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#1955 タクヤとカズキのデビュー :「歯舞 コンブの浜 春(下)」  May 31, 2012 [15. ポジティヴ&ゆめ]

 根室支局の栗田記者がやってくれた。いい取材記事だ、最高!北海道新聞根室地域版のシリーズ記事のことである。「歯舞 コンブの浜 春(下)」に二人の青年が大写しになっている。タクヤとカズキだ。二人とも身長180センチを超える大男だ。タクヤのほうが背が高い。体重は二人とも軽くはないから秘密にしておこう(笑い)。

 デビュー 父の背中に満船の夢

 4月の高校を卒業したばかりの双沖のコンブ漁師が6月1日の歯舞群島貝殻島コンブ漁解禁でデビューする。19歳と18歳、隣同士で歯舞中学まで同級生だった二人だ。

 二人がニムオロ塾に来たのは小5のときだ。一度市営グラウンドでの野球を見に行ったが、一人中学生がベンチに座っている。よくみたら小5のタクヤ君だった。あのころは目がぎらついていた。アブナイ光が目の奥にあるのが気になった。中学時代にそういうタイプの友人がいたからそのままではどうなるか想像がついた。大きな身体で負けん気が強かったから、感情をセーブできずに腕力を振るっても大事になる。勉強よりもそちらの方をなんとかしたいと思った。
 白鳥先生が毎日出す算数の手作りの宿題プリントをやるのみで塾用問題集にはときどき手をつけるだけ。中学生になっても英語の勉強を嫌がった。
 「船に乗るには小型船舶免許がいる、気象とか天体とかそういう勉強もしないと合格しない、いずれ勉強しないといけないことになるからそのためにいましっかり勉強しておけ」
何度も言ったがその都度のらりくらりと逃げた。英語だけは本当に嫌そうだった。いまにして思えば家業を継ぐから勉強などする必要はないとあのころから心に決めていたのだ。
「防水機能付・GPS機能付の携帯が開発されるだろうから、漁に出るときはバッテリーを確認してもっていけ、落ちてすぐに連絡すれば助かるかもしれない」
 言ってた当時はそういう機能を兼ね備えた携帯電話はなかったが、かれらが漁に出るいまなら、そういう携帯電話が商品化されて発売されている。明日はしっかり身につけて出漁するのだろう。

 カズキは手のかからぬ生徒だった。授業中にタクヤと冗談を言い合いながらも勉強はしていた。ゲームに嵌っている時期があった。カズキはすこし太っていたがじつは筋肉の塊で運動神経もヨサコイに参加して踊っているのをみるかぎり悪くない、悪くないどころかリズム感があり潜在的身体能力の高さを感じた。高校へ進学するのをよして相撲部屋に入ったらと勧めたことがある。親に相談してみろと言ったら親はいいと言っているが自分が嫌だとはっきりした返事。性格的に穏やかで格闘技は嫌いなのだ。もったいない。家がコンブ漁をしているとコンブ干しを手伝うので腕力が鍛えられ強くなる。海から引き揚げたばかりの濡れたコンブは重い。腕力が強く運動能力のすぐれた彼ならいい相撲取りになったかもしれない。

 タクヤとカズキは隣同士だから塾へも一緒にきた。たぶん歯舞のある人の紹介だったのだろうと思う。あれから8年だ。
 タクヤは数学以外勉強せず、カズキはコツコツ勉強して成績を上げた。タクヤは根室西高校へカズキは根室高校普通科へ進んだ。カズキは高校へ入学してから数ヶ月間塾へ来ていた。
 あるときタクヤから電話が入った。
「先生、小型船舶免許をとりたいのですがどうすれば勉強に集中できますか?勉強に集中できないんです」
 入学して数ヶ月のことだ。どうアドバイスをしたが覚えていない。必要になれば勉強はするものだからこうなるときを待っていた。ちょっと遅かっただけ、家業を継ぐという責任感はしっかり持っていた。それから3ヶ月ほどして教室へ来た。
「先生、小型船舶免許試験合格しました」
「やったか・・・合格おめでとう」
 
