SSブログ

#1663 国に精神科7万ベッド削減計画あり:老人医療の崩壊 Sep. 26, 2011 [34. 終末期に係わる問題]

  涼しくなった。このところ体力が落ち、体調が優れないので、気晴らしに4kmほどサイクリングしてみた。これくらいなら疲れるということもなく、冷たい秋風が気持ちいい。

 今回採り上げる記事は、高校生用の時事英語教材ではあるが、終末期医療に係わる問題のカテゴリーに分類したい。
 ニュースの配信元は国際金融機関のブルームバーグであり、日本のマスコミの取材記事ではない。この問題に関しては日本のマスコミが採り上げる機会はほとんどなく、どういうわけか日本のマスコミが沈黙している中で財務省や厚生労働省の医療費削減計画がどんどん実行されているように見える。"政治主導"を声高に政権与党が言っていたが、ことこの問題に関しては"政治主導"の影も見えないくらいに完璧な"官僚主導"でことが進められてきたし、今後もそういう予定であるらしい。先月まで財務大臣をやって官僚に操られていた野田佳彦新総理はこの問題には"正心誠意"取り組むつもりがないようだ。2000年から着々と進められてきた政策だから、野田新総理だけを責められぬ、小泉さんを含めた歴代総理大臣の7人全員が政治家として責を負うべき問題なのだろう。
 見出しは次のようになっている。

"70,000 psychiartric patients may be released to save money "
 (医療費削減のために精神科の患者が7万人退院させられるかもしれない)

 介護療養病床13万ベッドが今年度一杯で廃止されるのに加えて、来年度末で医療療養型病床が10万減床される。そして、ジャパンタイムズ紙のこの記事によれば、精神病院が7万減床されることになるようである(療養型病床の23万ベッド削減は来年完成するから、次の焦点は精神科の7万ベッド削減である)。
 25施設を選び3~5年間に10%のベッド削減を行うのだが、"a trial program"とあるから、trialではなくて、本番のanother programが予定されているという風にも読める。トライアルが終われば、全国に拡大するのだろう。
 2009年の調査では精神病院合計で348,121ベッドある。

 精神病院には行き場を失ったお年寄りの入院が多いから、療養型の廃止や減床と合わせて、おおよそ30万ベッドが老人医療から消えることになる。認知症で徘徊が始まった老人の自宅介護は介護する側も疲れ切るし、精神的にも追い詰められるものだ。やった人でなければ理解しがたいかもしれない。

 1990年には12%だった老人人口は、2025年には33%に跳ね上がる政権が変わったにも関わらず、わずか15年間で、高齢化が急速に進んでいる日本から老人の入院治療のためのベッドが30万も減らされつつあることを、マスコミも国会議員も政党もほとんど採り上げないのはどうしたことか?これほど完全な官僚主導が他にあるのだろうか?

 この記事にも数字を挙げて書いてあるが、ベッドの削減は医療費抑制が狙いである。国は70,000ベッド削減することで、精神病院の入院治療費全体を1.8兆円に抑えるつもりだ。
"Her hope mirrors that of the government, which wants to empty 70,000 beds to reduce the highest rate of psychiatric hospitalization among developed nations, lowering its ¥1.8 trillion annual mental-health payments."

 人口推計によれば2025年には国民の三人に一人が老人である、高齢化が急速に進む中で日本の老人医療はこれでいいのだろうか?年老いて終末期の入院医療が必要になっても多くの老人たちに入るべき施設がないということになる。私には明白な棄民政策にみえる

-----------------------------------------------------

Wednesday, Sep. 21, 2011

70,000 psychiatric patients may be released to save money

Bloomberg

In the hallway of St. Pierre Psychiatric Hospital in Takasaki, Gunma Prefecture, an elderly woman sits on the floor next to a bulging brown duffle bag, her arms wrapped around her knees, mumbling about being taken home.
・・・・・
  Her hope mirrors that of the government, which wants to empty 70,000 beds to reduce the highest rate of psychiatric hospitalization among developed nations, lowering its ¥1.8 trillion annual mental-health payments. Facing the world's largest public debt and the fastest aging society, Prime Minister Yoshihiko Noda is trying to curtail growth in the overall ¥34.8 trillion annual health bill.・・・・・以下省略

 残りは次のURLをクリックしてダウンロードして読んでください。
http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/nn20110921n2.html


-----------------------------------------------------

 日本の精神病院への患者一人当たりの平均入院期間は307日、比較対象のために米国は1週間、英国は11週間であるという数字が挙げられている。
 精神病院の88%は個人所有の病院である。ベッドが減らされたら老人たちはどこへ行けばよいのだろう?患者たちはなすすべがないと522ベッドの精神病院の医師が心配している。この国の老人医療は政権が変わっても政治主導などさらさらなく、財務官僚や厚生労働官僚の思惑どおりに崩壊しつつある。

 国のこのような政策に対して、急速に老人人口割合が高まっている地域老人医療は全国いたるところで崩壊の現実に直面せざるを得ない。全国の市町村は筵旗を立てて国と対峙しなければならぬと私は考える。全国の市町村会議員は各々の地域の老人医療問題を採り上げるべきではないのか?

