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#1896 インプラント治療とQOLの改善 Apr. 8, 2012 [39. インプラント治療]

 この小論がこれからインプラント治療を受けようと考えている人や歯科衛生士の学校へ進学を考えている高校生の参考になれば幸いである。

 6年前にスキルス胃癌と"巨大胃癌"を併発し胃の摘出手術をしたのでカルシウムの吸収能が低下した。高校生のときから毎日2リットルほどのみ続けていた牛乳を飲まなくなったこともあるのかもしれぬ。
(40歳をすぎてから会社の健診で脂肪が高いと言われ、呑んでいる牛乳の脂肪を計算したらバター換算で一日70グラム、月換算2.1kgバターを食べていることになる。若いうちは問題なくても、40歳を過ぎると血中脂質濃度を一気に上げることになるからご用心。そのときまで同じ量を飲んでいても血中の脂質に異常値が出た事はなかった。)
 カルシウムの吸収能が悪くなったからか歯が次々に虫歯になり、地元のA歯科医の先生のお世話になっている。
(歯科医であり小説家でもあった先代にはずいぶんお世話になった。赤ん坊のときに子ども好きの先先代の先生にかまって遊んでもらったそうだから三代のお付き合いになる。)
 一日5回食事することや間食をしょっちゅうしないといけないことも口内環境を悪くしているのだろう。虫歯になりやすいのはおそらく"複合原因"である。
 インプラントの相談をしたら、札幌の大学病院を紹介するとのこと。設備が整い専門医がいるところでやったほうがいいと大学病院での治療を薦めてくれたが、札幌だとホテルに滞在して治療することになるのでムリだと判断した。家では玄米食だ。昨年、お袋がなくなったときに葬儀で3日ほど仕出し弁当を食べざるを得なかったが、下痢を起こして体力を著しく消耗し、回復に4ヶ月を要した。情けないが入院寸前まで体力が落ちたのである。A先生に事情を話して東京で治療することにした。

 東京多摩市のかかりつけのB歯科医に電話したらすぐに日程を調整してくれた。三週間ほどたって3月19日に伺ったら、「いや、お久しぶりです」と診療室から出てこられてニコニコしながら丁寧なご挨拶、わたしも懐かしかった。
 B先生は札幌の人で50歳くらいである。理系科目は得意だったようだが、何度話しても根室の位置がよくわからないご様子だから社会科目は不得手だったのかもしれない。知床半島と根室半島の区別がつかない。(笑い)
 診察ブースは6つ、歯科医はH先生と若い女医さんのお二人。奥の右側がインプラント手術用の部屋で42インチのモニターが壁にかかっている。レントゲンを撮ってからインプラントの説明を受けた。
 ディスプレイは4つに分割されており、平面座標でいうと4象限に立体画像が表示され、その画像に切断線を2箇所入れるとそれぞれ切断面が表示されるようになっていた。

 インプラント治療は簡単に言うと顎の骨にドリルで穴を開けてチタン製のメスネジを埋め込み、3ヶ月たってそれが固着したらオスネジで芯を立ててその上にジルコニウム製の歯を取り付ける。
 下顎の骨組織は一様ではなく、外皮のように硬いところと比較的やわらかいところとあるが、それがよく映っていた。骨組織の計上を切断面をずらしながら確認して0.1ミリ単位で骨の厚みとメスネジを埋め込む深さを確認していった。4.1mmのメスネジを2本入れることに決めるのに3時間かかった。その間、先生は他のブースで治療をしてきたり、ブースに相談にくる女医さんや歯科衛生士にてきぱき指示をしていた。仕事の指示がうまい、そして余裕があるから、忙しくてもぎすぎすした感じがない。クリニックには穏やかな空気が流れていた。
 翌日が祭日で休みだったので、翌々日にオペをした。ドリルで下顎に2箇所穴を開けてメスネジを押し込んだ。4.1mmのネジを入れるのに半分ほどの直径の穴をドリルであける。そうしたほうが骨の厚みを残せるので結果がいいのだそうだ。もちろんあまり無理をしたら骨は割れる、つまり骨折する。そこは技術だ。

 虫歯になりかけている箇所がいくつかあったのでそれも治療してもらった。12年前もそうだったが麻酔の針を刺すときにほとんど痛みがない。使う器具が違うのである。最近のものはもっと進歩している。針が細いのはもちろんのこと、スッテップモータで麻酔液をゆっくり押し出すのだが、圧力センサーがついていて注射液が入る圧力を自動的にコントロールしている。入れはじめに強い圧力がかかるのでそこを緩和するようになっている。「とても手では入れられません、こんなこと手でできたら神業です」とB先生。目をつぶっていたら針が刺さる瞬間すら気がつかない。神経ギリギリまで削ると事前に説明があったので思わず「麻酔せずに削るんですか?」と聞いてしまったら、「え、さっきやったでしょう」と言われても、自覚がないから「いつ?」と聞いてしまった。それで圧力センサー付のコンピュータコントロールの注射器をみせてもらった。掌に収まる小さなものだ。たくさん出ているだろうから、それほど値段は高くなさそうだ。
  もう一つ驚いたことがあった。日程に余裕がないので、型を取ったのをコンピュータに3次元画像として取り込み、セラミックス製(?)クラウンをコンピュータで作成した。クリニック内に道具が一式あるらしい。色が合わせられないのが欠点だというが奥歯なら問題ない、きれいなものである。