 うれしいものだ。
 目の奥にひそんでいたぎらつきは中学生になってから次第に薄れ、中3のときには優しい目つきに変わっていた。たとえていうと「熊にまたがる金太郎」のようなまなざしだった。勉強はともかく、これで大丈夫だと思った。
 根室西高校へ入学してわずかの間にこれほど成長を見せるとは、「想定外」だった。生徒たちの潜在力はどうやってもはかり知ることができないものだ。本人の名誉のために書いておくが、あれほど嫌いだった英語もずいぶん勉強したらしく、塾先生のわたしに報告できるようないい点数をとっていた。
(私は高校2校体制の存続を願う。根室西高校の維持に根室市の予算から毎年1億円の予算を投入してもいい。14億円近くもなっている病院の赤字を毎年数億円減らす手立てはあるから浮かした費用を投下すればいい。根室西高校という畑でないと育たない作物もあるということ。根室西高校という畑でも家業を継いでしっかり根室を担う若者が育っている。養分の異なる土を持つ二種類の畑(高校)が必要だ。人材を育てることこそが根室のマチの最優先課題と言っていいのではないだろうか。)

 185センチほどもあるタクヤがサッカー部でがんばっていたのは知っていた。3月のある日授業をしていたら教室のドアのすりガラス窓に大きな影が映った。誰だろうと思った。
「先生、今日卒業したので挨拶に来ました」
 西高校の制服を着たタクヤだった。
 これにはまいった、きちんと背筋を伸ばして大人の挨拶だった。
 ああ、"卒業"したんだ、子供の時代が終わって大人への脱皮を感じた。

 家業を継ぐことに迷いがなかったタクヤ、迷いながら家業を継ぐほうの道を選んだカズキ、その二人が並んで写っている。塾へ来た当時の童顔が瞼(まぶた)にだぶる。

  明日6月1日は歯舞群島貝殻島コンブ漁の解禁日だ。ノサップ岬のすぐ目の前に見えるわが国の領海へ出漁するのに採取料を支払わねばならぬ現実を味わってくるがいい、そして考えろ。明日のコンブ漁を、そして根室と北方領土問題を。君たち二人の本物の勉強は明日からはじまる。塾長からのエールだ。

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 こういう若者が根室に残ってくれる。根室の将来もまんざら捨てたものではない。牧の内のオホーツク海沿いには1学年うえのしっかりした生徒がやはり漁業の家業を継いでいる。先日、日曜日のサイクリングのときに網を干す仕事をしているところを見かけたので声をかけた。
 仕事の手伝いを小さいころからしていると、筋力が強いから、運動能力が高い者は個人競技なら管内ナンバーワンとなるケースがある。家業を手伝わなければあれほどの筋力はつかない。
 3年前に北海学園大学に進学した女子生徒を前任記者が取材して載せたことがあった。塾を開いた12月に入塾してきた三人の小6年生のうちの一人である。一人は法政大学へもう一人は看護専門学校へ進学した。三人で授業中は雑談なし、競うように勉強していた。
 21歳で税理士試験に合格し20代から東京有楽町で税理士事務所を開いている同級生のH・Kがやはり新聞に載った二人と同じフタ沖で生まれ育った。高校1年のときに同じクラスだったが、腕相撲をしたときその力の強さに驚いたことがある。友知の同級生ヒロシは卒業した年の8月16日に交通事故で亡くなった。いい奴だった。あれから45年もたった。45年後に隣同士のタクヤとカズキがそれぞれの息子と元気にコンブ漁をしていることを祈っている。
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*#1954 味わいのある記事:「歯舞 コンブの浜 春」 May 30, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-05-30

*cccpcameraさんのブログ紹介
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