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#1650 終末期に係わる問題(2):療養病床削減の暴挙 Sep. 18, 2011 [34. 終末期に係わる問題]

【特例許可老人病院から療養型病院への転換:1990年代】
 1990年代後半に旧特例許可老人病院が介護型療養病床と医療型療養病床に分かれた。この時期に私はある特例許可老人病院を新基準に適合する病棟建物を建築するための仕事をしたことがある(神奈川県下の276ベッドの病院で、転換建設補助金約10億円で病院は2001年に竣工した。特例許可老人病院と療養型病院、ビフォー・アフターを比べてみると、スタッフの顔も患者の表情も明るいものに変わっていた。ゆったりと満足なケアができるからだろう)。

【老人医療ニーズに逆行の暴挙】
 その後国は方針を転換する。介護保険適用の介護療養型の病床群13万ベッドを2011年度を期限として全廃するのである。2012年度を期限として医療保険適用の医療療養型も25万ベッドから15万ベッドに減らすことが決まっている。
 この10年間で日本の老人医療は大きく変わりつつあり、甚大な影響が予測されるのだが、どれほどの国民が承知しているのかこころもとない

【政権が変わっても一向に見直されぬ老人医療】
 これは自公政権時代に決まったが、民主党政権になってもさっぱり見直しがされぬ。"政治主導"と民主党はいうが実際には官僚に任せっぱなしで仕事ができないことは療養病床の問題一つとってもわかる。官僚の力を侮ってはならぬ、政治の力に比べて圧倒的に強いのである。
 かくして高齢化社会の医療ニーズに逆行する医療政策の見直しすらできぬ現実がある。国民が異を唱えないとこのように官僚主導で国の医療が荒廃していく

【医療費抑制が狙いだった】
 補助金(アメ)を出してまで特例許可老人病院から介護保険適用・介護型療養病床や医療保険適用の医療療養型病床へ転換を勧めておきながら、これらの病床を全廃や40%削減(ムチ)を進める矛盾はなぜだろう。
 高齢化社会で老人人口は急速に増えている。そうした中で老人医療の中核とも言える部分がごっそりなくなるような医療政策を厚生労働省が躍起になって進めるのには理由がある。膨れ上がる医療費の削減が狙いであったのだろう。
 老人人口の急増するなかで老人医療の病院を減らせばどういうことになるかはハッキリしている。医療難民が急増することになる。
 介護療養型13万ベッドはどうなるか。経営上精神科病院へ転換するところが多いだろう。精神科へ転換できないところは廃業である。一般病院への転換はほとんど無理だ。たとえば、300ベッドの総合病院を考えてみると診療科ごとの専門医を30人程度はそろえなくてはならぬ。医者の確保ができるはずがない。

 こうしてこの十年くらいで介護療養型の病院が廃業し、患者は精神科の病院へ流れた。

【市立根室病院職員の危機感】 
 わが町を見ても75ベッドの療養病床の病院が数年前に廃業してからその機能を代替する医療機関がない。建て替え中の市立根室病院にも、ニーズが高いにも関わらず医療療養型病床は1ベッドもない。かくして精神科の2病院200ベッドが老人で満床状態となっている。
 市立根室病院で建て替え前に職員アンケートを実施したが、病院職員の間では医療療養型のベッドがないことへの危機感が強い。市立病院に医療療養型病棟を設置すべきだと言う意見は医療サイドにこそ強い

【全道35市で最低レベルの老人医療の汚名返上】
 市民は親の介護でそうした現実にぶつかるまでわからない人が多いのではないだろうか。認知症の老人を介護できるのはグループホーム(18ベッド)1箇所のみである。あと、特別養護老人ホームがあるが、全国どこの地域でも入所希望者の"待ち行列"ができている。
 入院治療が必要になれば老健施設やグループホームではケアできないのだが、療養病床は根室にはないから中標津や厚岸や釧路の療養型医療施設を頼らざるを得ないが、稼働率は90%を超えているだろうからいつまでも他地域の医療施設を当てにはできないだろう根室の老人は根室で介護すべきなのである全道で療養病床のない市は根室以外にあるのだろうか?おそらく根室は全道一老人医療が貧困な町である。こういう汚名は返上したいものだ
  市民意識調査アンケートの結果を見ると、根室に住んでいくないと思う人の割合が中標津に比べてずっと多い(住み続けたくない人43%)。

