SSブログ

根室の子供たちの学力低下の淵源を見た #763 [32. 市立根室病院建て替え]


 病院建て替えに関する問題を6年にわたってフォローして気がついたことがある。病院建設特別委の議事録を読んでなるほどと思った。

 一部に教育熱心な親はなお健在である。だが、全国学力テストの結果や騒がしくて先生の声すら聞こえない授業のクラスが中学校で増えていること、家庭学習習慣のない子供たちの割合が近年急増していることなどを総合的に考えると、子供を躾けれらない親が増えているのは事実だろう。
 小学校低学年で自分の子供に家庭学習習慣を躾けられない親が根室で増えているのである。学力が低下するはずだ。そして就学前の躾もその後の成長に重要性をもっている。たとえば他人の家に行ったらその家の両親に元気に挨拶をする、帰るときにも挨拶する。昔は畳だったからきちんと手をついて「こんにちは」「おじゃましました」、「さようなら」と挨拶させたし、そういう礼儀正しい子供が2割はいた。大人もそういう子供をほめた。きちんと挨拶すると気持ちの好いものである。
 ニムオロ塾では入退出のときはしっかり挨拶することになっている。黙って入ってきて黙って出て行く生徒はいない。しつけは「押し付け」である。理屈も何もない、やるべきことだからやれ、人として当たり前のことだ。
 学力低下の原因は家庭の躾にだけあるのではない。学習指導要領偏重の授業や行事が多すぎ、補習をしない学校教育にも問題がある、それもたしかなことだ。

 病院建設特別委の議事録を読んでわかったことは、ひとつは議論をリードしていたのは一番数の多いはずの保守系議員ではなく、勉強熱心にみえる党派の古い議員だった。病院建設地の候補に成央小学校を挙げた途端に、教育委員会の所管だと議論を封じている。先入見なしに議論すべき委員会で議論自体を封じ込める、それに対して何もいわない他の議員・・・
 仕事には責任が伴う。肝心なことを議論しないならそれは委員会ではなくて座談会である。道庁からの出向組みが根室の将来を考えて発言しているのに、根室で生まれ育った市議たちが根室の将来を考えているようには見えない。つい、きつい言葉で発言してしまったのを咎められて、出向組みはこう言っている。「病院に命を懸けているものですから…」、悲痛な叫びと言うしかない。
 老人医療の砦である療養病床について議論が封じられてしまった経緯についてはまだ最後まで議事録を読んでいない。H15年から病院建設準備室長が資料で提案していた。

  もっとありていに言うと、やるべき課題や仕事に対して持ち合わせている能力が足りない。だから、6年間かけて議論しても病院建て替えのポイントすらわからない。ましてや、根室市の老人医療がどうあるべきかなんてビジョンはもてるはずがない。何年議論して夢無駄だ。建て替えのポイントすらつかめやしない。
 議論は既存の機能のまま、ただ建て替えることに終始した。6年間あれば相当頭が悪くても努力次第で必要な専門知識は得られるし、ビジョンだって知っている人に聞きながら、自分なりの考えを膨らますことができるだろう。しかしそれすらできなかった。
 特別委のメンバーだけが能力がないわけではない。かれらは普通の根室の市議だ。
 今回の選挙で初当選した市議たちは大丈夫だろうか。確かな見識をもっているだろうか?怪しい雲行きになってきた。市議会は新市議を含めて一人の反対もなく「全会一致」で2度目の基本設計2900万円の補正予算を通してしまった。

 こうしてみてくると小中学生の学力低下の問題だけが孤立して存在いるのではない。市議をはじめとする私たち大人の知的レベルが下がっている。根室の将来ビジョンを描こうにも必要な知識もビジョンも議論できないほどに劣化している。もちろん、そうではない市民も多くいるだろう、しかしそういう人々は冷めてみているし、市議にも立候補はしない。あきらめている。

 もう一度整理してみよう。子供たちの学力低下は、学校入学前に子供を甘やかして育て、学校入学後も家庭学習習慣を躾けられない親が増えていることに原因の一端がある。繰り返すが、分数や小数の計算ができない子供たちが半数近くもいるのに学校が補習をしないことも原因の一つに数えられる。
 しかし、議事録を読んで頭に浮かんだのは、市議会議員ばかりでなく、根室の大人たちが劣化しているのではないかという疑問だ。小中学生の学力低下が著しい(全国一斉学力テストによれば、全道14市長管内で最低)のは、根室の大人たちが劣化していることの反映ではないのか?

