釧路医師会病院はどうなる(地域医療をかんがえる) [26. 地域医療・経済・財政]
釧路医師会病院はどうなる
釧路医師会病院に行ってきた。今回の半年定期検査が最後になった。診察の最後にドクターが転院先をどこにするか私に希望を尋ねる。もちろん地元の専門医にお願いした。もともとそこからの紹介で釧路医師会病院へ入院したのが始まりだから。
カルテその他は来月中旬ぐらいに送ってくれるそうだ。他の患者分と合わせてそれぞれの転院先に一括して発送するのだろう。
4月からは整形外科病院に衣替えのようだ。病棟に張ってある写真付きのスタッフ紹介ボードには見知った病棟の看護婦さんがすでに数名いない。エックス線CTは2年ほど前に入れたばかりの最新鋭機だが、整形外科ではほとんど必要ない代物だろう。MRIもだ。
整形外科病院になるなら、入院病棟もほとんど必要なくなる。1室4ベッド、トイレ付きの病室は快適だから、そこが空きになるのはもったいない。根室にこの建物をそのまま欲しいぐらいだ。すくなくとも病院建設問題は解消する。建物を丸ごと移す魔法はないものだろうか?
残っている医師もすでに行き先が決まっているようだ。残っているスタッフが新病院でどれほど抱えられるのかも心配である。
この病院は道東で消化器内科と消化器外科を揃えた中核病院である。阿寒のホテル鶴賀が顧客満足度で全国No.1だが、釧路医師会病院も顧客満足度では道東一かもしれない。じつにいい病院だ。道東が誇れる病院が経営難で消えてしまう。こういう事態に陥ったのは、医者がいなくなったことがきっかけだが、それだけではないだろう。自治体病院と違い一般会計からの数億円規模の赤字補填はない。いい医療と経営のバランスは難しい。淺川院長を経営面で支える、経理に堪能な経営専門家が必要だった。ニーズは大きいが、しっかりとしたデータに基づいて経営改善を提案でき、理解と納得をベースに医者と対等に渡り合える人材は非常に少ない。特色のある良い病院が3月末で道東から消える。患者の一人としても寂しい限りだ。はっきり言って、変わりうるレベルの病院(診療機能、施設管理、CSを意識したスタッフの教育の3点で)はない。
さて、前を向いて語ろう。
わたしは道東の地域医療に責任をもつ「道東医科大学」が欲しい。
札幌と旭川にあって、道東にないのはおかしい。帯広・釧路・網走・根室支庁と3管内は住民は50万ほどいるのではないだろうか。面積をみても北海道の三分の一ほども占める。国立医科大学がひとつあってしかるべきだ。
ついでにもう一つ。根室出身の医師を増やすために、奨学金制度を設けるべきだ。医学部を受験可能な優秀な生徒は各学年に10名近くいる。自前で医師を育てなければ、30年後の根室の医療は崩壊しているかもしれない。30年前にそうしなかったことが今日の窮状を招いている。
3000万円を限度として、市の病院に60歳までに8年間の就業義務を課すことで、返済を免除すればいい。千葉県にそういう制度があるというので、参考にすればいい。
「成績が良いだけの医者なら要らない」という現場の声を耳にした。この半年ほどいろいろな情報が流れているが、医療スタッフも強いストレスかにあるのだろう。どういう意味かは聞きそこなったが、状況から考えて「地域医療を守る覚悟をもった医者が欲しい」ということもあるのだろう。しかし、声の感じからはそれ以上の意味合いが含まれていることを感じた(外科医のDr.ゴルゴは診断のために内視鏡技術を習得して「消化器専門の総合医療技術者」となって道東のある地域の医療を支えてくれるはずだと伝えると、にっこり肯いていた)。
中標津町立病院の元院長も新聞でのインタビューに同じことを答えていた。地域医療に必要な医者の、いいや求められる医者になることのなんとハードルの高いことよ。どんな仕事もその仕事を選択した志の有無が問われる。
内科の副院長、外科の執刀医のDr、手術を見守ってくれていた院長、手術室担当のナース、病棟の看護師さん、いつもトイレをきれいに清掃してくれていたスタッフの皆さん、毎日3度お茶を入れてくれたおばちゃん、皆ありがとう。
m(_ _)m
2009年2月18日 ebisu-blog#553
総閲覧数:81,077 /450 days(2月18日12時15分)
医療の話を考えながらネットサーフィンをしていたら,
こんな記事が目に入りました。どうしても読んでもらいたいので載せました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090212-00000002-jct-soci
あきれて吹き出してしまいましたが,なんだか後半を読んだところで泣けてしまい,今晩の晩酌が濡れ濡れです。
鳥取県と言えば国境付近の「島」関連の話でなにかと揺れる県。
大丈夫か日本?と叫んでしまいましたが,同時に
大丈夫か根室!?と考えてしまいました。
by クラブナビ (2009-02-18 18:56)
まったく・・・学校教育はどうなってしまうんでしょうか?
