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懐かしき友人の消息 [22. 人物シリーズ]

  2,008年6月7日   ebisu-blog#194 
  総閲覧数: 15,831/194 days (6月7日00時30分) 

 まったくの音信不通、しかし、気になる昔(70年代半頃)の友人がいるので、どうしているかアマゾンで検索してみたら、期待通り何冊か翻訳書と著書を出している。一人は古代ギリシャやローマに関する分厚い翻訳書を何冊か翻訳しているEさん、もう一人は経済思想史の専門家のSさんだ。首都圏のある大学の経済学部長をやっていることがわかった。
 リスト『経済学の国民的体系』をテクストにした増田四郎先生の授業を3人で受講した内の一人がSさんである。ネットで検索したらある大学の教員紹介コーナーで写真入で紹介されていた。髪が白くなっていたが、言うことは変わらない。学生への一言に次のように書いている。

いざ就職活動が始まったとき、己の非力とやり残したことの余りの多さに気づき、自分の大学生活とは一体何であったのかと後悔しないように、日々精進することを望みます。」

 彼そのもの。この短い文に彼の生き方が過不足なく述べられている。変わらないものだな、そう思った。大学へ進学する諸君はこの短い文を声を出して繰り返し読んで欲しい。

 アダムスミスの"The Theory of Moral Sentiments"を当時、原書で読みふけっていた。経済思想史が専攻なのによくそんな本まで読んでいるなと驚くと同時にセンスのよさを感じた。彼が薦めるのでそのときに買った本が今も書斎の本棚に載っている。
 今月初めに、東北のある大学の教授をしている先輩が過剰富裕化論に関する著作を送ってくれた。その中にヴェブレンの顕示的消費が取り上げられていたが、Sさんはロジャーメイソンの『顕示的消費の経済学』を共訳している。
 ネットで検索してみると、同じゼミの後輩も96年から母校へ戻って教授をしている。かれは物流理論の専門家だ。生産から消費までが古い物流論だが、消費以後の廃棄や資源化・リサイクルをテーマに新しい物流理論の研究を続けていたようだ。学生へのメッセージにはこう書いてあった。

この低金利時代に、溜め込んだ、詰め込んだ知識は無力です。老後の足しにもなりません。知識を磨いて知恵に変え、怖い世間を渡っていくためには選球眼の確かさが重要です。物事を見るためにはちょっと離れて、周りをうろうろ歩いたり、クンクンと臭覚をきかせたりして、なるほどと思ったり、まっこんなもんかと納得したりする距離感も大切ではないでしょうか。

 原典に直接触れることの大切さは何度も繰り返し言いたい。しっかりした問題意識が原典を読み込むことで生まれるからだ。解説書を先に読んではいけない。そして、その道一筋にこつこつとまっしぐらに30年間歩むことを勧めたい。

 (分野は違うが、甲骨文字を2万ページもなぞった白川静という学者がいる。中国の古典も含めて、既存の漢字の解釈を全部ひっくり返してしまった。世の中にはすごい学者がいる。)


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