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#1092 消費税増税でプライマリーバランスは回復できるのか? Jul. 2, 2010 [95.増え続ける国債残高]

 民主党が衆院選挙前に約束した無駄遣い削減(コストカット)による財源捻出額がが10兆円だったか、20兆円*だったかはもう忘れた。だがとても実現できないことだけは確かなようだ。
*2009年版民主党マニフェスト⇒http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2009/txt/manifesto2009.txt

*2009年6月23日の読売オンラインニュースでは
 「税金の無駄遣いの根絶」など歳出削減で9・1兆円、埋蔵金の活用や租税特別措置見直しなど歳入増で11・4兆円の計20・5兆円を捻出(ねんしゅつ)するとしている。歳入・歳出改革は4年間かけて行い、財源が確保され次第、1人あたり月額2万6000円の「子ども手当」や高速道路無料化などの政策を順次実施する計画だ。
 
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090623-OYT1T00055.htm

 「税金の無駄遣いの根絶」9.1兆円の削減目標に対して、実績は2.3兆円にすぎない。話半分どころではない、四分の一である。この一事だけを見ても、民主党幹部は仕事のできない者共の集まりであることがわかるだろう。やはり30代できちんとした仕事をしておかないと、50代60代で仕事ができるようにはならない。まれに、そういう(非凡な)者がいることは事実としてあるが、現在の民主党にはいないようだ。
 仕事とは厳しいものだ、計画と実績の数値を比べてみると馬脚はすぐに顕れる。替りがいないのだから、公約したことと実績の数値対比に耐えられる政権党になってほしい。数字を見て言い訳をするのではなく、仕事の不出来を恥ずかしいと思うことだ。それにしてもだ、民間会社なら計画の4分の1の実績なら降格モノだが、仕事を担った仙石、枝野、蓮舫はそろって大臣になっている。民主党とはいったいどういう党なのだろう?前回の衆院選挙では支持したが、わたしにはわからなくなってきた。

 プライマリーバランスの回復はそもそも小泉純一郎元首相が言い出したことで、2011年がお約束の期限だった。具体的なプログラムを欠いたお約束だった。したがって、実現可能性はないに等しいものだった。
 もちろん民主党もプライマリーバランスの回復を公言しているのだが、その時期がいつになるのかについては誰も言及しない。政策は具体的スケジュールの裏付けがなければ、たんなるお題目にすぎない。自民党であろうと民主党であろうと、その点では同じである。
 どういうわけか民主党のマニフェストに書かれた項目はそうした具体的なスケジュールや戦略を欠いたものが多い。重要政策ほどそうなっている。マニフェストの第一番目の項目「ムダづかい」を典型例としてあげておく。
 公約した財源が半分以下しか捻出できなくて、今度は歳入を増やして帳尻を合わせようと、菅総理大臣が消費税10%へ増税を言い出し、民主党はまたも迷走している。
 「またも」の意味は予定の数分の一しか財源が捻出できなかった「事業仕分け」ショーであり、普天間飛行場の海外移転問題に見た鳩山元総理、菅副総理の「迷走」である。菅氏はあのとき副総理だったが、国家戦略室担当大臣のときと同様にだんまりを決め込んでいたから、政治的にはしたたかな人でもあるようだ。不都合な問題には口をつぐむのは、凡庸なタイプの政治家の常道である。

 さて、消費税10%へ2倍に引き揚げることでどれほどの効果があるのか、あるいは何%に消費税を上げればプライマリーバランスが回復できるのか冷静に見てみたい。

 利用できそうなデータを検索したら出てきた。産経ニュース**によれば消費税増収は12兆円だそうだが、このうち地方へいく分が2.4兆円、地方交付税交付金でばら撒かれる分が2.8兆円だから、国が使える分は半分の6.8兆円にすぎない。消費税率を5%上げるごとに国が使える財源は6.8兆円増えるということになる。現実を理解するために話しを簡単にすれば、

 15%にすれば ⇒ 6.8×2=13.6兆円
 20%にすれば ⇒ 6.8×3=20.4兆円
 25%にすれば ⇒ 6.8×4=27.2兆円
 30%にすれば ⇒ 6.8×5=34.0兆円・・・まだまだ足りない
 ・・・・・
 ・・・・・

 今年度の赤字国債は44兆円、それに「埋蔵金」から10兆円ほど補填がされているから、実質54兆円の税収不足である。これを全部消費税でまかなうとしたら消費税率はいくらにすればよいのだろう?計算は簡単である。
 5%+54/6.8×5%=44.7%

 消費税率を45%にすれば歳出と歳入が均衡する、つまりプライマリーバランスが回復することになる。
 問題なのは消費税率を50%に上げてもスエーデンやフィンランドのように老後を安心して暮らせる社会の実現ができないことだ。
 日本は社会の仕組みそのものを変えなければならない大きな曲がり角にきている。それは「明治維新」並みの大きな歴史的転換点となるのだろうが、まだだれもどういう経済社会が望ましいのかその枠組みを提示できないでいる。

