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#1272 辛口の教育時評:北海道教育委員会チャレンジテスト Nov. 10, 2010 [64. 教育問題]

 生徒が数学のプリントをもってきてやっている。
「え、なんだこれは、問題数が少ない、ずいぶん簡単なプリントだな、そんなの○○さんはやっても意味ない。■■さんはやったほうがいい。」
「北海道教育委員会が学力向上・・・・だって、みんなやることになっているの、先生も集めなきゃならないらしい」
 先生たち、いやいややらされているのを生徒はお見通しだ、同情されてるよ。生徒の説明は途中がよくわからないので、「あとで調べてみるよ」と話す。
 ■■さんからこのプリントの問題でいくつか質問があった。○○さんからはまったく質問なし。■■さんはこの3ヶ月ほどずいぶん積極的に質問をするようになった。2年かけて学習意欲がようやく出てきた、これを大事に育てればいい。生徒一人一人の質問に答えていると、質問の内容が変ってくることに気がつく。
 急速に能力を伸ばす生徒もいるし、じっくり時間をかけて成長していく生徒もいる。根気がなく何度注意しても姿勢が悪く、なかなか「手ごわい」生徒もいる。人間相手だから、一人一人違うのは当たり前だと思いつつも、ときに腹を立てていることがある。まだ「若い」と自分に苦笑いだ。それもこれも楽しいひと時だ。

 話しを元に戻そう。B5版だったかA4番だったか、プリントは1枚のみ。内容は実に簡単な基本問題だった。1教科につき1日1枚、基本問題のプリントである。それでも各学校に10~30%いる10点以下の生徒は自力で解くことができないだろう。上位三分の一の成績の生徒は時間の無駄である。成績上位の生徒は希望者だけに変えるべきだ。
 このテストに適している生徒の層は下位からカウントすると35%から65%の約30%の生徒だ。おおよそ70%の根室の中学生には効果のないものと私は判断した。
 このようなチャレンジテストを全員にやらせる必要がどこにあるのだろう。上の命令なら効果がないと知りつつも上意下達で生徒へ効果のない負担を押し付けて何の疑問も感じないわけではないだろう。
 こういうことを無理強いすると現場は荒廃しやる気力が失われる。
 しかしだ、それにしても敢然と反抗する教師はいないのか。
 根室高校の校訓は「敢為和協」だったが、根室の中学校教育の現場では「和協」ばかりで「敢為」がなくなったのだろうか。ごく小数に過ぎないが、中学校の先生の中には根室高校出身者もいる。

【北海道教育委員会の「学力向上策」】
 気になって、北海道教育委員会のホームページをみたら、「学力向上対策チーム報告書」というのが載っていた。
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/NR/rdonlyres/312A5F5A-1492-4245-B6CC-2F24FBB1A449/0/gakuryokukoujoutaisakuteamhoukokusho.pdf

6ページに「チャレンジテストの活用」という項目があるので抜粋する。

○ チャレンジテストの活用
各学校が児童生徒の学習状況を適切に把握し授業改善を進めることが
できるよう、また、家庭学習の定着に取り組むことができるよう、北海
道独自の基礎問題「チャレンジテスト」を道教委のW e b ページに掲載
し活用を促す取組を始めたところであり、今後、各学校での活用を促す
必要がある。

 このような対策をどういう頭でひねり出しているのだろう?こんな問題を生徒全員にやらせてどれほどの効果がある?ほとんどないだろう。生徒に合わせて問題を配るなら、少なくともレベルを3段階に分けるべきだ。
 全国学力テストデータをもっているはずなのに、データの解析すらしていない対策にみえる。

【不易流行】
 放課後の補習が学力向上策に有効なことは今も昔も変らない。昔と違うのは内申点重視で生徒をブカツへと半ば強制的に駆り立て、放課後補習をやりたくてもできない体制になっていることだ。
 中学校の補習は昔もやってはいなかった。ところが小学校では先生たちが熱心にやってくれていた。そろばん塾へ通う生徒も半数はいたから、基礎計算でつまづいて中学校へ入学してくる生徒は5%以下だっただろう。
 小学校での補習がないため、基礎計算(九九、小数や分数の加減乗除算)でつまづいた生徒が30%前後もおり、そのまま中学校へ入学してくる。もちろん中学校で補習はしないから、小学校でつまづいた生徒は放置される。
 授業はちんぷんかんぷん。家庭での学習習慣すらない生徒がこの中に相当数まじっており、自己抑制能力が育っていないので、そうした生徒は我慢ができない。入学後しばらくすると授業をサボって、教室から「脱走」する生徒が何人も出る。一番古い中学校のように体育館裏で数人で毎日タバコを吸う生徒が現れる。
 先生たちはこういう生徒が教室にいないほうが授業がしやすい。中学生の学力テストの平均点が下がるわけだ。現場の先生たちはこういう実態を先刻ご承知だ。だから、道教委がやれというから「チャレンジテスト」用紙を配布して、回収しているが、ほとんど役に立たないことも理解している