*2009年6月の根室青年会議所による「市民意識アンケート調査」
 
http://ameblo.jp/nemurojc-b/entry-10283985445.html


【住みよいまちづくりと地域医療問題】
 住みよいまちづくりをするとか、マチの活性化を図るためにはわたしたちは何をなすべきなのだろう?
 住みよいマチづくりは全道14支庁最低の学力水準を変えるとか、療養型病床を100ベッド新病院で確保するとか、将来を見据えた地道な努力を一つ一つ重ねることでしかなしえないものなのではないだろうか
。イベントを何百回繰り返したってこうした問題の解決にはならぬことは明らかなのだが、根室はイベント好きで、将来を見据えた地道な努力の嫌いな者たちの多い町である。だが、こうした旧弊も気がつく人が増えていけばいつかは変わる。

【精神科病棟と療養病棟の居住性比較】
 一般病床も療養病床も建て替えをすると新基準(6.4㎡/患者)が適用されるので広くて居住性がいいが、古い病院は旧基準で作られているために狭い。長期療養する患者のことを考えると居住性やプライバシーなどの点から、患者満足度は低いものとならざるを得ない。
 2000年以降に建てられた療養型病棟を見たことがない人には理解しがたいことなのかもしれない。医療行政に関わる人や市議はぜひ近隣のこれらの施設を訪問して自分の目で見て自分の頭で根室の老人医療がどうあるべきかについて考えてもらいたい。お風呂一つをとっても比べものにならぬ。いくつになってもお風呂は気持ちのよいもの。
(1年後には市立病院建て替えが終わっているだろうから、スペースの点については比べられる)

【医療コストは減ったのか?】
 介護療養病床13万ベッドを全廃して医療コストはどうなったか?患者の多くは精神科の病院へ移った。ケースによっては病院の標榜科目が変わっただけで同じベッドで療養している老人が多いだろう。精神科の患者入院単価は療養型と変わらないのではないだろうか。つまり、厚生労働省の狙いであった医療費削減はできなかったということ。民間病院は何が何でも生き残るために智慧を絞る。それで医者や看護師やヘルパーさんの雇用も守られているのだ。
(医療療養型病床はほぼ55万円/月の医療費がかかる。保険で補填されるので3割負担として16万円(保険適用分)+α(保険外自己負担分)≒20万円/月である)

【次回への予告:"コミュニケーション"】
 医療療養型病院のドクターが具体的な情報をコメント欄へ書き込んでくれているので、次回に紹介したい。
 医者や看護師さんやヘルパーさんがどのようなリスクを抱えて仕事をしているのか理解すれば、家族の介護をお願いするときにどういうリスクが現実にあるのか、相手の立場や仕事を理解した上で預けられる。
 医療施設を利用する患者家族も医療施設や医師や看護師さんたちの仕事の理解と彼ら・彼女たちとのコミュニケーションが必要と感じる。ターミナルケアは一般病棟とは相当に異なる、そこを理解したいと思う。


*「#1638 終末期に係わる問題(1):介護の現実」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-09-05

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根室はこれからどうなるの?

ここ一年で根室を去って行った先生達のその後をネットで検索して追跡してみてよ!どの先生もそれぞれ充実されてるみたい。それってさ、何か悔しいし腹立たしくない?
by 根室はこれからどうなるの? (2011-09-19 23:39) 

ebisu

"根室はこれからどうなるの?"さんへ

ここ1年で根室を去った先生たちが充実した人生を送っているなら、とっても喜ばしいことではありませんか。
人の幸福は素直に喜びましょう。
そのうえでどうしたらいいか一緒に考えようではありませんか。

いい医師は早々にお辞めになり、腕のよろしくない医師が残るというような評判が立つようでは長居したくなくなるのは当たり前かもしれません。

それにしても、意のある医師を根室市はずいぶんと粗末に扱ってきたのではないでしょうか?
正直に・誠実にお付き合いしないと、長続きはしませんよ。医師に限らずお付き合いを正直に誠実にやることは普遍的な価値でしょう。根室市は基本的なところで考え違いを繰り返し、ドクターたちに信用まるでなしのようです。狭い業界ですから悪い噂が繰り返し流れるようではダメですね。誰とは言いませんが事務長そして市長や副市長が心を入れ替えるしかないのでしょう。根室市は筋を通しきちんとしていると思われるようになることです。

市立根室病院の医師たちが来年3月末まで何人もお辞めになる「噂」がマチに流れています。あえて個人名は書きませんが、病院建て替えがすむ頃に現在いる常勤医の先生たちの何人が残っているのでしょう?
わたしも大いに心配です。
by ebisu (2011-09-20 00:03) 

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