 インプラントの部品はスウェーデンの会社が作っている。先生二人と歯科衛生士はスウェーデンまで行って研修を受けている。もちろん国内の学会のインプラント研修も受けている。東京だと教育・研修へのアクセスがいい。B先生は十年位前からインプラント治療をやっている。女房殿がさきにインプラント治療をしていたから、その様子を聞いて自分がやるときはぜひBドクターにお願いしようと思っていた。地元のA先生もだが東京のB先生も信頼のおけるドクターだ。
 最初のうちは専門医と一緒にやっていたが、2年ほど前から自分で全部やるようになったようだ。歯茎の縫合の手際がよかった。数えていたが7箇所ぐらいしばったのではないか。あっというまだった。

 レントゲンは根室の歯科クリニックと同じ製品にみえた。小さな断層撮影のモジュールが追加されているところだけが異なる。撮影されたデータはサーバーに取り込まれ、インプラント手術室のクライアントで42インチのディスプレイで見ることができる。治療前の歯や歯茎の状態を確認するためにニコン製のカメラで写真を撮ったが、これはメモリーを外してサーバに取り込むようになっていた。患者データは画像も含めて患者名や生年月日で検索できる。
 三次元画像解析システムが導入されているクライアントはインプラント手術室とカウンセリング室のみ。院内の配線は光。画像解析システムはパッケージのようだが販売数が少ないからおそらく2千万円以上の投資だろう。野暮だからシステムのプライスは質問しなかった。患者数が多くないとこういう投資はなかなかできない。0.1mm単位で骨の形状を確認してメスネジの直径や埋め込む角度、そして深さを決定してくれると安心して治療が受けられる。インプラントは最近マスコミでトラブルが取り上げられているので、ある程度設備が整ったクリニックで信頼のおけるドクターにお願いしたいというのが私の率直な感想である。

 これで右側で噛めるようになると、QOLがずいぶん改善できる。左しかかめないのに左側の歯が虫歯になると食事が苦行にになり、体力維持に支障が出てしまう。胃がない分、咀嚼回数を増やして唾液と充分混ぜないと下痢を起こしたり腸に炎症が起きて口内炎も引き起こすからおおよそ80回くらいかむことにしている。玄米はかめばかむほど美味しい。秋には右側でもかめるようになる。左の歯にトラブルが起きても大丈夫だ、ちょっとうれしい春なのである。医療技術の進歩と信頼のおけるドクターに2度助けてもらうことになった。

 (5年半前にスキルス胃癌を摘出してくれた若きドクターGに感謝。そして手術を横で見守ってくれて適切な指示をしてくれた院長先生にも感謝。進行速度の大きいスキルス胃癌と通常タイプの巨大胃癌の併発だったからほとんど助からないのは手術前に承知していた。入院して検査している間にも広がっていくのが自覚できた。冷たい重いものが体内で広がっていくのがわかるのだ。スキルスが絶対あると検査のしなおしを副院長の内科医の先生にお願いした。3度目の生検でスキルスの存在が確認できた。進行速度が速いので開けたらリンパ節に転移し大腸にも浸潤しておりドクターGの手が止まった、やめようかと思ったのだろう、そこへ院長が「ざっくりとりなさい」と一言。典型的な「アケトジ」の症例だったようだ。予定よりも2時間長く6時間かかった。あきらめないで執刀を続けてくれたドクターがいたからいま生きている。切った後数日して、「肝臓に転移していると思うから一月たって転移が確認されたら切ることになります」と言われたときには、「転移していたらそれまでだろう、手術はしない」と覚悟した。でもなんだか助かる気がした、死ぬ感じがなかったのである、不思議だった。手術前にドクターGから説明を受けているときに、この若い外科医が助けてくれるという安心感が湧いてきたのをはっきり覚えている。だから、もし手遅れでもこのドクターに命を預け、腕を磨く経験になればそれでいいと、役に立てることがうれしかった。外科医はたくさん切らないと腕が上がらぬ。結局、肝転移はなかった。オヤジの兄弟たちは皆癌で逝った。それぞれ部位が違う。オヤジは大腸癌で2度目の手術はアケトジだった。1度目の手術から2年後だった。それがオヤジの兄弟の最長記録。わたしは術後5年半を過ぎた。
 自分ひとりの力で生きているのではなく生かされていると実感。だから生かしてもらった自分の命は他の人の何らかのお役に立つことに使いたいと思いながら毎日授業に励む。生きている間はやれることを坦々とやり抜き、お迎えが来るまでまっすぐ歩いていたい。幸せである。
 タダ一つ残念なことは、あの快適な病院(釧路医師会病院)がいまはもうないことである。地域医療を支えてくれた素晴らしい病院だった。術場の看護師さんや根室高校後輩の看護師さんたちはいまどこでその腕を振るっているのだろう。
 今年は開塾したときの中学1年生が二人看護学校を卒業した。そして中1年にまた二人やる気満々の看護師志望の生徒が先週入塾した。うれしそうな顔で勉強している。一人はお姉ちゃんが元塾生で看護学校2年生だ。そのお姉さんからメールが来て、"数学も英語も授業が楽しいって喜んでいます、明日も行っていいかって言ってますが行ってもいいですか"、"土曜日は補習授業の時間帯は3時半から7時までだからどうぞ"とメールしたら、昨日(土)二人揃って来て2時間楽しそうに勉強していた。アルファベットを書かせた後、『ぼっちゃん』の冒頭の文を黒板に書いてローマ字が書けることを確認し、日本語にない発音([f][p], [v][b], [k], [θ]、thの濁音, chなど)の音の出し方をトレーニングしながら単語を書いていったら面白がっていた。学校では辞書を使わないが、この生徒たちは中1からしっかり辞書を使う癖をつけてしまうつもりだ。発音記号も教え方次第で中1でもすぐに読めるようになるから、やる気のある生徒にはきちんと説明した方が英語への好奇心を引き出せる。1年後にはどういう授業になっているだろう?高校生が「なにこれ!」って驚くかもしれない。個別指導で生徒次第だからわたしにもどうなるかわからない。 
 根室市は先月、看護学校生に3年間毎月10万円の奨学金を支給する条例を満場一致で決めた。これで看護学校への進学をあきらめずに勉強する生徒が増えるだろう。いつも市長や市議たちの仕事を不正直・不誠実と具体的な事例を挙げて批判することが多いが、この条例に関してはよくやった、ありがとうと一言書いておく。パトリオットのわたしは喜んでいる)


