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亡国の全国一斉学力テスト廃止 #815 Nov.28, 2009 [57. 塾長の教育論]

亡国の全国一斉学力テスト廃止 #815 Nov.28, 2009

 またひとつ、とんでもないことをやってくれた。
 事業仕分けチームが、全国一斉学力テスト予算をばっさり削った。愚かな者が事業仕分けをすれば被害は大きい、その見本のような例がここにある。誰が被害者なのかも考えたい。

 そもそも教職員労組が全国一斉の学力テストに反対だったから、その支持を受けている民主党の事業仕分けチームの結論は最初から決まっていたのではないだろうか、セレモニーは茶番劇である。
 もっともらしい削減理由としてチームメンバーの一人が、「(問題を)公表する方式では経年比較ができず、学力が上がっているのか下がっているのかが判らない」ことを挙げた。つまり学力テストは学力の測定に役に立たないと言い切った。
 まことに幼稚な屁理屈であるので、この人は教育について自分の頭で考えたことがあるのだろうかという疑問が湧いた。

 いま、地方で問題になっているのは学力の地域間格差や親の所得格差による学歴の固定化である。地方にとってはこれこそが最優先課題だ。言い換えれば、日本の子供たちの国際的な学力低下は都市部の問題であって、地方にとっての切実な問題ではない。

 日本の小中学生の学力が数十年単位でどうなっているかは、テスト問題を公表せずに一部の地域をサンプリングし、毎年同じ問題をやらせて観測し比較すれば、全体の傾向が簡単に推計できるだろう。それはそれでやればいいことだ。いまやっている全国一斉学力テストをやめる理由にはなりえない。そのようなことすら理解できない見識の低い人が仕分け人をおやりになっていた。私には単なるcost cutterにしか見えなかった。もっとはっきり言えば、「気違いに刃物」である。
 黙していたメンバーも、考えたことのないことは「わからない」と公の場でも言う勇気をもってほしい。

 学力の地域間格差は北海道だけを見ても顕著である。札幌周辺や旭川などの大学をいくつも抱える都市部と僻地に大きな格差が生じている。それこそが大問題である。
 学力の地域間格差の大きさは卑近な例を挙げるとよくわかる。道東地域では釧路湖陵高がナンバーワンだが、「東京基準」ではあの程度のレベルの学校を「進学校」とは言わない。それほど道東の高等学校のレベルは低いのである。比較のために東京三多摩地域では八王子東高が都立進学校に分類されていることを挙げておく。興味のある人はネットで検索して釧路湖陵高と進学実績を比べてみればいい。東京都立高校は学区ごとにトップレベルの1~2校が進学校に分類されている。

 僻地は競争が少ないし、教員の質も都市部に比べて傾向的に劣っていることは否めないだろう。高校の話しだが、旭川東高校校長が根室高校で社会科を担当していた当時の話しとして、「来たくて根室に来た先生は一人もいなかった」と公の席で発言したが、同じ席にいたW根室教育長からは否定の発言がなかったから、一部は真実であるのだろう。もちろん全部がそうだとはわたしは思わない。そうではない先生がいたし、長年住んだ根室を愛し、根室の土となった先生もいる。Y先生だ。

 全国一斉学力テストを実施することで、学力の地域間格差が広がっているのか縮まっているのかがはっきりする。そして改善策を講じた場合に、どれほどの効果があったのかについても、学力テスト結果で判断できる。全国一斉学力テストをやめてしまったら、国民は学力の地域格差について知る権利を失う、それほど重要な問題なのである

 11月26日付の北海道新聞2面に北海道の14支庁管内別の調査結果が載っているが、昨年に続いて14支庁管内で根室の中学生が最低だったようだ。しかし、小学校は13番目になったかもしれない、市教委は詳しいデータを公表してもらいたい。

 市教委や学校がいろいろ手を打っているようだが、一向に学力が上がってこないことも事実である。プリントをいくら配っても、基礎計算ができない40%もの中学生は補習しない限り救えない。道教委も学力を上げるために、放課後の補習や長期休みのときの補習を言い出したが、こういう簡単なことにどうして何年もかかるのか理解に苦しむ。学校の役割は大きい。基礎計算(小数および分数の加減乗除算)ができない生徒は中1になったらすぐに補習すべきだ。それだけでも数学の平均点は顕著に上がるし、授業内容が理解できれば授業をサボる生徒たちの数も減る。

 全国一斉学力テストをやめてはならぬ。やめてしまったら、学力の地域間格差はますます拡大し、有効な手を打てなくなる
 この3年間の全国一斉学力テストがなかったら、根室支庁管内が北海道14支庁管内で一番学力が低いという事実を根室市民は知らなかっただろう。もちろん、市教委も学校も学力向上の具体策を講じなかっただろうことは容易に推察がつく。子供たちの学力は低いままに放置され、進学率も進学する学校の質も年々低下してしまう。それで本当にいいのか?

 全国一斉学力調査の廃止の一番の被害者は僻地の子供たちである。つまり、根室の子供たちであり、都市部以外の地に住む北海道の住民250万人だ。
 根室の大人たちはこの問題に黙していてはならぬ、わが故郷の将来のため、子供たちや孫たちのために断じて黙してはならぬ

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