 根室の子供たちは大人に囲まれて育っている。わたしたちがしっかりしなければ、根室の子供たちの学力を上げることはできない。

 そういう意味では、病院問題もおろそかにはできない。どこかで根室の子供たちの学力低下につながっている。

 子供の躾は厳しくしよう。とくに幼児期と学校入学後の3年間がすべてを決めているように見える。
 学力は高校を卒業して根室を離れた子供たちが都会で戦っていくための武器の一つである。
 大卒の学歴がないと大企業のほとんどが入社試験さえ受けさせてくれない現実がある。門前払いの現実がある。
 地方から都会へ出て働く子供たちは最初からハンデがある。自宅から通勤できないからだ。住むところも、食費も自前だ。そのうえ学歴で大きな差ができては辛すぎる。
 親から子へ、そしてさらにその子供へと格差が固定化してしまう。

 躾に厳しい、教育熱心な親たちをもっともっと増やそう。私たち大人がもっともっとしっかりしようではないか。
 具体的なやりようはいくらでもある。根室で生まれ根室で育ったわたしたちがその責任を果たそうではないか。


nice!(0)  コメント(6)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 6

サリー

塾長のブログを読めば読むほど、いろんなことを考えさせられます。
市立病院の件や教育に関しては、私は勉強足らずなため、よく理解できないところがありますが、不思議に思う点はたくさんあります。
市は、病院経営のプロである方にアドバイスを求めるなどしたことはあるのでしょうか?

教育に関しては、コメントしきれないぐらい腹ただしい面があります。
教育の現場であるはずの学校で「勉強」が十分にできず、さらに塾に通わなければいけないという 日本の教育システムに疑問を感じます。
必要ないこともまで詰め込ませ、肝心な教育がなされていない。
集団で全部同じ方向に向かせようとする日本の教育には、うんざりします。
勉強をきらいにさせる要因は、学校側にもある。
勉強をしたくなくなる環境は、家庭にある。
とも、いえませんか?
根室で一番でも、東京に出たら最下位だった。というような、井の中の蛙レベルで、いまの根室は成り立っているような気がします。
市における いろんな“○○長”という肩書きを持つ方たちのレベルを見れば、よくわかります。
根室を良い方向に変えるためには、持ちつ持たれつつの癒着だらけの狭い世界で生きてる地元人ではなく、ヘドロをすくって浄化してくれる外部からの力は必要なのかもしれませんね。
by サリー (2009-10-18 14:21) 

ebisu

サリーさんこんにちわ。
カオット楽しそうでしたね。
ツーショット、いい笑顔でした。ごちそうさま。
三友牧場も、おししそうなご馳走とワインが並んで・・・

>市は、病院経営のプロである方にアドバイスを求めるなどしたことはあるのでしょうか?

病院問題は「市立根室病院建て替え」というカテゴリーにまとめつつあります。
病院経営のプロではありませんが、病院経営コンサルタントの長隆氏(公認会計士)を招聘して、市役所の幹部が講演を聞いた記録が、このURLをクリックするとみれます。
http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/image/69444edddc9a05b2492570c700077f92/$FILE/kouenkaikiroku01.pdf

この中で長氏は
「1床1500万円、150床ですと20億あれば十分なんですが・・・」
と発言しています。
ところが、病院建物の建築予算は39億円です。何のための病院コンサルタント招聘だったのでしょう?
特別委メンバーも見ているはずですが、だれも39億円もの建築費に異論をさしはさんでいません。
不思議ですね。

私のブログにも関連記事を載せています。
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/archive/20090730