 一方で国の財政はとっくに破綻しているから、老人医療費抑制という現実の問題がある。老人医療費を低く抑えながら、老人をケアする現実的な具体策が提案されなければならない。
 
それは他方で他の歳出カットも同時に要求するものだ。民主党は公務員人件費の2割削減を公約して政権を手に入れたが、支持団体に官公労があるからこの問題に及び腰である。
  東北大震災でも官民格差の大きさがあらわになっている。震災後の職の有無、死亡の場合の保証を比べてみたらわかる。年金、退職金、住宅などの公務員の特権的な待遇はすべて撤廃し、民間並みにするしかないだろう。いずれそういう世の中になる。
 老人医療のあり方や歳出削減、1000兆円近くに積みあがった国の借金の返し方、それらの困難な諸問題についてはブログで具体的な案を書いていくつもりだ。
 日本は数千年に一度のパラダイムシフトの時代に突入しているのではないだろうか。急速に高齢化しつつある社会は、死生観や日常生活の価値観の転換を迫っているように私は感じる。
 高齢化と漸次的な人口減少は縄文時代から1万2千年の歴史を見てもはじめて経験する事態であるから、日本的の伝統的な価値観を見直す作業になるのかもしれぬ。
 

 看護師希望の高校生にぜひ読んで、そして考えてもらいたい記事である。
 いずれはあなたたちの世代の親の終末期医療の問題となり、医療現場で将来あなたが直面するかもしれない問題なのだから。

---------------------------------------------

*#1650 終末期に係わる問題(2):療養病床削減の暴挙 Sep. 18, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-09-18

【老人医療ニーズに逆行の暴挙】
 その後国は方針を転換する。介護保険適用の介護療養型の病床群13万ベッドを2011年度を期限として全廃するのである。2012年度を期限として医療保険適用の医療療養型も25万ベッドから15万ベッドに減らすことが決まっている。
 この10年間で日本の老人医療は大きく変わりつつあり、甚大な影響が予測されるのだが、どれほどの国民が承知しているのかこころもとない

-------------------------------------------------

にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 根室情報へ
にほんブログ村



nice!(2)  コメント(4)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 4

Hirosuke

老人だけの問題ではありません。

僕が入院した所は、僕より若い人が殆どでした。
by Hirosuke (2011-09-26 20:28) 

ここ

私の妹は、若い頃、くも膜下出血で右半身マヒ、1年もしないうちに統合失調症を併発。今は、授産施設に席を置いていますが、一昨年度、国の政策により障害者を町で働いてもらおうということで、妹も施設を出されました。
結局、半年足らずで統合失調症の薬の管理が全くできず、入院、働き口も失いました。
施設長は、何の手立てもせず、すぐ施設に頼るのかと怒鳴り散らしていましたが、私たちは、その施設の管理運営の方がそっと妹のことをきずかい、何度も訪ねてくれたこと、役所の方が民間ヘルパーさんをつけてくてたこと、最低でも週4,5回は様子を見に来て食ていたことを、施設長に話しましたが、生ぬるいところから上がってきた天下り施設長には、何一つ通じませんでした。
唯一、お世話下さった施設の管理運営の方が、保護者の生の声が聴けて良かったです。とお声掛け下さったのが救いでした。
妹が施設を出る前に施設長が、「動けるものは、どんどん外へ出て働け!!」と言っていたのが、未だに腹立たしいです。

話がずれていたら、すみません。
by ここ (2011-09-26 21:31) 

ebisu

Hirosukeさんへ

たしかに老人だけの問題ではありませんね。精神科の病院にはいろいろな病を抱えた様々な年齢の方が入院しています。
国の方針はそうした患者さんを地域社会へ戻すというものです。

by ebisu (2011-09-26 22:38) 

ebisu

ここさんへ

いろんな方が実例を具体的に書いてくれると他の人の参考になるかもしれません。
コメントありがとう。
by ebisu (2011-09-26 22:40) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0