文科省が悪いのか?
教育委員会が悪いのか?
はたまた、現場が悪いのか?
すみません、酔ってます。
by Hirosuke (2009-02-18 23:34)
絶海の孤島の話か、はたまたおとぎ話か?
現実にあるんですね、鳥取県ですか。級長(僕の時代はそういいました)のいない小学校がある。
ぜんぜん違った考えで運営される小学校もあるのかな?と思いきやそうではない。人権保護団体が差別だと主張して学級委員長を廃止した。
人権保護団体の人とお話してみたいものです。いったい平等とはなんですかと。
人間平等なものは何一つない。それが現実です。学力も経済力も体力もすべてが異なる。善い悪いの問題ではない。それが現実。
私の耳にはどこか浮世離れをした話しのように響きました。
あ、まだ酔っていません。
これからちびっと一杯。
by ebisu (2009-02-18 23:52)
根室の医療が論点の記事だったんですよね。
ずれたコメントで、すみません。
by Hirosuke (2009-02-19 01:31)
まず人が最初に受ける社会的活動が教育です
教育はやがて社会を創ります
教育こそ要であると常々思っております
今の医療界は研究レポートにばかりに高い点数を与え
臨床実績は二の次
そして教育実績などさらに三つ次です
前述の要を考えれば順位が逆だと思います
お茶を三度入れてくれるのも,それに感謝の意を持つのも,
素晴らしい教育(しつけ)の結果だと思います
by クラブナビ (2009-02-19 10:11)
>今の医療界は・・・・
僕の読んでる外科医さんのブログでも、同様のことが書かれています。
http://kekimura.blog.so-net.ne.jp/2009-01-24
by Hirosuke (2009-02-19 23:54)
鳥取県の話題が日経BPネットで大きく取り上げられていました。
ご参考まで。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090218/132811/
by Hirosuke (2009-02-21 11:35)
こういうのは朝日論調だけではなく
産経新聞でも取り上げてもらいたい
赤旗だったらどのように切り込んだのかも興味ある
by クラブナビ (2009-02-21 18:27)
外科医さんのブログを読んでみました。
教育・臨床・基礎研究の3分野
医学では教育がないがしろになっているというのが、その外科医さんの見解のようです。
医学の場における教育とは、教える側が培ってきた技術を医学生に伝授することにあるようですね。
教える側の技倆の程度が当然に問題になりそうです。技倆が高くないと伝えるべき技術や判断の根拠・基準がしっかりしてこない。
ここからは、技倆の高い人が教育に携わるべきだという結論が導かれそうです。
でも、いろんな技倆の人が教育に携わってもいいのではないかという気がします。
教えながら、技倆が磨かれるという側面もあるのですから。
学校教育や、私塾の教育も同じですね。
教える側に、たえざる努力と工夫、そしてそれを支える情熱があればなおいい。
教育行政ですらそうかもしれません。
by ebisu (2009-02-21 23:43)
>教える側に、たえざる努力と工夫、そしてそれを支える
>情熱があればなおいい。
同感です。
上が、行政が、制度が、子供が、保護者が、アレが、コレが・・・。
言い訳、反論、屁理屈、詭弁。
口だけやたらに動かす奴。
そういう奴は動かない。
黙って何も言わない奴。
そういう奴も動かない。
まずは、自分が動くべし。
自分で動いて示すべし。
常識破りの方法で。
掟破りの方法で。
より良いモノは常に在る。
どんなモノにも必ず在る。
by Hirosuke (2009-02-23 23:25)
九州 13231995人 九州大学医学部 福岡大学医学部 久留米大学医学部
長崎大医学部 佐賀大学医学部 大分大医学部
宮崎大医学部 熊本大医学部 鹿児島大医学部
1校が140万人の医療を支えてる。
四国 4128476人 愛媛大学医学部 徳島大学医学部
香川医科大学 高知医科大学
1校が103万人の医療を支えてる。
