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#1829 中1の語彙力の実例 : これでは先生たちの授業も理解できぬ  Feb. 5, 2012 [64. 教育問題]

 国語に苦手な中学1年生の語彙がどの程度のものかお目に掛けたい。決して特別な例外ではない、本を読まないから最近こういう層が厚くなっている。
 テキストは斉藤孝著『読書力』(岩波新書)である。ニムオロ塾で中1の日本語音読テキストに使っている。

 入れている 矢印 図化 描写 膨大 執筆 椅子 経済的 人間喜劇  登場人物 後年 迫力 藤沢周平 藩 細部 至る 鍵となる概念 明と暗 父母 矢印 躍動感 各人

 今日の音読トレーニングで8ページのうちで読めなかった漢字を青で示した。24ある、1ページ当たり3個。
 句点ふたつ読んで次の人に交替、女の子はよどみなく読む生徒が多いが、男の生徒はスムーズに読めない者が多い。音読スキルは性差や個人差が大きいのである。
 4月からやってこの水準だ。いささかがっかりしている。こんなことははじめてだ。いくら言っても家で読んでこないし、漢字の書き取りを宿題にしても書いてきたのは一人だけ。家で音読トレーニングをする生徒は短期間で格段に上手になるからすぐにわかる。ごまかしようがないのである。先読みに慣れると読みが高速かつ精確になるからすぐにわかる。上手な生徒が読むとページが変わっても目をつぶって聞いていれば気がつかぬ。

 10ヶ月前の5月のときはどうだったのかを比較のために示しておく。

 物言い 省みない 流れ 負っている 認識 思考力 読書経験 無知 著作活動 持続 摂取 える 軽視する 権威的 欺瞞 相撲 素地 けて われる まるところ ばれている 提示 一致 推理小説 厳密 客観性

 わずか3ページで26単語、1ページ辺り8.6個、5月の時点ではこんなに読めない漢字があった。

 お気づきになったかもしれないが、ほとんどが中学1年生の日常会話に出てこない単語である。当たり前の話だが、書き言葉に出てくる単語は本を読まないと蓄積されない。話し言葉と書き言葉は重なる部分と重ならない部分がある。話し言葉をA、書き言葉をBとすると、集合Aは小さく集合Bは膨大である。中1に理解できない語彙群はBからA∩Bを引いた部分である。本を読まない生徒はB-A∩Bの語彙群が増えない。基礎的日常会話の部分は小3あるいは小4程度の語彙で間に合うから、本を読まない生徒が理解し使える語彙はせいぜい小4止まりとなる。こうした生徒は自分の感情すら適切に表現できない。「うぜー」「死ね」・・・である。なにがどのように「うぜー」のか説明できない。ほうっておくとほとんどの生徒が本を読むようにはならないから、大人になっても小4程度の語彙力に教科書からわずかの語彙が付加されるだけである。これでは社会人となったときに、上司の業務指示が理解できないし、お客様のクレームも適切に理解することができないだろう。もちろん自社の商品の特徴もお客様にアッピールすることができぬ。非正規雇用の単純労働しか仕事がないということになる。そういう仕事は中国人やベトナム人などにどんどん奪われていく。強いコネがなければ30歳になっても最低賃金で働くしかない。世の中はそう甘くはないのである。

 10ヶ月やってようやく読めない漢字が三分の一になったが、きちんとやれば十分の一以下にできる。そういう生徒は他の科目も点数がぐんと上がってしまう。
 この方法を初めて試みた生徒は中学3年間5科目合計点が上がり続け現在大学生である。読めない漢字や書けない漢字を自分でピックアップして5回ずつ書いて来いと宿題にしたら、一生懸命に書いてきた。ノートに小さい字でびっしり書いてきた。生活習慣(家庭学習習慣)がきちんとしていて、素直に指示通りやる生徒は確実に成績が伸びていく
 指示に従わず、宿題もせず、家で音読トレーニングをしない生徒の成績は上がらぬ。やれない言訳ばかりすることになる。社会人になったらどうするのだろう。「自分が経営者なら、仕事のできないことに言訳ばかりする人間を社員で雇うか?」と訊ねてみると「ムリ、ムリ」と返事をする。「そういう社員が多いと自分の会社がつぶれるからな、わかっていたら今日からしっかりやれ」、言い訳は要らぬ。仕事は正直に・誠実にやるもので、勉強も同じだ。

 岩波新書に限らず、新書版は中学1年生にはレベルが高い。児童書は読み聞かせをお母さんたちが積極的にするが、大人の本への橋渡しが家庭でも学校でもなされない。だから、読書をしない子どもをほうっておいたらこういう風になるほうっておいたら成績が上がらないから、ニムオロ塾では授業に10分早く来てもらい、毎週20分間音読トレーニングをしている