*QOL(ウィキペディアより)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95

「クオリティ・オブ・ライフ (Quality of Life, QOL) とは、一般に、ひとりひとりの人生の内容の質社会的にみた生活の質のことを指し、つまりある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度としてとらえる概念である。QOLの「幸福」とは、身健康、良好な人間関係、やりがいのある仕事、快適な住環境、十分な教育レクリエーション活動、レジャーなど様々な観点から計られる。」

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**「#2367 インプラントは定期点検が大切 Aug. 9, 2013 」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-08-09

 #2157 インプラント治療終了 Dec.16, 2012 
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-16

 #2099 インプラント治療の実際(3) Oct. 14, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-10-14 

 #1918 インプラントの実際(2) : 片方固着せず、やり直し  May 2, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-05-02

 #1896 インプラント治療とQOLの改善 Apr. 8, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-04-08





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コメント 4

Hirosuke

牛乳に関しては僕は全く逆で、
子供の頃は給食以外は全く飲まずとも虫歯なし。

しかし、トリプトファン欠乏症になったのか、
45間近で「うつ」になり早3年半。

最近は、
コーヒーに大量に牛乳をいれ、
それを一日10杯近く飲みます。

肝数値は上がる一方ですが、
仕方ありません。

「人は何かの犠牲なくして、何物も得ることは出来ない。」
     ↑
有名なアニメの毎回の冒頭に流れるクレジットです。

by Hirosuke (2012-04-08 05:20) 

ebisu

Hirosukeさんも脂肪肝の疑いありですね。
わたしも40代後半から脂肪肝でした。脂肪に押されてプチプチ肝細胞のはじける音が聞こえるようでしたね。
天麩羅は美味しいし・・・
食生活の改善は、わかっちゃいるけどなかなかやめられない。
牛乳だけは一日400ml程度まで減らしました。
手術をしてからは飲みたくなくなったんです。
牛のような胃がないと消化できないでしょうから(笑い)

食生活ががらりと変わって、食べ物に対する趣向も変化しました。たぶん体質も変わってしまった。だからほしくなくなったのだろうと・・・
変えたいときにはなかなか帰られなくても、時期が来ると勝手に変わるものですね。人体は不思議です。
大事に使います。
by ebisu (2012-04-08 09:07) 

隣町の住民

読んでていつも思うこと
俺の義務教育時代にebisuさんのような先生か
塾があったら・・・・・・・
もしかして全然別の人生を歩んでいたかもなんて
想像します。
もちろん相当な努力をしたうえですけどね。

健康に留意されてこれからも根室の学力向上のために
奮闘下さい。
by 隣町の住民 (2012-04-08 09:44) 

ebisu

隣町の住民さん

ブログの愛読ありがとう。
とてもうれしい応援メッセージです。

ところで根室には面白い私塾がいくつかあります。
毎年クリスマス頃に英語劇をやっているウェークフィールド、ポレポレミッキークラブ、川越さんの英語塾、草野さんのキャンパス、育英塾など、それぞれユニークです。

by ebisu (2012-04-08 17:50) 

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