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#1303 教育再考 根室の未来 第2部 低学力①:人財育成への不安深刻 Dec.16, 2010 [64. 教育問題]

 昨夜は9時半ころにはマイナス5度になっていた。3時過ぎには道路の日陰の部分が凍結し、交差点で止まって発信するときにタイヤが滑った。寒気が強くなって例年通りホワイトクリスマスになりそうな気配が漂う。

 北海道新聞根室地域版で教育問題シリーズが再開された。前回は高校統廃合シリーズで事前のデッサンがしっかりした秀逸なシリーズだった。今回も5回連載予定、読むのが楽しみである。12月14日の記事から掲載する(残念なことに優れた取材記事でもの根室地域版なので道新オンラインニュースには載らないから、ふるさと根室を離れて住んでいる人たちに読んでもらいたい)。
 二つ併せて10回分の特集記事はふるさと根室の教育を考える上で貴重な財産となるだろう。担当記者に感謝したい。

 教育再考  根室の未来
    第2部 低学力①
    
学テの衝撃
  
人材育成への不安深刻

 1.2㍍を120㌢に変換できない―。別海町の建設会社社長はある新入社員の計算力のなさにがくぜんとした。この社員は小数の計算が苦手で、2けたの引き算もできなかった。社長は「それでも高校を卒業していることに驚く」と首をかしげる。

 
応用問題で顕著
 根室管内では以前から子供の学力低下が危惧されてきたが、2007年に全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が始まり、危機的な現状が浮き彫りになった。
 調査対象になっている小学6年と中学3年の国語、算数(数学)で、管内はいずれも全道平均以下。特に中学生の結果が悪く、根室市教委が11月に発表した本年度の調査結果では、数学の応用問題の正答率が全道と7ポイント離れ「著しく低い」とされた。
 道自体が都道府県で低位にあることを考えると、「根室は全国でも学力が低い地域の一つ」(教育関係者)とさえ言える。

 
社会での影響も
 学力テスト以外の状況も深刻だ。根室市のある中学校の2年では数学のテスト結果を10点刻みに見た場合、0~10点の生徒が最も多く全体の4分の1を占めた。保護者は「この子たちが大人になった時、まちは大変なことになる」と青ざめる。
 学力低下による地域社会への影響は、既に枚挙にいとまがない。就職試験で、根室管内1市4町をすべて答えられない高校3年生は珍しくない。「縦×横×高さ」の計算ができず、直方体状に積んだ発泡スチロールの箱の数を数えられない会社員もいる。
 中標津町の食品会社役員は、若い従業員が話しを聞きながらメモを取らないことが不思議でたまらない。「話の重要な部分を抜粋し、それを文字に落とすことができない」とため息をつく。
 北海道中小企業家同友会根室支部の田嶋靖照幹事長は「就職してから学校の続きをしているようなもの」と現状を嘆く。
 一方、子供たちの意欲の低下を指摘する声もある。

 
意欲まで低下へ
 管内のある高校はかつて、暴言や暴力が毎日のようにあったが、近年は「落ち着いた」と評価されている。ただ、中堅教員は「反発する生徒は、基礎学力が高かった」と打ち明ける。学力低下が、反抗することを含めたものごとを考える力や、意欲まで低下させているというのだ。
 別海町の建設会社社長も、あまりにも学力の低い若者の現状を見て「そもそもやる気があるのか・・・」と思ってしまう。
 地域経済の疲弊にあえぐ根室管内。学力問題と真正面から向き合わなければ、適切な人材行く際できず、地域の"地盤沈下"がますます進みかねない。

 根室管内では、子供の低学力によって、地域社会への深刻な影響も出始めている。第2部は、その実情や背景を掘り下げ、根室の教育のこれからを探る。(5回連載します)

< コメント >
 担当記者氏はいくらか遠慮して書いている様子、隔靴掻痒の感が否めないので3点だけはっきりと補足しておく。
 「道自体が都道府県で低位にある」とは、中学数学A(基礎)では北海道は47都道府県中45位、数学Bでは44位である。高知県がどちらも46位、沖縄県がどちらも47位だから北海道は45位だろう、全国47都道府県でビリから3番目である。その北海道で14支庁管内中最低ランクが根室管内ということになるの。つまり、中学数学に関しては根室管内は全国最低レベルということだ。
 決して「低位」などという甘っちょろい状況ではなく「最低レベル」であるが、新聞記事には書きにくかったのだろう。かくして、婉曲表現になった次第と察する。

 「根室市のある中学校の2年では数学のテスト結果を10点刻みに見た場合、0~10点の生徒が最も多く全体の4分の1を占めた」―10点以下は27%で、残念ながらこの中学校は私の母校である。根室で一番伝統のある中学校だが、毎日のように授業をサボって体育館周辺でタバコを吸う生徒を見かける。授業も騒がしくて聞こえないことがあるようだから、当然の結果かもしれない。
 (強い先生が自分の授業で締め付ければ締め付けるほど、弱い先生のときに生徒は騒ぎ授業は聞こえない。荒れる学校はどこも似たような症状を呈するようだ。一番学力の高かった中学校すら、二クラスのうち一クラスは数名の騒ぐ生徒のために授業崩壊を起こし、生徒の平均点が他の学校並みに下がってしまった。
 授業を聞けない理由は三つある。一つは補習をやらないから授業内容が理解できないこと、二つ目は親のしつけができていないこと、三つ目は嫌いなことでもやらなければならないことをやり遂げる「辛抱力」「我慢力」のないこと。父さん母さん、じっちゃんばあちゃん、甘やかしすぎだよ。何でも買い与えていると子供や孫がダメな人間に育つ、ちょっとは不自由させよう。) 
 他の2校では得点10%以下は3~5%に過ぎない。だが、30%以下(高校では赤点)になるとどの学校もおしなべて半数を超えてしまう。驚くなかれ、5段階評価で成績1が半数以上いるということ。お父さんやお母さん、じいちゃんばあちゃんの時代とは大違いだ。どうしてこれほど学力が下がって歯止めがかからないのか?理由は「教育問題」カテゴリーで何十回となく採り上げているので興味のわいた人はこの機会に過去ログを片っ端から読んで欲しい。