画一的な教育については、一概にダメとは言えないような気がしています。
数学でも英語でもある程度のベースは画一的でいいと思います。基礎ができてからでないと、自由な発想も根のないものになりかねません。
基礎をしっかり身につけるには修業ともいうべき期間が必要と考えています。それを我慢してやり遂げた後に、自由な発想でやればいい。
ピカソだってはじめから抽象画ではなかった。若い頃は実に丹念なデッサンをしています。
だから、今の子供たちは勉強が嫌いになるというよりも、基礎を身につける修業が我慢できない。我慢力が弱くなっているような気がします。
家のトイレ掃除を手伝わせたり、お風呂の掃除をさせることなどはとってもいい家庭教育ですよね。
子供の芯の部分は家庭で育まれるような気がします。
そこを意識して取り組む家庭が増えて欲しいと思います。

それから、私は塾をやっていますが、塾に来ている生徒たちが自立して自分で勉強するようになることを願っています。そうなったあとの塾の役割は、予習してきた生徒の疑問に答えたり、一緒に考えることです。
いずれはみんな一人で考え行動するようになる。
僭越ですが、自立してきちんとそういうことのできる人間に育てたい。
by ebisu (2009-10-18 17:35) 

クラブナビ

読売新聞の社説に、学力上位の秋田と学力下位の沖縄の教員が交流を始めたとありました。教員の交流の先には児童たちの交流もぜひ進めて欲しいと考えます。
北海道の市場に地元の小学生が訪れ、インターネットを通じてその模様を沖縄の児童たちに流し、沖縄の児童がその映像を見ながら学習すると言うイベントがありました。
さらに沖縄の教員が給食の食材を求めに北海道を訪れたり、雪だるまを冷凍保存して輸送するケースもあります。
このように地域外の情報収集に意欲を持つ児童が多いはずです。
300円の遠足では経験できない程の異文化体験を、学習にも活かせればと常々思っております。
by クラブナビ (2009-10-18 18:35) 

ebisu

全国一の秋田県と沖縄の教員交流ですか、いい刺激になるでしょうね。
オープンマインドで他から学ぶ、大切なことです。

先日、市議会の教育長答弁を聞いてきましたが、いつか他県の実践からも学ぼうというオープンマインドをもった人が現れることを祈りたい。
生徒同士のインターネットを利用した交流は面白いアイデアですね。
沖縄には銀色の足の長いウニがいる。根室のバフンウニとは違って食べられない。とげが刺さると毒があって腫れます。
写真で情報交換したら、同じ海でもまるで違うので喜びそうです。どこかの小学校がやらないかな。中学校でもいい。生徒に話してみましょう。興味を持つものが現れるかもしれない。
今日は一日中雨でした。断続的に滝のような激しい雨がふっていました。カミナリもね。昔はこのような激しい雨の降り方はなかったように記憶します。日中なのに時々照明が必要なほど空が暗くなっていました。
by ebisu (2009-10-19 00:08) 

ebisu

病院コンサルタントの過去ブログもう一つ見つけました。


 10月8日北海道新聞朝刊根室地域版22面によると、公認会計士長隆さん(67歳、元公立病院改革懇談会座長)による市立病院の経営再建をテーマにした公演が6日(月曜日)商工会館で開催されたという。「市保健医療対策協議会の開催で長谷川俊輔市長ら市幹部、市議ら約50人が耳を傾けた」とある。

 「十年前に建て替えを勧めたが、まったく進んでおらず、遺憾だ。医師招聘がうまくいかなかったのは、大学が医師を送り込むのにふさわしい労働環境を、市が整備できなかったことが大きい。おんぼろだから来ないわけではないが、あまりにひどい。来年着工し、20ヶ月ぐらいで早くオープンできるような姿勢を全国に示せば、医師招聘も確実さを増す。市が目指す150床はほんとうに必要なのか。無駄を省けば、百床の病院が10億円ちょっとでできる」

6年ほど前、現市長が助役時代に、外部コンサルタントに数百万円支払ってつくった病院建て替え概算見積もり90億円はいったいなんだったのだろう。

⇒URL
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-08
by ebisu (2009-10-19 00:39) 

サリー

無駄が好きで合理的なことがきらいな市なのですね。(困惑)

勉強をやる気にさせる 塾長のような教育者がもっと増えることを願ってます。

by サリー (2009-10-19 17:54) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0