 じつは、読めない漢字の多い生徒は「てにをは」の読み違えや単語の読み違えが多い。先読みができていないからだ。声に出して読みながら、先に文章をサーチして読み方や区切りを決定しつつ読んでいかないとスムーズに音読ができないし、意味の取り違えが起きる。音読スピードの遅い生徒は黙読スピードが遅いだけではなく、何箇所も読み違えているはずだ。
 学力テストの国語の点数が60点以下なら音読スキルに問題を抱えていると思ったほうがいい

 音読トレーニングと三色ボールペンで重要箇所をマークしたテキストで漢字の書き取りトレーニングをきちんとすると3ヶ月で30~40点の点数の生徒の大半が70点超になる。厄介なのは6年生まで家庭学習習慣のなかった子どもたちである。家で読んでこなければ音読スキルは上がらない。4月から10ヶ月間言い続けてもやってこない。
 読むトレーニングをしないと他の科目も点数が上がらないことになる。日本語能力に欠陥があると学力は伸びない。おそらく、授業で先生たちが使う言葉も理解不能のことが多いだろう。たった3行の重文や複文の数学の問題の意味が理解できない生徒は根室の中学生の60%を越えているだろう

 中学生の日本語語彙がどうなっているのか具体的なデータで示したが、何かの役に立つだろうか。
 テレビで東京の開成中学の合格発表風景が報道されていた。小6の受験生が記者の質問に答えて、国会論議の混迷振りを批判し「・・・(福島第一原発関連)予算の執行をきちんとしてもらいたい」とはっきり意見を述べていた。
 学力テストが60点以下の中1年生の使える語彙に「予算の執行」はないだろう。おそらく意味が理解できぬ。

 きちんと音読トレーニングと三色ボールペンで線を引いたテキストの漢字書き取りをすれば5科目合計点は飛躍的に上げることができるのだが、いくら指示をしても指示通りにやれない生徒たちが増えている。
 私はこういう生徒たちは大脳前頭前野の機能が未発達だと感じている。我慢ができない、姿勢が悪い、お喋りをとめられない、10分も授業に集中できないという点が共通している。
 小学校に入ったらすぐに家庭学習習慣をつけるべき。そこをクリアできたら、ほうっておいても心配がいらない音読は低学年でお母さんが躾ける。このときに本を読む習慣をつけた生徒は、国語力が強いので学力全般のノビシロが大きい。中学校で学力が伸び、高校でさらに大きく伸びることになる。基本をお母さんがしつけ、塾がさらにスキルを磨いてあげるのが理想ではないか。

 前にも書いたが、小学校高学年で国語辞書を引きながら良質のテキストを選んで音読スキルを上げておくと、中学生になって興味のある分野の小説の濫読期が訪れる。漢和辞典はこの頃から引きなれるのがいいだろう。日本語語彙はこの二つの段階で飛躍的に伸びる。高校生になったら古語辞典を引きながら古典文学書を数冊読んでおけば、高校を卒業してから仕事で必要な分野の専門書を自力で読破できるだろう

 中学校へ入学してから日本語能力をなんとかしよう思ったら、それはたいへんな戦いになる。1年かかってようやく読めない単語が半分になる。相変わらずスムーズには読めぬ。生活習慣との戦いだから厄介だ。お灸をすえたが1週間で8割がた元に戻ってしまった。戦いは当分続く。
 小学校6年間続けたことは習慣となり、習慣は6年間で性格にまでなるきちんとした人格や性格はやはり家庭での躾けが基本であり、幼少期と小学校低学年が基本的な躾けの旬の時期にあたる。躾けそこなってもあきらめてはいけない
 いまからでも遅くないから本は読ませよう。素直な心で地道に努力すれば数年かけて必ず取り返しはつく

 #1843 真っ赤な顔で… :先週の中1英語授業から  Feb. 13, 2012
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 #1829 中1の語彙力の実例 : これでは先生たちの授業も理解できぬ  Feb. 5, 2012 
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コメント 7

Hirosuke

音読をやってこない生徒には、
【ワープロ入力】を宿題にしたらどうでしょうか。

スピードは育ちませんが、
「読み」は育ちます。

「この漢字なんて読むの?」
「それはね、…」
みたいな世代間の会話が誘発されて、
親が音読するでしょう。

また、ワープロで漢字変換する際には、
同音異義語と意味の差異も表示されますから、
同時に語彙力も付きます。

さらに、
この宿題は「カタチ」になりますから、
生徒の「やった感」も充足されて、
音読へと向かわせる補助となるのではないかと。

by Hirosuke (2012-02-05 17:05) 

ebisu

手で書かないと書けるようにはならないでしょうが、一度試してみましょう。読めるようになるだけでも第一ステップとしては成果です。
書いてきても、タイピングしてきてもいいと伝えてみます。
by ebisu (2012-02-05 17:28) 

