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漁師のストライキ:燃料高騰に抗して [91.経済]

      漁師のストライキ:燃料高騰に抗して

  全国的な規模で漁師が休漁に入った。燃料(A重油)の値上がりで漁をしても燃料代の下になる事態が起きている。昨年7月には76円/ℓだったのが、110円/ℓを超えている。テレビでは、イカ漁師が660ℓ給油し、78000円支払って出漁したが、水揚げは5万円台だった様子が映し出されていた。魚ばかりではない、昆布も製品の乾燥に重油を使うから影響が大きい。魚価や昆布の価格が上がるまで数年間辛抱できた者たちが利益を享受できるだろう。貯えの少ないものは転廃業を余儀なくされる。漁業においても「大淘汰の時代」が始まった。

 燃料の高騰は家計も直撃する。根室は厳冬期の2月が一番燃料灯油を消費する。家の広さにもよるが、お風呂と暖房で450ℓ/月使ったら現在の単価114円では51300円である。標準的な広さでは200ℓ~400ℓ/月だろうか。室温を下げ、お風呂の回数を減らす家庭が増えるだろう。
 しかしこれ以上値上がりすれば、国民年金で暮らす老人たちの間で凍死者が続出しかねない。市町村の補助にも財政上限度がある。
 北海道から温暖な地方へ人口流出がはじまる可能性がでてきた。だが、住んでいる家を棄てて新たに温暖な地で住居を確保できる余裕のある老人は非常に少ないと思われる。若者から流出が始まると言うことだろうか。道内市町村の高齢化が加速しかねない。

 さて、燃料価格はこれからどうなるだろう。元に戻るとも思えない。とすれば、休漁に追い込まれる漁師が増え、転廃業が増える。そのあと市場への魚の供給量が減少し、魚価がじわじわ高騰し始める。
 農業もハウスものは同じだ。燃料代が高騰すれば採算上ハウス栽培ができなくなる。市場への供給量が減り、値段が高騰する。
 魚も農産物も、値上がりするのは供給量が減少したあとだ。海外から安いものが入ってくれば、国内業者が潰れていくだろう。魚や穀物の国際相場も値上がりを続けるから、どの程度国内の生産者が倒産するか分からないが、メカニズムはこうなる。

 原油高騰⇒国内生産者の倒産⇒供給量不足⇒魚・野菜・穀物・乳製品・卵・肉類などの値段の高騰⇒原油と食料品の高値安定

 生産者が潰れるだけ潰れた後、市場への供給量に不足が生じると需給関係が逼迫し、値段が上がり始める。長期的に見ると、原油と共に食料品の大半が値上がりしてゆくことになるだろう。エンゲル係数は著しく上がることになる。したがって、低所得階層により大きな影響が出て、所得格差は食べ物にまで及ぶことになるだろう。この階層の生活スタイルは一変せざるを得ない。富める者と富まざる者の社会格差はいっそう拡大し、犯罪が多発する不安定な社会となることが予想される。

 ガソリン200円/ℓは序の口で、本当のオイルショックはこれからである。ガソリン300円/ℓ時代が来たら、世の中はどうなるのだろう?
 倒産件数は?家計、民間企業、国の財政、北海道の財政、根室市の財政はどうなるのだろう?年金保険料と給付開始年齢や年金給付水準は?介護保険は?後期高齢者医療は?長期金利は?為替は?高齢者が生活のために預金を取り崩し、保有株式を売り始めたら、銀行や証券会社などの金融機関はどうなってしまうのだろう?株価はどうなるのだろう?
 国家財政はプライマリーバランスを回復する時期をとっくに失したようにみえる。ガソリン300円/ℓが現実になったとき世の中がどのように変わってしまうのかを、「ガソリン300円時代が到来したら」というカテゴリーを立てて考えてみる。

  2,008年7月16日   ebisu-blog#226 
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コメント 2

U-3

はじまして。ガソリン上がってきましたね。この冬が心配です.
石油を釣り上げているのは、アメリカの大手金融機関がその大半を占めているという経済産業省のレポートが出ました.石油や食料を釣り上げて、自国へ利益を誘導しようという魂胆なのでしょうか?
 それって、ひどいインチキ相場を張っている事だと思うんですが・・・
ガソリンは、えっそえ、貝印、も〜べるなどは、ボイコットせにゃなりませんな。
by U-3 (2008-08-04 23:56) 

ebisu

先ほどコメントに気がつきました。U-3さんコメントありがとうございます。
原油の方はこのところ米国の景気減速のよる需要減少で価格が軟化しだしましたね。先行き需要減がはっきりしてくれば先物相場は当然下がるので、余剰資金の投機先は原油からまた別の商品に乗り替わるでしょう。でも、中東情勢次第ではまた投機資金が原油に集中する可能性もなしとは言えません。
いまのところ投機資金の向かう先は食糧でしょうね。原油高も小休止です。といっても高止まりです。ガソリンが150円に戻るなんてことはいまは考えにくい。
しかし、長期的に見れば、米国経済が構造的に縮小や沈滞期を迎えても、中国やインドで需要が拡大するので、ガソリン300円時代はそう遠くない将来に現実となるのかもしれません。
今年の冬は、燃料用灯油の単価が上がっているので、請求書を見てびっくりする家庭が多いでしょうね。もちろん私も、ですが。
by ebisu (2008-08-08 18:41) 

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