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オバマ大統領就任演説を読む(1) [22] [B3. オバマ大統領就任演説を読む]

オバマ大統領就任演説を読む(1) [22]

(22)  For as much as government can do and must do, it is ultimately the faith and determination of the American people upon which this nation relies. It is the kindness to take in a stranger when the levees break, the selflessness of workers who would rather cut their hours than see a friend lose their job which sees us through our darkest hours. It is the firefighter's courage to storm a stairway filled with smoke, but also parent's willingness to nurture a child, that finally decides our fate.

(22) 政府の能力や義務はつまるところ、この国がよりどころとする米国民の信念と決意なのだ。堤防が決壊したときに見知らぬ人を受け入れる親切心、暗黒のときに友人が仕事を失うのを黙って見ているくらいなら自らの労働時間を削る労働者の無私の精神。煙に包まれた階段を突進する消防士の勇気、そして子どもを育てる親の意志。これらこそが、最後にわれわれの運命を決定付けるのだ。

  思い切ったことを言うもんだなと驚いている。しずかな語り口の中に、これから彼が何をやろうとしているのかが垣間見える。果たしてほんとうにできるのだろうか?何箇所か大統領就任演説を一部抜粋して和英対訳で掲載して分析してみたい。これが第1回目である。

 和訳は22日付北海道新聞6面に載ったものを転載した。英文は23日付ジャパンタイムズ4面に載っていたものを転載した。
 (22)は私がつけた段落番号である。冒頭の和訳は適確だ。"can do" "must do"の助動詞の意味するところが「能力」と「義務」というように適確な日本語に置き換えられている。読売新聞の訳ではこの箇所は「政府はやれること、やらなければならないことをやるが」となっている。for as much asに重点を置いた訳だろう。この箇所は読売の訳のほうに軍配を挙げたい。わたしの拙訳も併せて記す。

「政府はやれることややらなければならないことだけをやるに過ぎないのだから、無視の精神はつまるところ米国がよりどころとするの国民の信念と決意でもある。」

  構文上とくに難しいところはないと思うが、一つの文章に関係代名詞が二つ使われているところが、高校生には見慣れていないところかもしれない。関係代名詞が一つの文に複数回使われるこのような文は教科書では滅多に出てこないが、新聞英語ではしばしば出てくる。
 "it"についてはこの文だけを見てもわからないので注記しておく必要があるだろう。(21)段落にある文の"this spirit"を受けている。具体的には"the spirit of service"「奉仕の精神」である。公の物・事への無私の奉仕の精神が大切だとオバマは説いている。

 さて、大統領就任演説では選挙期間中よく使われた"Yes, we can."が一つも使われていない。アジテーションがまったく影を潜めた地味な演説であった。そこにオバマ新大統領の決意を感じた人が多かったのではないだろうか。
 イラクからの撤退、アフガンへの派兵増強、イスラエルへの支持表明、グァンタナモ強制収用所の撤廃声明、今後の金融危機対策、財政危機など課題は山積みである。ブッシュがぐしゃぐしゃにした戦争・経済・財政の後始末をやらねばならない。

 経済対策のうち、全米自動車労組に選挙で応援をもらった手前、ビッグスリーへの対応策が難しい。オバマ新大統領は「暗黒のときに友人が仕事を失うのを黙って見ているくらいなら自らの労働時間を削る労働者の無私の精神」を国民に求めている。その無私の精神をもてるかどうかが「最後にわれわれの運命を決定付けるのだ」と。
 全米自動車労組が他の産業の労働者に比べて格段に優良な条件で働き、年金や医療を受けているが、それを棄てよと言っているようにも聞こえる。
 具体的に何が出てくるのか数ヶ月待たなければ分からないだろうが、楽な道がないことだけははっきりしている。市場は30%以上縮小してしまっているので、3社が揃って生き残ることは不可能である。どのような手順を踏んで、理解と納得ずくでいずれの会社を潰すのだろうか?
 その後に「暗黒のときに友人が仕事を失うのを黙って見ているくらいなら自らの労働時間を削る労働者の無私の精神」が求められるのだろう。
 素直に読めば、潰れた会社の労働者を生き残った会社の労働者が自らの労働時間をカットして受け入れよ、それも自分たちの意思でそうすべきだと説いているととれる。そこまでしないとならないほどの経済危機だと。

  2009年1月25日 ebisu-blog#503
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