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#1265 建て替え顛末記(2):62億円のうち29.9億円の予算が市議会を通過 Nov.1, 2010 [33. 地域医療改革の烽火]

【事前に知らされなかった議案】
 第3回定例市議会が終了した。公称62億円の総事業費のうち29.9億円の病院建て替え予算案が提出されることはまったく知らなかった。どうしたわけだろう、こういう重要な議案を事前に市議へ通告しなかったはずがない。市議から知らされていた、あるいは知っていた一般市民は何人いるのだろうか?私がよくみている市議のブログでも事前のアナウンスはなかった。不思議だ。
  出し抜かれたのかもしれぬ、間抜けな話だ。これでもうとめられなくなった。躊躇していた「切り札」も切るタイミングをなくした。地域医療を崩壊させかねないから、これはこれでいいのだろう。私は躊躇したが、H市長はためらいもせずに「地域医療崩壊の切り札」を切ってしまった。
 市長が言うように老健施設のベッド数を増やしても、認知症の老人や医療が必要な老人の受け皿にはなりえない3年前から全国にも稀な「療養病床ゼロの市」に根室はなっているが、これで市立病院に療養病棟を設置する可能性がなくなる
 地域医療協議会は市立病院に療養病棟を設けるべきだと提言していたが、それも無視した。H市長はどういうわけか自ら招聘した病院コンサルタントの意見も地域医療協議会の意見も無視し続けている。専門家の意見を聞かず、2倍の予算でひたすら暴走する。その背後にはいったいどういう理由があるのだろう?
 終末医療を担当する療養病棟がなければ、年老いて病を得、ふるさとを離れざるを得ない人がますます増え、家族に看取られずに亡くなっていく。これがH市長の言う「根室再興プラン」の中身だ
 コストカットをせず、経営改善プランのない建て替え強硬は一般会計で補填できないほどに実質赤字を膨らませ、市立根室病院経営を破綻へと誘うことになるだろう
 市議全員が賛成したのだろうから、根室の選択である。市民には危惧をもつ者が増えているが、市議の意識と市民の意識には市議定数削減問題と同様の大きなギャップがあるということだ。
 根室の地域医療を崩壊させかねない議案に一人も反対の市議がいなかったことが、根室の劣化を現している


【要望書と建て替え予算議案賛成の矛盾】
 9月30日に3人の市議がH市長へ「要望書」を提出していたが、回答はなかった。それどころか建て替え後の病院収支見通しも市民説明会開催も、市議会でH市長は明確に否定した。
 それにも関わらず、3名の市議は賛成にまわり、議案は満場一致で可決されたようだ。一人は手間を惜しまず分かりやすい分析資料を作成、公表してくれていただけに残念である。
 私は3名の市議を責めているのではない、よく公開要望書を出してくれたと思う。根室の市政では歴史上なかった、その勇気は褒め称えたい。ただ最後の賛成票は残念であるとしかいいようがない

【増大するリスク】
 今年度14億円、来年度は15億円をゆうに超える実質赤字を穴埋めするためにいろんなところへひずみが出るだろう。これは建て替え後増える赤字を含んでいない金額である。一般会計に余裕資金などない。市側は実質赤字補填の財源すら示すことができなかった
  報・連・相さえ欠くような拙劣な折衝によって大学医局の信頼を失いつつあるから、医師確保には暗雲が漂っている。H市長の答弁は肝心のところが語尾がハッキリせずゴモゴモと聞き取りにくかったが、取りざたされた産科医は赴任を取りやめたようだ。外科医の補充もその後情報が途絶えている。H院長が単独で動いたという以上の市長の言及はなかった。3月末までに退職が噂される医師は他に複数いる。そして大学医局との信頼関係は拙劣な交渉で切れ掛かっている。
 このままでは4月以降病院経営はさらに悪化し、年額16億円超の実質赤字ペースに陥りかねない
 一般会計で実質赤字を穴埋めできなくなれば病院経営は行き詰る。市財政が破綻する前に病院経営が破綻するリスクすらでてきた

【「天」の声】
 三人の市議の話しをしていたら、女房曰く
「このまちで信念貫いたら生きていけないでしょ」

 
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cccpcamera

お久しぶりです。
スラブ研究センターレポートに、根室は北方4島医療を担う拠点病院構想を立てているとの話があります。
http://src-home.slav.hokudai.ac.jp/publictn/report/20081226-j.pdf

