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"Flu fears spread as cases stack up" (ブタ・インフルエンザ関連) [35. 感染症および自己免疫疾患]

"Flu fears spread as cases stack up"

 4/30のジャパンタイムズの見出しである。来週授業で使うことにしている(看護師志望の高校生が数人いるので、この関連記事はいくつか授業で採り上げるつもりだ)。
 「患者が増えるにつれて、インフルエンザの恐怖が広がっている」
 ブタ・インフルエンザは"swine flu"という、なにやら美味しくて高級そうな感じがする単語だ。s-wine=special wine(特級ワイン), supreme wine(至高のワイン)というような…

 さて、横浜の高校生が"swine flu"であると5/1未明、1時15分に舛添厚生労働大臣が発表した。横浜市には連絡が取れないと怒っていた。おそらく確認連絡だろうが、連絡が取れないのになぜ発表ができるのか、疑問に思った人も多かっただろう。舛添大臣の判断ミスが濃厚だ。これほど重大な情報を未確認のまま公表してしまった。横浜と東京は1時間の距離である。電話が通じないならなぜ行って確認しない、仕事だろう?

 ブタ・インフルエンザであるかどうかは、2段階の検査で判定される。
  ① スクリーニング検査(A型かどうか)
  ② 確認検査(H1型であるか否か)

 エイズ検査もスクリーニングしたあと遺伝子検査ウェスタン・ブロット法による確認検査をやっていた(1990年頃)。ごく普通のスクリーニング⇒確認検査という手順である。
 スクリーニング検査は広く網を張り、A型を逃さないように設計されているので一定の確率でfalse positive(擬陽性)が含まれることは常識である。
 問題はこの段階で発熱や呼吸不全などの症状があれば患者を隔離し、患者の立ち寄り先の消毒や周りにいた人の追跡調査を開始し、ある範囲の人々の隔離をするかどうかだ。早ければ早いほど感染拡大を防ぐことができる。

 不可解なのは横浜市衛生当局のPCR検査で「H1が陽性と読めるという結果がでた」という内容にある。午後11時ずぎには「PCR検査は解析不能」をのファックスを横浜市が送っている。
 確認検査に使われる遺伝子検査の一つであるPCR検査はもう20年も前にルーチン検査として導入された検査であり、ある外資製薬メーカの特許が成立している(国内の検査はロイヤルティを支払って行われている)。PCR法は、私の記憶に拠れば検体を温度コントロールする装置に数時間かけて数百万倍に標的遺伝子を増幅するだけの単純な検査である。
 結果についてもバンドを読むだけであるからとくに高度な技術や知識は不要な筈である。その検査で「H1が陽性と読めるという結果がでた」などということは通常あり得ない。同じパターンでバンドがでていればH1型であり、そうでなければH1型ではないということだ。横浜市側は「検体量の問題で、最初からPCR検査は解析不能だったが、電話で伝え方が悪かったかもしれない」と言い訳している。検体量の不足で解析不能という話しはPCR検査については通常あり得ない。少量の検体を百万倍のオーダーで増幅するからだ。受けた厚生労働省側の担当者もPCR検査についての知識がなかった可能性が強い。あればおかしいと思うはずだ。
 だから、なぜ情報を確認しなかったのか、厚生労働省側の担当者の仕事も結果としては杜撰としか言いようがない。

 PCR検査で問題になるのは、これも記憶にある限りで申し訳ないが、コンタミ(contamination不純物あるいは他の検体、環境物質や検査者自身によるなんらかの汚染)である。検査室の普段の清掃や検査衣服など検査室内に汚染物室を持ち込まない管理の徹底がなされていなければならない。5S運動は実施されているのだろうか?横浜市当局の検査室を追跡調査したほうがいい。

 横浜市側は厚生労働大臣が連絡もなしに突然公表したことを批判している。お互いに泥仕合の体をみせている。こんなことでパンディミックに対応できるのだろうか?
 幸い、まだSARSのような強毒性にはなっていない。パンディミックが起き、ウィルスが強毒性に変異したら呼吸不全を起こす患者が根室でも数十人単位で発生する可能性がある。呼吸不全症状を起こしたら薬は効かない、人工呼吸器でしか治療できないが、以前のブログで書いたようにその操作には一定のトレーニングが必要である。
 患者の命が助かるか否かは、ひとえに患者のそばに人工呼吸器とそれを操作できる看護師がいるかどうかにかかっている。
 市立病院の年間赤字10億円を5年も放置したので、新型インフルエンザのパンディミックに備えてわが町は必要な台数の人工呼吸器を購入する余裕がなかった。全国のどの自治体も似たり寄ったりの状況だろう。仕事は準備が7割だ、急げ。

 時間はまだある。冬の到来まで関係機関の連絡の取り方、検査の仕方、治療用医療機器(人工呼吸器)の増産と配備など、さまざまな準備が要る。国費で賄う部分と地方自治体で負担する部分を具体的に協議すべきだ。

 2009年5月2日 ebisu-blog#567
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