 実際には高齢化社会への移行期の現在は毎年1~2兆円もも社会保障費が増え続けているから、団塊世代のほとんどが年金生活に移行してしまう4~8年後には消費税率が60%でもプライマリーバランスは回復しないのかも知れないが、おおよそ次のような話になるだろう。
 消費税10%は「焼け石に水」であり、約半分への歳出削減を並行してやらなければプライマリーバランスの回復ができない。
 歳出半減のためには財政負担となっているあらゆる既成特権を廃止しなければいけないだろう。国民の半数以上を敵に回す覚悟と日本を救うという不退転の決意がなければなしえない仕事である。

 菅総理大臣は2009年度の衆院選の際に民主党が公約した歳出規模の縮小をあきらめ、歳入を増やして帳尻を合わせるために消費税を50%にしようというわけではあるまい。
 菅総理大臣は正直に国民へ数字を示して、財政再建への道筋を誠実に説明すべきだろう。痛みだらけの改革を一世代続けなければキリギリスの生活を続けてきたツケが解消できない。それが現実なのだ。耳に心地よいことをいう政治家や経済学者には注意しよう。そういう輩の口車に戦後65年間乗りつづけために現在の困難があるのだから。

 歳出半減は民主党が2009年衆院選でマニフェストに掲げた公務員人件費の20%カット、特殊法人の根絶などをやってもまだまだ追いつかない数字である。
 選挙向けにはまことに都合の悪い事実であるから、こういうことを選挙戦の最中に云うことは勇気が要る。不退転の覚悟でこうした削減を徹底的にやると云って勝利しないと、前回衆院選と同様に選挙後に腰折れすることになる。
 とにかくとことん歳出削減をやらないと、時間切れでギリシアとは比較にならない大規模な破綻が日本経済を襲うことになる。

【民主党政権に必要な「仕事のできる人材」補充を急げ】
 無駄遣い削減で9.1兆円と云いながら実際には三分の一も実現できない。つまり、最初から仕事の見通しが甘かった。戦略の裏付けのない政策や公約は絵に描いた餅にすぎず、財源のないあまたのバラマキ政策がふわふわ空中を漂うことになる。
 菅氏について言えば、30代で市民運動にうつつを抜かすのみで、しっかりした仕事の経験がないからこういうていたらくになる。目標は立てられてもそれを実現する戦略が描けないし、戦略の裏付けがないから、実現可能性もほとんどゼロとなってしまう。Aを主張し、やってみるとできない、今度はBと云う、そしてまたできない、Cと云う・・・しまいには約束したバラマキすら不可能になる。
 菅総理だけではない、松下政経塾出身者を初めとして民主党幹部全般に云い得る欠点である。政権をとったのはいいが、それが最終目標ではあるまい。政策を実現するための政権奪取であったはずだ。どうやって政策実現に必要な人材を補完するのか、そこからはじめる必要があるだろう。
 タレント候補を集め、数合わせしか念頭にないようでは志が低すぎる。末期症状を起こした自民党はタレント議員ばかりでなく総裁をも選挙で票が集められる人物を念頭において選んだが、そういう政党は結局のところ国民に見限られることになる。
 政策実現は複雑な仕事である。どのような仕事も現実は予測外のことが待ち受けており、仕事の出来る者はそうした予測外のことが起きても臨機応変に処理し、当初目標をきちんと達成する。民間会社では当たり前のことである。言い訳をいくらしても結果が悪ければ意味がない。仕事の出来ない者ほど言い訳がうまい、そうしなければ生きていけないからだが、いつまでもごまかしきれるものではない。
 しっかりしてくれ民主党、野党ではない、責任の重い政権党だ。

【現実を見据えた正直・誠実な仕事を期待する】
 子ども手当てなど出している余裕はない、選挙目当てにばらまく余裕など一切ないのが国家財政の実情である。これなら夕張市の財政の方がずっとましだ。
 菅総理、そして民主党は正直に・誠実に仕事をしてもらいたい。

**産経ニュース 【政論】説得力欠く消費税10%論議 6/28
 
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100628/plc1006281758014-n1.htm
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mami

全然関係のない話で恐縮ですが、切迫早産で釧路の日赤へ救急車で運ばれました。

現在は容態も安定してますが、退院は出産後となりました。

今は携帯でコメントしていますが、以前のようにちょくちょくコメント出来ないと思います。

ここに居ると根室市の病院の問題が次々と浮き彫りになり考えさせられます。

根室市だけではなく、医療全般に言えますけどね。

by mami (2010-07-03 17:21) 

ebisu

たいへんだったですね。
ゆっくり産んで戻ってください。

携帯でコメントしてくれているのですか。
ブログが長くてすみません。
ときどき短いものを挟みます。
by ebisu (2010-07-03 23:21) 

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