『こうした状況を打開するため、何とか北方領土問題の解決と結びつけて事業を動かしたい。
例えば、北方領土への人道支援の中で、ロシア人がビザなし交流で来たとき、そこで健康診断をやる。健康診断をして、帰るときに医者が彼らに健康づくりのアドバイスをする。このようなやり方です。今年から始めたものとして、北方四島の医者専門家研修です。北方四島の医療事情も厳しい状況です。北方四島の医師など病院の専門家を呼んで、根室で医療研修事業をやる。四島交流事業の枠内で行っていますが、これは意識的にやっています。将来に向けて展開したいからです。』

今のままでは、根室はじり貧なので、何らかの事業が必要で、それには4島交流以外にないのでしょう。それには「療養病棟」は不要です。根室市は、病院建て替えと4島交流の関係を、どのように説明しているのでしょうか?
by cccpcamera (2010-11-01 15:35) 

ebisu

cccpcameraさんへ:

ほんとうに久しぶりですね。
今日はメドベージェフが国後を訪問しましたね。
根室は100人ほどがどこかでシュプレヒコールをしていたようです。テレビニュースで先ほど見ました。
北方拠点病院という考えがあることは知っていますが、病院建て替えと関連付けて説明されたことがあるのかないのか定かではありません。市長が市議会で答弁の際に、「北方領土拠点病院・・・ゴニョゴニョ」と言ったかもしれません。何しろ語尾のハッキリしない人ですから。
補助金がそこから出るという話しはありません。せいぜいが「交流」のために、ロシア人にタダで検診をやってあげたり、治療してあげるくらいなことでしょう。根室の病院は135ベッドに縮小です。規模としては小規模病院です。とても研修などできるレベルの病院ではありません。ある程度の診療科を備えた大病院でなければ、専門医の研修などできるはずもありません。医療を知らない人の妄想だと思います。

拠点病院で外務省から予算を引いてくるとかいうことは過去にあったのかもしれませんが、今はないでしょう。基本計画にそういう事項は入っていないようです。

拠点も何も、研修センターにするにはある程度のレベルの医者が必要です。8月末に16人いた常勤医が4月以降は12人になるのか10人になるのか、先は濃い霧に包まれまったく見えません。
研修センターにするなら北大の関与は絶対でしょうが、市の幹部が北大へ行って「札医大に・・・」云々と言ってしまい、その後小児科医をおいてサポートしてもらっているにも関わらず、相談もなく産婦人科医を招聘し産科病棟を再開すると告げて関係が切れ掛かっています。常勤医一人と出張医一人の計2名を派遣していただいていますが、当方の市長・事務長の不始末で月単位で派遣見直しの状態です。

北方領土拠点病院の構想はわかりますが、根室は医療崩壊の様相をきたしています。それどころではないでしょう。
建て替えたとたんに医師不足で閉鎖病棟がでるかもしれない状況です。
病院事業の実質赤字は昨年度11.7億円と最高額を記録し、今年度はおそらく14億円です。来年度は15億円を超えるでしょう。市立病院の経営は3年もたないかもしれません。

なお、スラビック・リサーチ・センターの2008年12月28日付けのレポートは読みました。ご指摘の部分は15ページに載っていますね。O氏は当時は根室市役所総務部長のようです。
いまでも同様のことを市役所で考えているならたんなる妄想でしょう。

職位が総務部長なのに、医療のことを何も知らず、病院の規模も考えずに、北大へ出向いてスラビック・リサーチ・センターで勝手なことを喋り捲る、あきれるしかありませんね。医療関係者から笑われているのではないでしょうか。

by ebisu (2010-11-01 23:15) 

お節介焼き

北方領土拠点病院としての市立根室病院には二つの顔が有ります。表の顔は、皆さん御存知の北方4島とのビザなし交流事業の一翼を担っている事です。

具体的には、まず毎年のビザなし訪問に病院から訪問団の随行医師を出しています。年に8~10回、誰か彼かの市立病院の医師が週末にかけ4~5日間北方4島に出掛けている訳です。行き先は国後、択捉、歯舞、色丹と様々で、その身分はやはり医師ですが立場は主催者側のスタッフの一員です。ですから島に上陸した後はオレンジ色の医療バッグを背負って訪問団員と行動を共にします。待遇はチャーター船ロサルゴサの船室は個室が当たりますので、まあそこそこでしょうね。船内の個室が当たるのは他には国会議員クラスです。食事などは団員と同じ物を食べ、夜には食堂でビールや北の勝を片手に団員間の親睦のための飲み会です(笑)。

