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#1444 検証(1)「千年に一度の地震・津波」 Mar.25, 2011 [13. 東日本大震災&福島原発事故]

 千年に一度の地震、津波だから「防ぎようがなかった」「想定外」だったと原発関係者や一部の学者が主張しているが、本当だろうか?

 講演会ビデオ「福島原発で何が起きているのか」を見ると、反原発派の論客広瀬隆はこれから持ち上がる損害賠償訴訟で東電が潰れることを恐れて「不可抗力=政府による補償」という構図が見てとれるという。かれは二つの点からマスコミと学者および専門家たちを批判している。

 論点の一つは計算方式の変更により、如何にも千年に一度というような脚色がなされているが、旧計算方式で比べれば巨大地震には違いないが千年に十数回起きる程度の地震である。
 もう一つは、具体的な事例の提示である。明治29年の三陸沖地震M8.2~8.5、津波の高さ38㍍を挙げている。「千年に一度」という政府や原子力保安院、原発推進派の専門家たちへの反論である。反例を一つ挙げることで「千年に一度の地震・津波」というマスコミ情報がインチキであることを論証した。これは数学的に見ても議論の余地のない反証である。

 (4月から高校2年生になる根室高校普通科の生徒たちは数A「論理」の章をやったばかりだから、広瀬氏の論の数学的な正しさを確認できるだろう。マスコミがこぞってインチキ情報を流していることも理解できる。学習したことはこのように現実に応用できるものだ。数学はたいへん役に立たつのである。世の中の「似非専門家」にごまかされないために、数A「論理」で武装しよう。
 ニュースキャスターたちは高校1年の数Aすら身につけられなかったようで、テレビを見ていてその議論の好い加減さに情けなくなる。
 あえて青臭いことを言おう。高校時代は一心不乱に勉強せよ、役に立たない勉強はないぞ。)

 一つはマグニチュードの計算方法変更がなされたということ。今回の地震からなぜかモーメントマグニチュードが採用され、従来よりも「インフレ」の数値になっており、従来方式に換算するとM9.0はM8.3ないしはM8.4だという。巨大地震には違いないが、M8.4とM9.0ではエネルギー比では1:4も異なる。

 今回の地震から計算方式を変更したのではなく、調べてみたら気象庁は2003年にモ-メントマグニチュードに計算方式を変更している。この方式で1960年に起きたチリ地震を計算しなおすとM9.5になるとウィキぺディアに例示してある。
 根室人には記憶に新しい1994年10月4日北海道東方沖地震は旧計算方式でM8.2であるからおおよそM8.8だろう。今回の東北関東大地震の半分のエネルギーだ

 講演会の中で広瀬氏は三陸大津波の38㍍に言及しているが、これは明治29年(1896年)のM8.5の三陸沖地震時に起きている。津波の高さから考えても今回の東北関東大地震よりエネルギーが大きいと推定される。
 防災計画の一例を挙げよう。今回の津波は南三陸町で13~14㍍あったようだ。町長が防災拠点のビルの屋上の手すりにつかまり九死に一生を得た。同じ建物で40人のうち助かったのは10名のみ。海岸から600㍍地点のこの建物が13㍍だ。津波の最大高はおおよそ20㍍程度とみられている。今後、こういうデータを整理・収集して海岸から何㍍のところで津波高何㍍というデータを保存すべきだろう。

 1896年の三陸沖地震はM8.5であるから、同じスケールで計算すると今回の東北関東大地震よりもマグニチュードが大きい。津波の高さはおおよそ2倍近くもあったのである。

*2003年のマグニチュード計算方式の変更に関する情報(ウィキぺディアより)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8B%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%89

*北海道東方沖地震(ウィキペディアより)
 1994年の根室のM8.2大地震だけでなく「1850年以後に発生した日本の主な大地震・被害地震」の中に「明治三陸」のデータが出てくる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%B5%B7%E9%81%93%E6%9D%B1%E6%96%B9%E6%B2%96%E5%9C%B0%E9%9C%87#cite_note-0

*明治三陸地震(ウィキペディアより)
 観測史上最高の津波38.2㍍を記録している。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E%E6%B2%BB%E4%B8%89%E9%99%B8%E5%9C%B0%E9%9C%87

 【結論】
 112年前に今回の東北関東大地震よりもエネルギーの大きな地震があった。その津波の高さは38.2㍍である。
 南三陸町長がテレビで先ほど「われわれが防災計画で想定していた津波は宮城県沖地震の6.5㍍だった」と語っている。
 20㍍の津波は百年に一度の大地震を考えると当然想定できたはずだが、町の防災計画が甘かったのだ。いろんな公共事業にお金を使い、肝心の防波堤作りにはお金が回らなかったのだろう。原発の地震や津波対策も南三陸町と大同小異と言うべきだろう。「原発は安全」と言い続けた「専門家たち」はこの程度の防災意識で「絶対安全」と言っていたのだ。そういう者たちがテレビでいまだに「この程度の放射能汚染は人体に影響がない」と言い続けている。いったいどういう神経をしているのだろう?
(生徒たちにはいくら勉強して社会的地位を得てもこういう不正直な大人にはなるなと説明しようと思う。職を辞すことになっても正直に本当のことが語れる大人になって欲しい。)