【具体策のナカミには一番大事な項目が脱落している】
 5ページから抜粋する。
○ このような点を踏まえ、学力向上に向けた、道の教育施策については、
以下のような視点で見直すことが必要である。
① 市町村教育委員会の施策や学校経営方針の明確化
② 指導方法の工夫改善
③ 教員の配置の改善と指導力の向上
④ 子どもの生活習慣・学習習慣の改善 

 それぞれのお題目はもっともと思え、ebisuにも異論はない。問題はその具体的な内容だろう。
 ところで、どういうわけか、肝心な放課後補習が「道の教育施策」の中に見当たらない。手間がうんとかかるからだろう。しかし、半端な「対策」は効果がない。やるなら大胆にやるべきだ(内申重視の道立高校入試も改めるべきだとebisuは思う)。
 ブカツを週に2回程度禁止して放課後補習をするしか手はないのだ。嘘はやめよう。効果のないことはやっても意味がないから、さっさとやめて正直に効果のあることをやろう。それは放課後補習だ。手間隙はかかる。基礎計算でつまづいた生徒を救うのはたいへんに体力や根気や情熱がいる
 それらの生徒の半数以上が生活習慣が崩れている。家庭学習週間がない生徒が多い。6年間家庭学習をしてこなかった生徒はそれが習慣化しているだけではない、「性格」にまでなっている
 生活習慣や「性格」を変えることはたいへんだ。大人の喫煙習慣やアル中患者を考えればわかるだろう。たいへんだ。でも、そこから逃げてはいけない。不退転の覚悟で何が何でも変えなければ、その子供たちの将来の可能性がなくなる。一部の生徒はせっかく入学した高校すら学力不足や生活習慣を変えることができずに中退して、その後の人生に著しく制限を受けることになる。

 基礎計算のできない生徒は日本語も理解できない生徒が多い。児童書よりも上のレベルの大人の本をまったくといっていいほど読まないから日本語の語彙が育っていない。語彙が貧弱で簡単な会話しかできないから、仕事で何かを指示されても理解できない
 機器のマニュアルを見ても理解できない。仕事に必要な資格試験を受験させても合格できない。そういう「大人」に育ってしまったら、いったいどのような会社が、役所がそういう人材を受け入れられるというのだ。
 どんな仕事でも頭は使うし、根気は必要だ。勉強は前頭前野を鍛え、自己抑制できる人間を育む。セルフコントロールすらできない大人に育ってしまったら格差社会の最底辺を生き抜くしかなくなる。そしてその子供も似たような境遇を生きることになる。それが格差社会の現実である
 頭がよくなくたって、基本的なことがきちんとできて、セルフコントロールのできる人間は社会に受け入れてもらえる。その一方で、学歴が高くたって、正社員で就職できる者は三人に二人だろう。多くはふるさとを離れ、厳しい格差社会の中で生きてゆかねばならぬ。備えはしっかりしておくべきだ。
 中学生のうちならまだ救える。根室の子供たちが可愛いなら、なんとかしよう

【新しい教育長にちょっとだけ期待】
 根室の教育長が変わった。前任者は地元の人間だったが、ふるさとの子供たちのために何か有効な学力向上策を実施しただろうか?新しい教育長さんはどうやって根室の子供たちの学力を上げるつもりか、意見を聞いてみたい。

 
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コメント 2

ZAPPER

おっしゃる通り、道教委「チャレンジテスト」の馬鹿さ加減には失笑を禁じ得ません。生徒の学力レベル差を考慮していないことに加えて、量が圧倒的に不足しています。はっきり言って、市販の問題集の足元に及びません。

今年7月末の読売新聞記事中、道教委・義務教育課長の以下のコメントが事実とするならば、道教委の【仕事のレベル】に背筋が寒くなりますが…
「50+150がピッタリと200になるため、先に計算してしまい、正答の350が得られないのか」
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/feature/hokkaido1263447647981_02/news/20100731-OYT8T00272.htm

おいおい、何を言ってんのあんた?それで義務教育課長だって?笑わせるんじゃないよ!四則計算ができていないだけだろうがっ!

「学力向上対策チーム」とやらに、私教育従事者を入れれば【良い仕事】ができると思うのですが…
by ZAPPER (2010-11-10 13:29) 

ebisu

ZAPPER さんへ

URLをクリックして読売新聞記事をみました。
義務教育課長さんのコメントをみて驚きました。
問題は簡単なもの。
50+150×2
ですから、これを200とやってしまうのは単に四則計算規則をしらないだけです。
時々こういう生徒がいますが、要するに先生が教え切れていないだけでしょう。
こんな程度の計算を半数近くが正答できないのは教え方や授業時間に問題がある。
このような人が義務教育課長では北海道の子供たちの学力が低いはずです。北海道の子供たちの学力は教育行政に携わる人々のレベルに見合っているだけかもしれません。
教育行政こそ、その質を上げるべきでしょう。そのためには「民活」ですね。
by ebisu (2010-11-10 22:22) 

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