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センター試験簿記過去問題「社債発行差金」勘定(考) [62. 授業風景]

センター試験簿記過去問題「社債発行差金」勘定(考)

 事務情報科や商業科の生徒がセンター試験を受験する場合、数ⅡBに替えて簿記で受験できる。
 生徒から一昨日、平成18年度のセンター試験の簿記問題に関する質問があった。事務情報科や商業科の生徒でセンター試験を受ける人に共通の問題なので採り上げたい。手元に問題がないので、記憶で書くが、受験する生徒諸君は、必ず問題文を見て確認してもらいたい。

 社債の問題である。額面総額200で社債を発行し、発行価額(単価)を計算する問題だった。4月1日の仕訳である。生徒は発行条件が書いていないがどうしたらいいのか分からないということだった。問題文の前のほうを見ると、直前3月31日付けのB/Sが添付されている。そこには社債発行差金勘定残高が10残っている。発行日は3年前と問題文にあるので、6年満期の社債だから、社債発行差金は半分償却され、10残っていることになる。したがって、当初の社債発行差金は20計上されていたことになる。逆算すると発行価額(単価)は90である。
 生徒は「社債発行差金」勘定を見ても意味がわからなかった。最近の日商簿記2級のテキストには載っていない処理である。もちろん、学校でも習わない。武田先生の『財務諸表論』7版(現在は8版である)にはちょっとだけ説明があった。六法全書で商法と会社法を調べたが規定は見当たらなかった。見落としたのかもしれない。
 
 いつかは知らないが、社債の処理がこの数年の会社法改正で変わったようだ。旧商法では287条に規定があった。社債発行差金勘定で額面と発行価額との差額を繰延資産計上しておき、毎期社債発行差金償却勘定で均等額を償却する、これが40年以上続いた会計処理である
 現在は、発行価額と額面の差額は、[社債利息/社債]という決算処理仕訳で毎期均等額が計上され、社債勘定は額面金額に近づいていく繰延資産処理をやめて、評価勘定処理を選択したことになるだろう。

 著書『財務諸表論』によれば、武田隆二先生は額面金額との差額を社債発行差金勘定で処理し、繰延資産に分類することに反対のようだ。しかし、[社債利息/社債]の仕訳は重大な欠陥があることを見落としておられるように思う。B/S上に確定債務である社債金額(額面)が表示されなくなる。「事実を事実どおりに仕訳する」「事実を事実どおりに表示する」立場からは、このような仕訳を容認するわけには行かないだろう。私は反対である。
 君たちが大学生となったら、簿記技術の根底にある「簿記思想」あるいは「簿記哲学」にまで考えを深めて欲しい。どういう仕訳を是とし、どういう仕訳を否とするか、そこが明確でなければ簿記学はふらつく。一度もその講義に接した事はないが、安平昭二という学者はその辺りがしっかりしていた簿記学者であった。残念ながら故人である。1年半前に74歳で亡くなっている。社債処理にどういう意見をもっていたのか調べてみたい気がする。しかし、それは大学へ入った君たちに任せよう。ロートルの出る幕ではない。

 過去の処理法も知っておかなければ、センター試験の過去問が理解できないようなので、ブログで解説した。事務情報科や商業科から小樽商大を目指す生徒、がんばれ!センター試験まであと3日、試験日は17日だ。

 2009年1月14日 ebisu-blog#487
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