 さて、福島1号原発の防波堤を軽々と津波が越え、燃料貯蔵タンクを押し流してディーゼル発電設備が機能しなくなった。それが事故のそもそもの始まりである。NHKを含むマスコミ、東電、原子力保安院、原子力発電に協力したあるいは関係した「学者」や「専門家」たちがこぞって「千年に一度」といっているが、大嘘であることがはっきりした。だまされてはいけない。
 全国の原発54基はすべて百年に一度の大地震や津波にすら備えのないことがハッキリした。原発推進派の専門家たちは「原発は絶対に安全」と声高に叫んできたが、地震や津波対策はこれほど杜撰だったということだ(杜撰だったのはじつは防災計画だけではない)。このことは北海道の泊原発にも他の全国の54基の原発すべてに言えることだ。さらに言えば、全国の54基の原発すべてが巨大地震があったときには福島1号原発と似たような事故がおきかねないということだ。今回の震災に慌てて防波堤のかさ上げを発表した原発が一つだけある。

 日本列島は北米プレート、ユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートの接合部分に載っているから、全国いたるところ巨大地震の可能性がある。つまり、原発には適さない国なのである。54基の原発すべてを廃棄する計画を早急にまとめ、ライフスタイルを変えなければ、いずれ放射能で日本列島は人の住めない場所となり、太平洋の魚は放射能汚染で食べられないものとなるかもしれぬ。青森県六ヶ所村には全国の原発から集められた再処理済み核燃料が3000トンも集積保管されている。巨大地震でこのプールの水が洩れたら、福島1号原発とはおよそ比較にならない被害が日本全国を覆うことになる。六ヶ所村の近くでもいずれ巨大地震は必ず起きる。手を打つ時間がどれほど残されているのか知る者は誰もいない。

 日本人は東北関東大震災を契機に変われるだろうか?経済成長至上主義をやめ、所得をおおよそ半分にし、ライフスタイルを変え、小欲自足の社会へと舵を切らねばならぬ。

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*http://www.ustream.tv/recorded/13509353

緊急報告
   「福島原発で何が起きているのか」

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*気仙沼のある造り酒屋(男山本店)では、仕込んである酒を絞っていた。市民が地酒を残したいと、発電機と軽油、水を提供したから可能になった。倒壊した酒蔵で店主は涙ぐみながら「美味しいというより、ほっとさせる味だな」と語っている。
 悲惨な大震災の中で、こういういい話しが、いたるところで起きている。ここは日本だ。

*27日11:30追記
 朝日テレビ「フロントライン」の取材によれば、宮古の田老地区では明治29年の三陸津波よりも今回のほうが少し高い。高台に明治29年の津波が押し寄せた高さのところに標識が貼り付けてあったがそれを少し越えている。どうやら、地区によっては今回の津波のほうが明治29年の三陸津波の高さを上回ったようだ。大船渡でも明治三陸津波を上回ったことが取材で明らかにされた。
 明治29年の三陸津波が38.2㍍で今回よりも大きいと書いたが、今回のほうが地区によっては1~2m高かったようだ。
 24日に無事戻った国立海上技術大学校の生徒の話によれば、「津波が来ると言うので、4階建ての鉄筋コンクリートの校舎建物にはとどまらず、全員高台へ逃げた」という。一人の犠牲もなかった。

「日本一の防潮堤を過信 岩手・宮古市田老地区「逃げなくても大丈夫」」
2011.3.27 00:08 (1/2ページ)

 「日本一の防潮堤」を過信していた-。過去の津波被害を教訓に、高さ10メートルの防潮堤が整備された岩手県宮古市田老地区。東日本大震災では、大きな津波が防潮堤をあっさりと越えた。市によると、防潮堤を信じた結果、犠牲になった住民は少なくないという。(内海俊彦、平田雄介)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110327/dst11032700080001-n1.htm

*「大津波再来の恐れ、09年に指摘=東電、津波想定に反映せず―審議会で」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110327-00000062-jij-soci

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こっち

逆にやや楽観的な?論文を。yahooニュースとリンクしてるのでもう御覧になられたかもしれませんが。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110323/219112/?P=1

大切なのは、サンプリング数をできるだけ増やして、正直にすべての数値を公表して頂きたいものです。
その先は、個々に考えればいいのだと思います。

by こっち (2011-03-26 10:33) 

ebisu

こっちさんありがとうございます。

放射線医療の専門家のご意見ですね。あまり楽観的ではないようにも読めます。(すでに十分危ないから)「30キロ圏では非難したほうがいい」という発言もありました。(笑い)

なにより、立論の前提が、放射性物質が原子炉格納容器内から洩れていないことのようですが、現実にタービン建屋にまで高濃度汚染が起きています。22、23日のインタビューなので作業員3人の被曝事故の直前だったのではないでしょうか。
その後の状況を踏まえてさらにご意見をお聞きしてみたい気がします。

いずれにせよ、原発関係者(原子力安全保安院も含めて)ではなく、放射線医療に携わる医療サイドからのご意見ですから、本欄で扱うことにします。
by ebisu (2011-03-26 11:01) 

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