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中高生の勉強の仕方(1) #970 Mar.24, 2010 [57. 塾長の教育論]

 学習の仕方は10人いれば10通りあるのかもしれない。いろいろな考えややり方があってよいから、私は私の信ずるところを書こうと思うので、読者は批判的に読まれたい。正反対の意見すらありうるだろう。

 何がよくて何が悪いのかは、どういう視点から物事を見ているかに左右されるものだ。まず、悪い勉強法を挙げて、次いでその理由を明らかにしたい。そうすればいい勉強法は自ずと浮かび上がるだろう。

 (1)内的自発性に基づかない勉強はまずい
 小学生は別だ。小学生はシツケ段階にあるから、無理やりでも低学年のうちに家庭学習習慣を躾けたい。
 しかし、中高生には必要ない。自主的な学習機会を奪うからである。この切り替えの時期の対処がむずかしい。児童書から文庫本や新書版の本への切り替えが、好奇心や特定の問題意識の育成の役立つ。子どもの勉強が、オトナの勉強へと飛躍する時期でもある。すさまじい勢いで精神的な成長を遂げる者がいる。

 中高生の 時期の学習は内的自発性に基づいてなされるのをもって最上とする。なぜか?大学生になったら一つの科目は週に1度だけ授業がなされる。まれに週2回のものもあるがほとんどが1回90分授業で、1週間経てばほとんど忘れてしまうから、自分で予習・復習して、問題意識を育てる工夫が要る。
 中高生のときに、こういう習慣のない生徒は大学生になってもものにはならない。もちろん社会人になっても同じことだ。受験勉強をどれほどやろうとも、ダメだ。それでも100%とは言わない、世の中にはまれな例外がつねにあるからだ。
 逆に「パターン練習主体の覚える勉強法(多くの受験勉強がこういうやり方をしている)」は社会人になってからのダメージが大きい。下手な受験勉強のやり方をするとその量に比例して社会人になってからダメージの現れ方も大きくなる。30代ならまだしも50過ぎてから受験勉強の強烈なダメージでノイローゼになる者すらいる。頭を使わない記憶中心のパターン学習はそれほど深刻な副作用をともなう学習法なのである。ほどほどなら薬になることも、過ぎると毒薬だ。自分の子供にそういうリスクを背負わせるような学習をさせたい親は一人もいないと思うが、現実はそれと気づかずにやらせている。

 根室高校は毎週数学と英語の宿題を生徒に課している。これは進学実績を上げるには効果的ではあるが、生徒が自ら勉強する機会を奪うことにもなる。こういうことに慣れてしまった生徒は大学へ進学してからがたいへんだ。大学では基本的に宿題がないし「進学講習」もないから、いままでの宿題を消化するだけの勉強の方法は通用しない。自分で予習をしていかないといけないが、高校で3年間やっていないことはできないのである。
 中高生のときに繰り返したことは習慣となり、性格の一部と化しているから、容易に直るものではない。酒やタバコ、パチンコやゲームなど習慣となってしまったものの軌道修正は容易なことではないから、ほとんどの生徒が繰り返したことが習慣となり、性格となって社会人となる。いったいどういう社会人になるのだろう?
 典型的な指示待ち人間が出来上がる。自ら目標を設定して自力で考える習慣を育まなかった者は社会人となっても自ら課題を見つけ、解決していくタイプの人間にはほとんどならない。
 社会人となれば、毎週講義があるわけではないし、授業はないのが基本である。そうした機会を見つけてもせいぜい月に一度くらい社内講習会や外部講習会に参加できれば環境としては恵まれているほうだろう。だから、仕事に必要な技術や知識は自ら目標を立てて学習するしかない。
 仕事に関係のある分野を、目標を設定して独力で学習する者は中高生の時代にもそうした勉強の仕方をしているものだ。だから、中高生時代の学習習慣が大切なのだ。

 塾はどうだろう?塾で多数の科目を習い、テストの前にはテスト対策漬けにするような学習の仕方をすれば、生徒は「近道反応」があたりまえの人間に育つ。
 塾で教えるのはせいぜい2科目、国・数・英だけで十分だ。3科目の中から2科目選ばせればいい。あとの科目は自分で勉強すべきだ。
 英数はタイプが違うから、この両方がバランスよくできる生徒は他の科目の勉強の仕方もだいたい心配ない。数・英の勉強法が応用できるからだろう。
 何もかもお膳立てして点数を追いかけさせてしまえば、そういう人間に育つ。テストがあればテスト対策、そういう学習を繰り返させてはいけない。繰り返すことは習慣になり、知らない間にそういう性格ができあがる。だから、テストがあろうがなかろうが坦々と自ら立てたスケジュールで勉強すればいい。そうすればしっかりした人間ができあがる。

 「教科書リーダー」を使った学習も避けたい学習方法である。昔は「虎の巻」と言った。成績のよい生徒がこれを使っているのをほとんどみたことがない。反対に成績の悪い生徒には必携本であった。あなたは成績のよい生徒が教科書リーダを使っているのを見たことがあるだろうか?
 教科書リーダーは便利がよすぎて自分で調べたりする余地がない、それだけで完結してしまうことがいけない。興味が外側に広がっていかないのだ。こういうものは自分で調べて工夫して作るものだ。出来上がったときにはもうほとんど覚えている。勉強法に関しては便利なものほど副作用も大きいから要注意だろう。これも絶対にだめとは言わない。まるでわからない生徒には便利な本であることは間違いない。なるべくならよした方がいいというだけである。

 絶対にやってほしいこともある。小学生低学年は徹底的に家庭学習習慣をシツケるべきだ。箸のもち方、鉛筆のもち方、勉強姿勢は学校では教えないから家庭の責任で一切の妥協を排して躾ける。姿勢が悪いと集中力が著しく落ちてしまう。頭の働きの半分は集中力である。つまり、頭の良し悪しの半分は集中力で決まるから、姿勢は重要だ。授業参観のときに後ろから成績のよい生徒の勉強姿勢を観察してみるとよい。他の生徒と比較すれば一目瞭然である。

 中高生の時期には自発的な学習習慣を育むべきだろう。だから、全部をお膳立てしてはならない。三分の一で充分だ。あとは自分で工夫しろといいたい。それが社会人となってから何があっても潰れない力を内部に育てることになる。
 高校生に宿題はないだろう、まるで小学生扱いだ。学校を批判しているわけではない。高校の先生たちがそうせざるを得ないほど、高校に入学してくる生徒たちに自発的な学習習慣がないのだ。小学校での家庭学習習慣の育成、「読み・書き・そろばん」に代表される日本語力と基礎計算力の充実が小学校教育で要求されている。根室には中学1年生には分数の加減算や小数の乗除算ができないものが半数もいる。家庭学習習慣のない生徒にいたっては1年生の三人に二人もいる。
 家庭と小中学校がしっかりしなければ、根室の子どもたちの学力はいつまでも道内最低のままだ。
 
 さて、中高生にはどういう学習法がいいのかわかっただろうか?

*野口悠紀雄対三浦笙子 英語教育対談(動画)
 
http://moura.jp/lifeculture/noguchi/

*hirosukeさんのブログ⇒英語学習の強力なサポーター
 
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/


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