随行医師の仕事は訪問団員の健康管理で、船酔い、ちょっとした切り傷の手当てなどが主に成ります。医療バッグと補給用のコンテナの中には、取り敢えずの飲み薬や注射のバイアル、点滴セット、消毒薬、縫合セットなどが入っています。また非常用にAEDと酸素ボンベも積んでいます。尚、医師だからと言って島民を診ることは有りません。何故ならライセンスは日本国の医師で、場所も北方4島はロシアが実効支配している外国だからです。この訪問団への随行は別に市立根室病院の医師でなくても構わないのですが、北方領土拠点病院の看板を掲げている根室の市立病院である以上、可能な限り市立病院の医師が担当して欲しい、と言うのが市長の意向で、今までずっとそれが慣例化しています。勿論その事に対して医師の中にも反対意見やや疑問が無いわけではありません。「ただでさえ医師が少ない市立根室病院なのに、週末掛けとは言え何故そんな事業に医師を貸し出すのだ」。もっともな話です。一人だけの科の医師が出かける場合には大学などから診療や待機の医師を呼ばねば成りません。ただでさえ日常診療や当直の医師が札幌から入れ替わり立ち代りに来て経費が嵩む病院なのに、更に余計な出費が必要に成ります。しかし今後の医師数の減少があれば、もうそんな余裕は有りません。ビザなし訪問への無条件の参加を見直す時期は、案外もう直ぐかも知れません。

もう一つの表の顔は、外務省の人道支援事業に基づく北方4島からの患者の受け入れです。これに関してはその病気の程度や様々な事情により受け入れ先は市立根室だけでは有りません。町立中標津病院や北大病院などでも若干名受け入れています。この事業は外務省の予算で行われ、従って毎年第一陣の訪問団に市立根室病院の院長が同行し、外務省から渡された日本での医療を希望する患者のリストを基に面接をを行います。勿論全員を日本で診れるわけではありませんので、その面接で患者の絞込みを行います。そしてその結果を基に外務省が人選をする訳ですが、何時もすんなりとは決まりません。何故なら外務省には彼らの思惑があるようです。外務省にしてみれば国民の税金でロシア人をただで日本に呼ぶ訳ですから、やはり税金の使い甲斐がある患者(例えば、島で或る程度の地位や発言権が有り、北方領土の日本への返還に有利に動いてくれそうな(?)島民や家族を期待しているのかも知れません。
とにかく6月頃にリストアップされた北方4島からの患者達は、大体15日前後の滞在予定で3~4回に分けて根室にやってきます。入院先は小児科、内科、泌尿器科(今年からは有りませんが)、時に外科に成ります。小児科や泌尿器科には過去にも市立病院に入院した事が有るリピーターが何人か居ます。それは毎年根室で継続して診ることで治療効果が期待出来る、と言う理由と、彼らも根室での治療を強く望んでいるからではあります。
毎年夏以降、病院内ではロシア人が目立つように成ります。入院患者が子供の場合、その付き添いで母親も根室にやって来て市内のホテルに泊り込みます。ロシア人の診療の際には勿論通訳が必要なので、彼らも一日病院内に詰めています。通訳の殆どは、ビザなし訪問に随行している人達です。ロシア人の患者を受け入れる病院側はそれなりに大変です。出来ればロシア人の患者は一つの病室にまとめたいがそこに男女を分ける必要が出てきます。時には日本人との相部屋も止む無く、その場合は出来るだけカーテンなどで仕切ります。何せロシア人は殆ど英語を使いませんので、小生たちも彼らと意志の疎通が出来ません。勿論軽い挨拶程度は可能ですが。同室の日本人の患者もさっぱり分からないロシア語を一日聞かされるストレスは相当なものがあるようです。勿論ロシア人側もそれなりに遠慮しているのでしょうが。

かくして市立病院に入院していたロシア人の患者は、大体2週間ほどでビザなし訪問のチャーター船の行き来に合わせて根室から彼らの島へ戻って行きます。そして病院の医師が彼らの島を訪問する時には、港で彼らの笑顔が迎えてくれ、時にその家で昼食を御馳走に成ったりホームステイに迎え入れてくれたりします。
もっともその気持ちは心から有り難いのですが、何せ言葉の壁が有り、翌朝訪問団が集合するまでのストレスは相当なものです(笑)。

