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#1058 第38回古本市探訪記(場所:市立図書館) Jun. 6, 2010 [87.根室の話題]

 市立図書館で例年恒例の古本市があった。親子読書の会が主催だと思うが、たくさん人が来ていた。百科事典から小説・漫画の本までダンボールに整理されて入れられてずらりと並んでいた。ぐるっと見て回ったら、サリーさんが来ていた。

 太宰治全集があったので、真ん中辺りの第5巻を開いて読んでみたら面白い。題名を見たら『正義と微笑』となっている。『走れメロス』と『女生徒』を生徒と音読しただけで、太宰治の作品はほとんど読んだことがない。二十歳の頃は太宰があまり好きではなかったからだ。値段を聞いたら1冊20円だという。あまり安くて驚いた。神田の古書街や高田馬場の古書店街では考えられない値段だ。それなりの値段を予想していた。
 昭和33年の発行だからこの時代は紙質が悪い。昭和30年代も後半になるとずいぶん紙質がよくなる。1冊1000円なら少し高いかも、500円なら安い、そう思って聞いてみたので、1冊20円にはほんとうに驚き、可哀そうになった。絶句していると「なーんだ、ebisuさん冷やかしですか?」と主催者グループの一人であるKatsuyoDiaryさんが笑っている。エネルギッシュな人だ、今日はとっても忙しいのだろう。「いや、あまり安いもので、なんだか本が可哀そうで・・・言葉が出てきませんでした」、そう答えて、買わせていただいた。いま書棚にある。

 昭和33年出版の太宰治全集(筑摩書房)は正假名遣いで漢字字体も旧字体が使われている。こういう本の方が趣がある。出版物の漢字は制限をなくしたほうがいい。難読の漢字はルビを振ればすむ。現代語訳を出す他は古い出版物を新假名に書き改めて出版するのはやめてもらいたい。著者はなくなっているが、その意思を尊重すべきと思うからだ。文章書きはそれなりに選んで字を充てているのだから、新字に書き改めると意味が違ってしまうこともままありうる*。

 死蔵されてごみになるよりはリサイクルの機会があるのはよいことだ。私の書棚にある本たちは、専門書が半分くらいだろう。おおよそ3000~4000冊ほどある。いつかリサイクルに出されて、他の人が読むことになるのだろう。その日までやさしく扱おう。 

*假説の假は旁が暇と同じで、休暇でも「か」と読むように旁が音を表している。それを「仮」としてしまったら「反」は「たん」という音を表すので、「か」と読む理由がなくなる。こういう書き換えはやめてもらいたいと、誰かが言っていた。井上ひさしだったか、本多勝一だったか、白川静だったかは忘れた。それ以来、「假説」を「仮説」と変換すると気持ちが悪いし、「假名」を「仮名」としておくのも居心地の悪さと感じる。
 たとえば、万葉集をすべての出版社が現代漢字に書き換えて出版してしまったら、われわれ一般庶民は原文テクストに触れられなくなる。オリジナルの漢字を中国語や朝鮮語で読み解いているグループもある。原文テクストの価値は計り知れない。
 わたしの専門は経済学だが、概念について厳密な議論をするときに原文テクストは欠かせない。学術書は言うに及ばず、文学作品も娯楽作品も、原著者の原文テクストにはそれなりの敬意を払ってそのまま出版してほしいと思う。 
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コメント 3

katu

ebisuさん古本市においでいただき本当にありがとうございました。
筑摩書房の太宰治にはそのような価値があったのですね。

たぶん、古書店にはびっくりの、とにかく10分の1
あの本は1冊200円の本だったんです、当時の値段ですね。

午後だったので、本の買い手がついて良かったです。
もう一度価値を見出してもらえて、幸せな本ですね。

お釣りを受け取らずにお帰りになったと伺いました。
そういったお客さまのチップもしっかり
子どもの図書に全額行くのです、ありがとう(笑)

古本市で売れ残った本は
火曜日から7日間、2階の会場に開放しております。
本をゆっくり眺めていただき、自由に持ち帰ってください。
代金はお気持ちで結構です。
時間があったら、もう一度本との出会いを楽しんでくださいね
by katu (2010-06-07 08:56) 

mami

私も松本清張の本を買いました。当時の価格で¥120、ということは¥12だったんですね~!!絶版の本なので、そのままの価格でも良かったんではないのかな?と思います(苦笑)。

文庫本で上巻と下巻が分かれたところに置いてあったのがあったので、近々探しに行きます。読みたい本があったも、上巻だけ、下巻だけ・・・絶版の本が多いので上巻だけ買っていかれる方は辞めていただきたい(笑)。

何年か前に相当な数の本を自由期間中に持って帰った時があったので、募金箱に1000円札をねじ込もうとしたら、図書館の方に止められました(笑)。でも、本の価値はその人の価値観なので、止めなくてもと思いました(苦笑)。

年を取ったのか、父親と同じ本を買っていました(笑)。何年か前なら絶対に読まなかった時代物と松本清張、司馬遼、藤沢周平等です。

私は20歳過ぎて、太宰治にはまり、その時精神的な病気もあって太宰の本をすべて親に捨てられた思い出があります。でも、太宰の闇は救いの闇でしたよ。風刺やユーモラスもあるし。

by mami (2010-06-08 12:36) 

ebisu

昭和33年にああいう本が定価200円だったんですね。いまなら2000~3000円ですね。この50年間に物価はほぼ10倍になっているんですね。

代金をどう支払うべきかとっさにいい考えが出てきませんでした。
自分の評価値段で支払うのも一案かもしれません。

市立図書館で本を買う予算くらいはふんだんに出したいものです。
病院の赤字を半分に出来れば、あちこちに配賦できます。
やはり、仕事は誠実に正直にやるのが一番のようです。

わたしの蔵書もいつかは古本市に並ぶことになるかもしれません。
掘り出し物がたくさんありそうです。
by ebisu (2010-06-08 22:37) 

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