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#1943 冷たい空気の中を走る May 20, 2012 [85.サイクリング]

 まだ空気が冷たい、13度くらいだからグローブは2重にした。手が冷たくなると反応が鈍くなりとっさのブレーキ操作に支障が出るから、安全上の配慮である。
 ロードレーサーはタイヤの空気を半分くらい抜いてあったからいれた。圧力を高いままにしておくとリムとの接着部が不均等にはがれることがあるので用心のためだ。前回同様に前輪5.5bar 後輪6barに調整。
 今日は牧の内18mコースを逆に回る。人間は自然の状態だと左回りを選択している、わたしもそうしていたが今日は右回りだ。どういうことになるのだろう?何か変化が起きるのだろうか?
 根室高校を過ぎてしばらくいくと鶯の「ホーホケキョ、ケキョケキョ」と声がする。先週は寒くて鳥の声がほとんどしなかったが、今日はいろんな鳥のさえずりが聞こえていた。「ジジジ、チチッチィッチ」。しかし最盛期の夏とは比べものにならないくらいまばらである。道ばたの蕗(フキ)は鮮やかな緑色で30センチほど細く伸びてきた。とってもやわらかそうだ。

 根室高校前から3kmほど走り、左へ曲がってオホーツク海のほうへでる道路を走り、海岸沿いの道路を右に折れてノサップ方向に車のほとんど来ない道路を走る。下りが多いのでスピードが出るが50kmくらいでやめておく、路面がところどころ荒れて段差があるのでパンクの危険がある。時速60km超で転倒したらヘルメットをかぶっていてもケガはする。反射神経が衰えているから昔と違って受身もそううまくはできない。ほどほどのスピードで風を楽しむのがいい。

 元塾生のうちの前を通過しようとしたら、石を敷き詰めた作業場で網の手入れをしていた。思わず名前を呼んで片手を上げて自転車を停めていた。手を休めて歩いてきた。3年ぶりだが元気にやっている。日焼けして少し痩せたから気になっていた膝も大丈夫そうだ。
 「ときどきこのコースを走っているんだ、見かけたら声かけるから」
 「先生、○○ビルでやっているんですか」
 「ああ、がんばってるよ、●●も家業を立派に継いでがんばれよ」
 「はい」
 「じゃあな!」
 
 中学生のときは北海道教育大札幌分校へ進学したNとはりあっていたこともあった。性格がまっすぐでスポーツは万能に近い。ある種目でしばらく管内ナンバーワンだった。膝の故障で高校では別の競技に転向したが、再発して全国大会出場を断念した。
 めんこい生徒の一人だった。北大水産ならがんばれば届いただろう。すべてを受け止めて生きてゆくのも男だ。冷たい風を受けながら、あいつが進学かすぐに家業を継ぐか迷っていたころのことなどを思い出しながら走っていた。あの同期にはもう一人気になる奴がいるのだがなんとかやっているだろう。時の過ぎるのは速いもので中学1年生のときからそれぞれの事情に合わせてニムオロ塾に通ってくれた。二十歳になってみんな酒が飲める年齢だ。

 しばらく海沿いに走ってからまた右に折れて原野に入る、それまで「ホーホケキョ」はない。海沿いにはいないのだろう。右に折れてからはなだらかな上り坂だ。反対周りだと景色がまるで違って見え、別の道を走っているような錯覚にとらわれる。
 いい日だ。

 すれ違った車は3台、18kmを50分弱で走った。
 本日の走行㌔数は22km、通算922km 

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【鶯の初音と日本人の情緒】 21日11時追記

 昨夜、林望の『謹訳 源氏物語 四』の「初音」の章を読んでいたら、冒頭に次の句が掲げられていた。

  あらたまの年たちかへる朝(あした)より待ちたるものは鶯の声 (297ページ)

 岩波文庫で原文を確認したら、この句はない、林氏が地の文を手がかりに典拠を示したものだろう。正月元旦の朝から春になって鳴くほととぎすの声がまちどおしいようすが伝わってくる。京都も根釧原野も、千年前もいまも、鶯はかわりなく日本各地でその声を聞かせてくれる。昨日原野で耳にした鶯が今年の「初音」であった。
(昨日の朝の最低気温は6度だった。今朝は根室で部分日食が観測できた。釧路は霧だったが根室は晴れていた。)

 光源氏は36歳、正月二日のあいさつに女たちのところを一通り挨拶に回る。明石の君の句がなんともかわいらしい。

  めづらしや花のねぐらに木(こ)づたひて谷の古巣をとへる鶯 
  待ちわびていた一声がやっと・・・・・
     (308ページ)

 源氏の君の訪れを素直に喜んでいる。身分の低い自分のところを「古巣」と呼んでいる。たしかに明石の君とは一緒に過ごした時期がある。京都から追われて明石に流されたときのことであった。
 何枚か書き散らした中のこの句を見ただけで源氏は発情したのだろう、書いたものも姿かたちもしぐさも妖艶な明石の君の魅力に抗しがたく源氏はあいさつ回りをやめて明石の君のところに泊まってしまう・・・
 紫の上はおかんむりだ。女たちへの正月のあいさつまわりといって出てきたのだから。ドキドキハラハラ、女心と男心の両方がしっとり書けている。

 源氏物語を読むのはこんなにも楽しい。だが高校生諸君、源氏物語だけは読むな。のめりこんだら古典の成績は上がるかも知れぬが受験は失敗するぞ、それほど危険で魅力的な本だ。高校時代にも大学生のときにも読まなくてよかったと、わたしは本心から思う。

謹訳 源氏物語 四

謹訳 源氏物語 四

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2010/10/26
  • メディア: 単行本
源氏物語〈2〉 (岩波文庫)

源氏物語〈2〉 (岩波文庫)

  • 作者: 紫式部
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1965/10/16
  • メディア: 文庫



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Hirosuke

「読むな。見るな。聞くな。」と言われると、
かえって隠れて知りたくなるのが人の情。

ここは敢えて、
「読め、読め、読みまくれ。親の前で音読せよ。」
と言っておいた方が安全やもしれませぬ。

30年前の話ですが、
Z会(増進会)の漢文テキストの例文が、
全てポルノを題材にしていたのを思い出します。

by Hirosuke (2012-05-22 00:04) 

ebisu

Hirosukeさん、おはようございます。

へえ~、当時は漢文でポルノを題材にしていたのですか。
Z会にはずいぶん粋な人がいたんですね。

新宿紀伊国屋書店ではじめてペーパーバックのポルノを買って読んだことを思い出しました。"Ahaaaa!"とか"Uhuuu!"とかやたらやかましくて動物園のようでしたね。日本人とは違ってやつらはずいぶん情緒のないセックスをしているんだと思いました。一冊買ったあの本は英語の勉強になったのかならなかったのか…???

英語圏で16世紀あたりに源氏物語が生まれていたら、英国人や米国人のセックス観はまるで違ったものになっていたのかもしれませんね。

源氏物語は日本人の宝、小説家を志す人は一度通り抜けてみる価値がある。ebisuのようにそうでない人はただ楽しめばいい。(笑)
by ebisu (2012-05-22 09:09) 

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