合格先生

 具体的に読めない漢字が分かって、すごく参考になります。

 自分の方では「今年(いまとし)」「夜間(よるま)」と読んだ子がいましたが、この子は漢字検定の5級に合格していて、学力も高めです。
 状況を確認してみると、漢字検定は5級を最初に受けたようで、テストには対応力が極めて高いのですが、こうした「読書で普通に身につくはず」の漢字の読み書きができていません。
 こういった実情を目の当たりにすると、朝読書がいったいどのような効果を上げているのか? と疑問に思ってしまいます。
 問題は小学校低学年の「漢字の練習方法の指導」と「言葉に関する意識づけ」という事になるのではないか、と思うのですが。
by 合格先生 (2012-02-05 21:28) 

ebisu

合格先生へ

面白いでしょう、日常会話外の書き言葉が読めないのです。句点二つずつ文章を音読していくのですが、これは9人での輪読形式ですから、二人音読の上手な生徒がは言っているので、語彙の少ない生徒はこの3倍くらいの頻度で漢字が読めません。

授業で使われる言葉がかなりの頻度で理解できないから、一生懸命に聴いたって内容に理解ができるはずがないのです。そして読書習慣のない生徒は根気もない場合が多いから、じっとしていられない。姿勢も悪い。

こういう生徒が20%もいたら、中学校の授業はぐちゃぐちゃでしょうね。現に市街化地域の3中学校は授業中先生の声が聞こえないことがショッチュウあるようです。

一番学力の高かった中学校がそうなってから4年目ですが、学力テストの平均点が30点(300点満点)近く落ち、他の2項との差が小さくなりました。
by ebisu (2012-02-05 22:22) 

もやしさんま

昔でいえば中途半端な英語で海外留学した学生が授業についていけない様子が、普通の学校で起こっているような風に聞こえます。声に出して音読なんてできそうにないみたい。
今ってそんなにひどいのですか?すこし唖然、いや、かなり唖然。

by もやしさんま (2012-02-05 22:38) 

ebisu

ええ、日本語能力に関しては簡単な会話が成り立つだけで、書き言葉を交えると意味が通じません。

生徒同士ても先輩たちが「会話成り立たないことがあるでしょう」と心配しています。

中学校3年間ですこしはボキャブラリーが増えるでしょうが、何せ本は読みませんから、小4程度で止まったままでしょう。
高校でもすこしは語彙が増えるでしょうが、読めるレベルで国語辞書も引きませんから意味がわかって運用できる語彙数は2割3割しか増えないでしょうね。
そして社会人になる。上司やお客様のいうことが理解できるとは思えません。
領収書の宛名を書くにも困るでしょうね。

単純労働しか職がないでしょうね。社員採用は夢のまた夢。年収百万円前後の仕事しかないでしょう。
本も読まない生徒はしばしば辛抱力もありませんから単純労働から這い上がることもできないでしょう。

全国最低レベルの北海道、そして14支庁管内で最低レベルの根室の子どもたち。成績下位20%前後の生徒たちの日本語能力は惨憺たるものです。
昔の1が4倍はいます。
教育関係者以外はこういう実態を知らないでしょう。
団塊世代の私が光洋中学生だったころ、1クラス55人でしたが、生徒が私語をして先生の授業が聞こえなかったなどということは一度も記憶にありません。同じ中学校で、授業で先生の声が聞こえないのはいまや日常の出来事です。啓雲も柏陵も同じです。柏陵は4年前からそうなりました。

親が働けるうちはいい、親が退職したら生活保護になる30代がこれから根室に増えていくでしょうね。
ほうっておいたら、町の衰退はいまよりずっと進んでしまいます。20年後人口1.8万人、相変わらず全道14支庁管内最低の学力のままでしょう。
だから、いまがんばるべきです。

市長が委員を任命した高校問題検討委員会が高校統廃合を議論していますがナンセンスです。
教育問題は市民に閉鎖的な委員会で議論してはいけません。町の未来がかかっています。

市民が教育問題に関心をもたない限り、全国最低レベルの根室の子どもたちの学力は、さらに底が抜けたように下がり続けるでしょう。
とんでもないことです。

by ebisu (2012-02-05 23:39) 

ebisu

これほど中学生の日本語能力が劣化しているのに、4月から小学校で英語が必修になります。
成績下位層(20%)の子どもたちの日本語能力の劣化は救いようがなくなります。10年くらいのうちに20%が30%に膨らんでしまわなければよいのですが、危ないでしょうね。
小学校での英語教育なんてやめて、良質のテキストを選んで音読トレーニングを実施してほしい。
論語の素読を小学低学年から実施すべきです。
by ebisu (2012-02-05 23:47) 

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