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金融危機回復後の日本経済の行方 [A4. 経済学ノート]

金融危機回復後の日本経済の行方

 オバマは就任演説で、強欲な金融資本主義とはおさらばして勤勉・誠実・フェアプレイなどを基調とする価値観への転換を説いた。このパラダイム・シフトははなはだ困難である。米国にもっとも欠けていた価値観への転換がそう簡単にできるはずもない。米国の経済構造を支えていた価値観だから、パラダイムシフトは経済構造の変革を意味している。

 日曜日のサンデープロジェクトという番組にノーベル経済学賞受賞者のクルーグマンが出て、金融危機以降の経済不況が回復するのに4~5年かかると言っていた。
 彼の推定では、米国金融機関が被った損失は2兆ドル、不動産部門が被ったあるいは今後も含めて被るであろう損失が8兆ドルあると推定していた。両方あわせて10兆ドル、円に直すと900兆円である。日本人の金融資産が1300兆円だから、その70%近くが弱肉強食と強欲を基調とする米国経済の破綻で失われたことになる。

 假りに、クルーグマンの言うとおり米国経済の回復に5年かかったとしよう。外需頼みの日本経済は不況により内需が拡大するはずもないから、5年間は経済が縮小したままだろう。

 5年後の2014年に日本経済はどうなっているだろう。
 大雑把に年金支払総額を計算すると、
   5年×150万人(純増分)×一人当たり120万円=9兆円
年額で9兆円年金支払額が増える。
 国の人口推計によれば2015年の65歳以上の人口は3500万人である。これを一人平均120万円で年金受給額を計算すると
   3500万人×120万円=42兆円

 年金基金の積み立て残高は150兆円といわれているが、このところの株価下落や円高でどれくらい毀損したかは公表されていない。日経平均の下落幅を考えると国内株式市場で運用されていた資金を100兆円とすると半分くらいなくなっているかもしれない。毀損がゼロでも42兆円の年額支払の4年分もないのである。厚生年金加入者は激減しているから、年金支払不履行が近づいている。
 国の税収はいまは50兆円あるが、経済不況と人口の高齢化を反映して、税制を変えない限り40兆円以下へと逓減していくだろう。

 2009年度政府はまた大幅な赤字国債を発行して景気刺激をしようとしている。人口の高齢化に伴い年金支払総額が増え、医療費が増えるから、この借金は返せるはずがない。返せるはずのない赤字国債発行は1円もやってはいけない。
 国家財政破綻は現実の問題で、秒読み段階に入っているといえる。オバマの就任演説は麻生が昨年9月の所信表明演説で言うべきことだった。金融危機後にも麻生総理にチャンスはあった。仕事を分かち合うワークシェアリングの導入、製造業への派遣禁止、利益よりも従業員重視の経営、企業は人なり、伝統的な価値観に帰れ、と言うべきだった。

 勤勉・正直・誠実などどれもものづくりを主体とした職人の仕事観そのものである。日本には仕事の種類だけ職人の種類があるということは裾野が広いということだ。いろいろな業種で同じような「職人気質」の価値観で働いている人がいる。
 苦しい時期はまもなく来るだろうが、日本人はそうした試練を普遍性を持つ伝統的価値観で乗り越えることができる。2世議員(吉田首相の孫だから3世か)の麻生首相に期待はできない、国民一人ひとりが腹を括るしかない。

*9/20 #307 『7年後に国が支出する年金給付総額はいくらか』
   http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-09-20
 10/10 #346 『これから10年間の日本経済のシナリオ』
   http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-10


  2009年1月27日 ebisu-blog#506
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