もう一つの表の顔は、北方4島の医療関係者の研修の受け入れです。毎年5~6人が市立病院を訪れます。勿論彼らは根室だけでなく北大や札医大などにも足を運びますが、時に市立根室病院で健康診断を受けたりします。その合間には彼らと病院側の意見交換なども行われ、現在のロシアの医療事情などが伝わってきます。建物もオンボロで医師数も少なく、それも決して高度な医療を提供しているレベルではない市立病院に何故北方4島の患者が診療を希望し、また医療関係者が視察に来るのか・・・。
それは少なくとも北方4島の医療レベルが日本よりも低いからに他なりません。最近はロシアの好景気と政府の国境守備に対する4島の重要性の再認識により、かなりの金が島に流れ込んできています。そのせいで以前に比べれば新しい病院や学校などの整備が進み一見島の経済状態は非常に好転しているかのように見えます。先日NHKでも北方領土問題の特番でその事に触れ、以前は日本への返還も止むを得ないと考えていた島民も、最近ではロシア政府への信頼感を取り戻しているので領土問題への悪影響が懸念される、と報じていました。そして新病院の待合室で待つ患者たちの風景が映し出されておりましたが、彼らが受けている医療のレベルがどの程度のものか・・・それについての言及はありませんでした。また商品が陳列棚に一杯に並んだマガジン(店)の内部の映像も流れましたが、そこで売られている、例えば野菜類は日本で言えば見切り品以下の物ばかり(あちこち痛んだピーマン、曲がった人参など)が多いことには触れていません。彼らの飲料水はミネラルウオーターやジュース類、時にワインやウオッカです。何故なら水道は旧日本時代の設備がそのまま使われていて、もう水道管が腐食しているため安心して飲めないのだとか。トイレの水も満足に出ません。困るのはシャワーで、水がちょろちょろとしか出てきません。朝シャンなどやっている様な日本の家庭ではまず考えられない不便さです。プレハブのような家の周りにはゴミが散乱していて、勿論狂犬病の予防接種などしていない野良犬たちが食べ物を漁っています。舗装されていない埃っぽい道路を行き交う車は殆どが日本製の4WDの中古車で、家庭の電化製品も多くは日本製です。そのような生活レベルの4島ですから、その医療レベルも押して知るべしです。彼らは島の病院で対応出来ない場合にはサハリンのユジノサハリンスクの病院に行き、そこでも駄目な場合にはモスクワなどのロシア本土の病院に行く様です。勿論元々社会主義の国ですから医療費の心配は無いようですが、サハリンやモスクワまでの旅費が払えない層は、諦めて地元で診てもらうか、奥の手が市立根室病院を窓口にした日本の病院・・・と言うわけです。

表の顔の最後に、毎年秋に4島から日本に旅行で訪れる島民の健康診断が有ります。この時は病院内が妙に活気付きます(笑)。

こんな所が対北方領土拠点病院としての市立根室病院の表の顔です。

以前国後島の子供が火傷を負い札医大に運ばれた事が有ります。島から日本へは航空機(ヘリ)は使えませんので、病院に連絡が入った翌日にたまたまビザなし訪問で国後に行っていたチャーター船の帰りを一日早めて根室に運んできました。そこで点滴を取り念の為に気管挿管してから札幌に搬送しましたが、途中で市立根室病院を経由したのは外務省の意向によるものだったようです。つまり外務省としては、普段北方4島で面倒を掛けている市立根室病院に対する労い(宣伝に成る?)のつもりだったのかも知れません。

その外務省と市立根室病院との関係が、取りも直さず裏の顔に繋がります。根室市は外務省から託された対北方4島拠点病院のお墨付きを逆手にとって、何とか政府による特別扱いを期待しています。一例ですが、以前旭川医大が引き揚げ外科医が不在に成った折、根室市(市長)は先ず姉妹都市の黒部市民病院に泣き付き短期間外来を繋ぐための外科医派遣に成功し、その後の外科医の派遣を政治ルートを使い国立病院機構に
依頼。その時亡き中川昭一議員が文部科学省に圧力を掛け、その結果地元北海道の北大や札医大、旭川医大の各教授たちが非常に迷惑を蒙ったようです。その事で元々大学の教授たちの間でとかく悪い評判だった市立根室病院の立場は、更に落ちる所まで落ちてしまいました。

裏の顔=裏ワザと言って良いかも知れません。本来裏ワザはジョーカー的に使うべきもので、カードの切り方を間違うと取り返しの付かないダメージを負う危険性が有ります。今後市立根室病院が対北方領土拠点病院と言う国から託された切り札をどのように使って行くかによって、根室の将来が占えるかも知れません。

以上長くなりましたが、市立根室病院が持っている、意外と知られていないもう一つの顔について書いてみました。
by お節介焼き (2010-11-02 16:23) 

ebisu

お節介焼きさんへ:

これだけ「北方領土拠点病院」の実態解説をしていただければ、質問をしたcccpcameraさんも納得がいったのではないでしょうか。

効果的なカードは切り方を間違えると、副作用があることは肝に銘じておきます。

解説ありがとうございました。
by ebisu (2010-11-02 22:56) 

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