北海道 5598776人 北海道大医学部 札幌医科大 旭川医科大
1校が186万人の医療を支えてる。
ちなみに、釧路、根室、十勝、北見・網走の総人口は100万を超えます。
道東に医科大がない方が不自然ですよね。
by NO NAME (2009-04-04 21:39)
いい着眼ですね。お名前がありませんが、他地域とデータ比較をしてくれました。ほんとうに思いがけないデータをありがとうございます。
釧路、根室、十勝、北見、網走の総人口は100万人を超えていますか。
やはり道東医科大学誘致運動が必要ですね。市会議員や市長は積極的に動いて欲しいものです。存続が決まった根室支庁もね。働いている地域のために、故郷のために仕事をしましょうよ。
いいデータだから、根室市民にも釧路市民にも帯広市民にも北見市民にも網走市民にもこのデータを知ってほしいですね。
道東に地域医療を支えるためには、旭川医大でもなく、北大でもなく、札幌医大でもなく、国立道東医科大学が必要です。
by ebisu (2009-04-05 00:33)
話題を脱線させてばかりですが,NPO法人の数も気になっておりました。
特にわがふるさと根室の・・・
昨今のNPO法人は細分化・縮小化されてきており,より地域に,ニーズに対応されるようになった。
羅臼も別海も3,中標津は6法人。
果たして根室は?
泣きたくなるので書きません。。。(涙)
ちなみに他の市では歌志内が0,三笠が1なのですが。
by クラブナビ (2009-04-08 18:07)
検索してみましたが、根室のNPO法人がいくつあるのかわかりませんでした。クラブナビさんいくつあるのですか?
NPO法人ではありませんが、4/9の道新根室地域版によれば、中標津に新たな一般社団法人「イープロジェクト」が設立され、地元食材を使った食堂「ミルクホルスタイン」が夢の森公園ビジターセンター内に開業するそうです。まちづくり団体の東方企画が社団法人化したと新聞記事にありました。
中央を当てにせずに、郷土で採れる物を使って、自分たちの頭で考え、他に依存することなく行動している人々がいます。
渋谷に根室の水産物を主体に出す居酒屋ができたというニュースも先日載っていました。経営しているのは根室出身の人ではありませんが、ありがたいことです。
明治維新から130年が過ぎ、もう中央依存の思考から脱却すべきときなのでしょう。
中央を当てにせず、隣接地域の人々と共に考え、主体的に行動する根室人が若い人を中心に増えて欲しいと思います。
by ebisu (2009-04-09 23:53)
こんにちは
お返事が遅くなりまして申し訳ございません。
根室は1です。
http://www.npo-hiroba.or.jp/search/index.cgi?c=area&sk=20&PREF=01
いかにも島国らしい気性で,自身のテリトリーというか考えが及ぶ範囲が狭いのが根室人の特徴のように思えます。
良し悪しは別にして・・・。
地名商法ですが,根室だけではなく,地方の地名を商的に利用する業者が後を絶ちません。ネガティブな表現をするのは,誠意あるネームバリューを展開していない業者があまりにも多いからです。
だったら,根室の名を名乗るなと憤慨する場面があります。
名乗る以上,精神の一端でも継承して欲しいと。
そういえば中国では数多くの「地名」ゆかりの商標登録がすでにされているといいます。もう手遅れかもしれませんが,危機意識を持つべきです。
近江商人の言葉を,今一度思い出して欲しいのですが,そんなことはどこ吹く風か・・・悲しい現実です。
話が変わりますが,
北海道は国策で開拓されてきた土地です。ソフト面では自力を頼りますが,ハード面では政府を頼る機会が多かったことでしょう。
北海道の人は中央を依存する習慣が多すぎると思います。
地域としての自意識を持たなければ,隣の国(藩)に潰されてしまうという危機意識を学ぶ経験がありません。
特に根室は県境がそのまま海という地政学上特異な条件をもつ国(?)です。攻防,競争,共存というバランスを学ぶトレーニングに乏しい若者が多くなりがちだと思います。
by クラブナビ (2009-04-14 18:23)