 「学力低下が、反抗することを含めたものごとを考える力や、意欲まで低下させている」―その通りだと思う。高校生ですら宿題をたくさん出さないと勉強しない。自主的に学習するという習慣のない生徒が大半である。こういう生徒たちは「言われなければやらない」社会人となるだろう。典型的な指示待ち人間である。社会が必要としているのは、自分で問題を発見し、考え抜く力をもった人材である。
 見てみるがいい、市議会は共産党を除いた全員が与党化している。市が招聘したコンサルタントの提言25~30億円での市立根室病院建て替えを無視した62億円の総事業費でH市長は建て替えを強行しつつあるが、市議は共産党を除き誰一人反対した者がいない。
 「反抗」「批判」ができないのは中学生だけではない、根室の大人が「学力低下」でとっくにそういう「意欲まで低下」した状態になっている。とくに地元経済界がひどい。批判精神を失い市政に迎合して根室の町にさらなる衰退を招来している。

 学習意欲が高くそれゆえ学力の高いごく一部の者たちは大学へ進学しほとんど地元へ戻らない。根室の地域経済や市政を担うのはまれに「中の上クラス」、現実は中の中クラス以下の凡庸な人材が居並ぶことになってしまう。そういう状況が40年以上続いてきたから、地域経済が疲弊するのは当然だ。根室が衰退していくのは北方領土が返ってこないからではなく、人材が枯渇した結果だというのが真実だろう。

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*◎は高校統廃合について論じた記事、無印は関連記事である。

 #1307 教育再考 根室の未来 第2部 低学力④:荒れる中学校
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19-1

 #1305 根室高 資格取得で成果:5科目1級取得者はK君
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-17-1

 #1306 教育再考 根室の未来 第2部 低学力③:若手多く指導に苦戦も
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19

  #1304 教育再考 根室の未来 第2部 低学力②:「学ぶ意味」尊重されず 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-17

  ◎#1253 教育再考 根室の未来(5):第1部⑤高校統廃合(北海道新聞)
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-24

  ◎#1251 教育再考 根室の未来(4):第1部④高校統廃合(北海道新聞) 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-22

 ◎#1250 「教育再考 根室の未来(3):第1部③高校統廃合(北海道新聞)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-21

 ◎#1249 「教育再考 根室の未来(2):第1部②高校統廃合(北海道新聞)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-20

 ◎#1248 「教育再考 根室の未来(1):第1部①高校統廃合(北海道新聞)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19

 #1152 「教育における投資対効果を考える」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-08

 #1127 「限度を超えた部活動の実例(釧路)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-23

 #1125 「公教育の充実へ予算を増強して」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-21

 ◎#1124 「高校2校体制を5年延長する現実的な提案」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-20

 ◎#1122 「高校統廃合問題:商業科と事務情報科は歴史的使命を終えたのでは?」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-19

 #1119 「地域経済と地域医療を支えるために:学力向上への提案(釧路商工会議所青年部で行われた講演会から)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-18

 ◎#1113 「道教委による公立高配置計画説明会(7/13)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-15

 ◎#1111 「根室の高校統廃合問題について「異見」あり(1)」
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-14 


 
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コメント 2

ZAPPER

この記者さん、実にたいしたものですね!

「学力が低すぎて、ワルにもなれない」というのは私の持論でもあります。ブログにすら一度も書いたことがありませんが…

同じくブログに書けないことが、「若い娘の惨状」でしょうか。街に飲みに出かけると、スナックは20代前半の若い娘だらけです。ほぼ全員がバツありの子持ちです。また、デリヘルが急増していて、多くの若い娘が登録していると聞き及びます。

基礎学力の低下はそこにまで大きな影響を与えているのですが…
by ZAPPER (2010-12-16 12:14) 

ebisu

ZAPPERさん:

学力低下が止まらないから、バツイチの若いお母さんたちもデリヘル嬢も増えますね。
それにしてもたくましい、女の生命力を感じます。
社会人となったら自立して喰っていかなくてはならない。
学力なんかなくてもそれなりに生きてはいける。

男より女はよほどたくましく生命力に満ち溢れ、水のような柔軟性を持ち合わせている。環境に合わせてどのような形にもなる。男は女にかないません。

でも、一生のうちで勉学三昧が許されている期間は有効に使ってほしい。
中学と高校時代の6年間は一心不乱に勉強して欲しいと思うのです。
勉強三昧が可能な中高生時代は人生の中ですごく贅沢な時間です。
その贅沢な時間を味わいつくした人には全然別の人生が待っています。
by ebisu (2010-12-17 00:45) 

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