぼろもうけのチャンスなのだ。
 民主党はヤンバダムや新東名高速にみられるように「コンクリートから人へ」の看板をいつの間にか下ろし、自民党と変わらぬコンクリート重視の政策へ舵を切ってしまっているから、宮脇翁の提案がすばらしいものだとわかっても乗れない。次の選挙で業界の支持を取り付けたいからだ。日本のことよりも自分たちの議席のことを優先している。

 宮脇提言は百年後、数百年後に称えられる素晴らしいアイデアである。政党とか国会議員の席と選挙とかそういう私的利害をはなれて判断すべきだが、いまの民主党にそれができるのだろうか?
 野田総理はなんとも歯切れが悪い、「がんばります」との返事。がんばるではなく、「1ヶ月で特別立法を案つくり、野党とすぐに協議して国会を通します」となぜ言えぬ。原子力事故対応担当特命大臣の細野豪志も同じようにこの件に関しては歯切れが悪い。同じ穴の狢(むじな)だ。
 松下政経塾出身者に共通しているのは

 宮脇構想(鎮魂の森、希望の森、命を守る森の防波堤構想)の全面実施をするためにただちに特別立法を制定すればいいだけであるが、野田総理の動きは悪い。消費税増税は声高に言うが、簡単にできる特別立法には消極的だ。
 こういうところが政権をとる前の清廉潔白な姿勢とずいぶん違って見えてしかたがない。権力への妄執に囚われているのではないだろうか。
 下世話な言葉をかりるなら「小ズルイ」とか「変節」といっていいのだろう、日本人が一番嫌がることだ。卑怯と言い換えてもいい。地位を手にすると人間はかくも情けない行動をとるようになる。全国のこどもたち、情けない大人どもをよく見ておけ。同じになるなよ。

 仕事は正直に誠実にやるのが一番いい。
 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」、
 小欲知足


*#1313 水源地である牧ノ内ダム周辺への植樹 :かれこれ17年目 Dec. 24, 2010
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-24

 #1042 水源地を300メートルの森林の帯で取り囲もう May 27, 2010
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-05-26

 #1289 天使の森計画(根室) Nov. 25, 2010 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-11-25

 #1246 地域医療改革の烽火(12):「最高条件は危険な状態」(宮脇昭) Oct. 18, 2010 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-18

 #196「市民の森」オープン(北海道新聞より)2,008年6月8日
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-06-08


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Hirosuke

斜陽産業と成り下がってしまった林業の復興にも役立ちますね。

ひいては、地元の産業・雇用の活性化にも。

となれば、集票効果も期待できるでしょうに。

by Hirosuke (2012-06-04 17:32) 

ebisu

宮脇翁の植林の眼目は生態系本来の樹種を混植することにあるので、主木はさまざまな種類の広葉樹です。植樹したあとは自然に任せますので維持費がかかりません。

しかし松や杉などの針葉樹林ではないので、材木としての価値は低く、林業の復興にはあまり役に立たないのかもしれません。

幅百メートル高さ22メートルの森の防波堤が数百キロ続いたら、海岸の景観はどのようなものになるのでしょう?
願いはかないませんが、延々と続き潮風に揺れる広葉樹林帯をみてみたい。
コンクリートの防波堤では殺風景ですが、森の防波堤ならいい。海岸が森に変われば海には魚が増えるでしょうね。
30年後の日本が楽しみです。
by ebisu (2012-06-05 01:19) 

Hirosuke

きのう3.16(日)に横浜のフォーラムに参加し、
講演を聴いてきました。

法律も改正され、
細川【元】首相も常時バックアップして、
かなり動けるようになってきたようです。

プロジェクトが現在進行中である岩沼市から、
市長が参加しての特別講演もありました。

この市長は元・私塾経営者だったそうです。

翁は何度も、
「千年じゃなくて、九千年。まず【命】。」
と繰り返していました。
(かなりのユーモアも交えて。)

質疑応答の時間には、
僕も経験から質問しました。
(長いので、ここでは割愛。)

残念なのは、
参加者が100人にも満たず、
報道関係者も見当たらなかった事です。

とは言え、
実際の植林現場では、
大勢のボランティアが参加しています。

その様子が写真で紹介されていました。

次は5月末に植林イベントがあるそうです。

体力の許す限り参加しようと思っています。
by Hirosuke (2014-03-17 20:59) 

ebisu

ほう、栃木県から横浜まで出かけたのですか。
宮脇翁との質疑応答は貴ブログで公開してくれるのでしょうね、楽しみにしています。

100人足らずとは少ないですね。植林現場にたくさんの人が集まればそのほうがいいですね。
コメントを読み、頼もしい感じがしました。
by ebisu (2014-03-17 22:34) 

Hirosuke

「2015.5.30 仙台・岩沼の防潮堤に植樹しました。」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2015-05-31
[わが里程標]

去年に書けなかった分まで含めてレポートを書きました。
by Hirosuke (2015-05-31 18:03) 

ebisu

ことしは参加者多数のために人数制限して4000人ですか。
森の防波堤の提唱者宮脇昭翁と4000人の植樹仲間たちが宮城県の海岸で一大植樹イベント。
写真が何枚も貼り付けてあるので様子がわかります。

政府は十数メートルのコンクリート製防波堤なんてやめて、森の防波堤で東北沿岸をつなげばいい。

良い顔して植樹に使う藁運びをしたようですね。
極東の町から、ありがとうを言わせてもらいます。
4000人の参加者の皆さんにも、ありがとう。
by ebisu (2015-05-31 18:41) 

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